国土地理院の地形図で「船越」の地名を確認できる所は全国で50箇所余ありますが、これらを地形の特徴で区分しました。 最も多いのは半島の付け根が細くくびれた所にあるもので30箇所あり、さらにこれを2種類にわけました。 A類は、地層断面図を描いてみて岩盤層も海面上で細くつながっているものです。 B類は、地層断面図を描いてみて岩盤層は海面下でつながり、堆積した土砂で海面上がつながっているものです。土砂が何時堆積したかは不明ですが、昔は水路が通じていた事が確実なところです。 A類とB類の境界は厳密には区分けできませんが大雑把には半々です。 その他に、C類として、船の渡し場があったらしい所や舟で通った所が15箇所あります。 さらには、内陸部にあって舟に縁の無い所が6箇所。 地名の由来としては、A類が「舟を越した(向う側の海へ渡した)所」、B類とC類が「舟で越した(水路を通った)所」になります。 あるいは、全部を含めて「舟が(自力または他力で)越した所」とも言えます。 「安芸の船越」の場合、先の6、中世の船越村の図で明らかなようにB類のタイプです。 舟(ふね)も越(こし)も古来の日本語ですし、地名「船越」も東北から九州まで広く分布していますから、地名の起源の古さを感じさせます。伝承としては様々に伝わっているようですが、一部の例外を別にして、地名の由来が地形にあることは確かであり、上記3種のうちのどれかに当てはまりそうです。 ちなみに、地名ではありませんが、茨城県東部にある南北に細長い北浦という湖の南端附近に、航行する船の安全を願った「船越地蔵」と呼ばれる地蔵が古くから建っています。この場合の「船越」は上記のC類に当たります。 世間によく知れた所ではA類が多く、辞書にもこれを地名の由来として説明しているため、安芸の「船越」の場合もそれに違いないと思い込んでいる人もいますが、ここの地形を考えるとB類でよいようです。 |