補足3、新開(干拓地)の構造
干潟に臨む自然の海岸地形と、そこに造成される新開の構造をモデル化して描いてみました。
一般的に、海岸線は満潮時の汀線とされます。
また、浜は海岸線から山側へ数十mの幅を持ち、満潮時で風が強い時には波浪の上がる恐れがあるので船着場や荷揚場・市場としては使えても農地や宅地にはできない所です。住民が日常的に行き来する道路も、浜ではなく山寄りになるのが当然の選択です。
干潟の先端は干潮時に地表の現れる所までですが、瀬戸内海のような干満の差が3mを超える地域の大河川の河口の先には干潮時に広大な干潟が現れたわけです。
新開の構造について3種に分類しました。
タイプAは、自然の浜の海岸線付近までを堤防で囲って農地化した小規模なものです。船越村の場合は宝永村図の長右衛門新開やいくつかの古新開が該当します。干潟の干拓ではなく、海岸沿いの既存の荒地を開墾したことになります。
タイプBは、干潟面の標高1m程度の所までを堤防で囲った中規模なものです。船越村の利右衛門新開、西新開、東新開が該当し、瀬野川河口付近では承応年間以前の新開が該当します。
タイプCは、干潟面の標高0m程度の所までを堤防で囲った大規模なもので、松石新開や寛文年間の海田新開が該当します。このタイプでは、潮止め堤防に加え、調整池と樋門の三つが必須の構造物となります。満潮時の海水面よりも低い干潟を陸地化するために堤防で外海と区切りますが、それだけでは新開の内側に灌漑用水や雨水が溜まって溢れてしまいます。そこで水門(樋門と呼ばれる)を設け、干潮時には水門を開いて内側に溜まった余分な水を排出し、満潮時には閉じて海水が入らないようにします。このために、水門のすぐ内側で一時的に水を溜めておくのが調整池です。通常の新開では新開の総面積に対して調整池の水面面積は1%も無いくらい小さいものです。
参照資料:
日本の地形、広島新史・地理編、広島県地盤図、海田町史
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