漢方の養命庵 中野薬局


主要な漢方処方

あ行 か行 さ行 な・は行 ま・や・ら行


た   

用語解説

処方名 大黄甘草湯
(だいおうかんぞうとう)
構成方剤 大黄 甘草
方剤の意味 大黄は漢方の緩下薬の代表で、これに緩和の目的で甘草が加えられたものである。
これに芒硝の加わったものが調胃承気湯であるが、この方剤には潤性薬である芒硝が入ってないから、燥証の著しい場合、すなわち硬い燥屎の場合は、出ることは出ても、痛みを伴ったり快便しなかったりする傾向がある。
適応 便秘に広く用いられる

処方名 大黄牡丹皮湯
(だいおうぼたんぴとう)
構成方剤 大黄 芒硝 牡丹皮 桃仁 冬瓜子
方剤の意味 大黄・芒硝は調胃承気湯から甘草を去ったもの
これに駆瘀血薬である牡丹皮・桃仁と、消炎・排膿薬である冬瓜子を加えたものである。
甘草という緩和薬を除いてあるので、作用は一層強く現れる。
桃核承気湯より駆瘀血作用も強く、その上に消炎・排膿薬が入っているので、調胃承気湯を使いたいようなタイプで、瘀血・炎症・化脳の徴あるもの(下半身の炎症)が本方剤の適応となる。
適応 顔色も良く、体力もある便秘傾向の人の、次の諸症に用いられる。
①急性虫垂炎の初期、②痔疾・肛門周囲炎、③子宮および付属器の炎症、④尿路結石で炎症を伴うもの

処方名 大建中湯
(だいけんちゅうとう)
構成方剤 蜀椒 乾姜 人参 膠飴
方剤の意味 構成生薬のすべてが温性・補性で、中焦(おおよそ消化機能と考えればよい)を温め補う方剤と考えればよい。
蜀椒・乾姜は辛辣性健胃鎮痛薬、人参は強壮薬、膠飴は緩和(鎮痛)薬で、腹部が軟弱無力で、腸の蠕動不安が外部から望見できるような場合に用いる。
多くは腹痛の堪え難い場合に用いる
適応 ①腸管蠕動不安症、②腸疝痛・腎石発作・イレウス
ただし、寒証で虚証であることを条件とする。

処方名 大柴胡湯
(だいさいことう)
構成方剤 柴胡 黄芩 半夏 生姜 大棗 枳実 芍薬 大黄
方剤の意味 柴胡から大棗までは小柴胡湯と共通で、小柴胡湯の人参・甘草の代わりに、枳実・芍薬・大黄が入っている。
枳実は胸脇部のつかえを下げるような作用芍薬は筋の緊張を緩め、痛みを緩和する作用大黄は充血を去り、便通を促す作用があると考えられるので、柴胡・黄芩の組み合わせの胸脇苦満を治す作用と相まって、胸脇部の緊張と炎症をとる作用の非常に強い方剤と見ることが出来る。
人参・甘草と反対に、枳実・大黄は強い瀉性薬で、かつ降性薬(枳実にも便通を促す作用がある)であり、方剤全体として、裏熱実証向きといえる。
柴胡剤であるから半表半裏ではあるが、小柴胡湯よりは狭義の裏証に近いと考えられる。
芍薬が入っているので、痛みにも効果がある。
適応 体力が充実していて胸脇苦満があり、便秘傾向の者(必ずしも便秘していなくても、軟便傾向でないことを条件とする)に広く用いられる。
病名としては肝疾患・胆石症・胆嚢証・高血圧症・肥満症・糖尿病・常習便秘などで、頭重・肩こり・便秘・胸脇部圧重感などを目標として用いられる。
高脂血症・脂肪肝にも有効のようである。

処方名 大承気湯
(だいじょうきとう)
構成方剤 大黄 芒硝 枳実 厚朴
方剤の意味 調胃承気湯から甘草を去って、枳実と厚朴を加えたものである。
枳実は心下・季肋下の張っているのを下す作用、厚朴も胸腹部の膨満を下に押し下げる作用があるとされ、いずれも瀉性で降性の薬物であり、しかも緩和薬である甘草が除かれているので、調胃承気湯よりもはるかに瀉性・降性の強い方剤と見ることが出来る。
すなわち腹部が充実して硬く張り、膨満感も強く、便秘する場合に適した方剤と言える。
無論、熱証用の方剤である。
適応 顔色も体格もよく、腹部が硬く張って膨満感ある者の便秘に用いる。

処方名 大防風湯
(だいぼうふうとう)
構成方剤 当帰 川芎 芍薬 熟地黄 人参 白朮 甘草 生姜 大棗 黄耆 防風 羗活 牛膝 杜仲 附子
方剤の意味 当帰・川芎・芍薬・熟地黄は四物湯人参から大棗までは四君子湯から茯苓を去ったもの
四物湯と四君子湯を合わせて黄耆・桂枝を加えたものが十全大補湯であるから、この方剤中には十全大補湯から茯苓と桂枝だけ除いたものが含まれていると見ることが出来る。
これに発散・鎮痛作用の強い防風・羗活、理血作用のある牛膝、同じく鎮痛作用のある杜仲・附子(いずれも発散性)が加わって、本方剤が構成されている。
四物湯中の芍薬も、鎮痛作用に加勢すると見てよい。
十全大補湯は気血両虚を治す大補剤であるから、これに発散性と鎮痛効果を賦与したものが本方剤であると考えればよい。附子が入っているので、十全大補湯よりさらに寒証向きである。
桂芍知母湯と比べた場合、桂枝・麻黄という強い発汗薬と、知母という消炎薬が除かれており、その代わりに四物湯・牛膝のような補血ないし理血薬、人参・黄耆のような補気薬が加えられていることから、より慢性化し、気血両虚に陥った場合に用いるべき方剤(盗汗があっても用いることが出来る)と見ることが出来る。
適応 慢性関節リウマチ。
ただし、寒虚証で衰弱し、皮膚枯燥した者に適する。

処方名 竹茹温胆湯
(ちくじょうんたんとう)
構成方剤 半夏 生姜 茯苓 陳皮 甘草 竹茹 枳実 柴胡 麦門冬 桔梗 香附子 人参 黄連
方剤の意味 半夏から枳実までを温胆湯と言い、これに柴胡以下を加えたものが竹茹温胆湯である。
温胆湯は二陳湯に竹茹・枳実を加えたもの
二陳湯は胃アトニータイプの虚弱者の悪心・嘔吐を治す方剤(言い換えれば降性の方剤)であるが、これに降作用(鎮静作用)の強い竹茹・枳実が加わることによって、温胆湯は同体質者の神経のイライラを治す方剤と規定することが出来る。
この温胆湯にさらに解熱・消炎作用のある柴胡・黄連、鎮咳・潤燥作用のある麦門冬、去痰作用のある桔梗、理気作用のある香附子、強壮作用のある人参を加えたものが竹茹温胆湯で、温胆湯よりも一層イライラが強く、しかも熱や痰がある者に適した方剤と見ることが出来る。
適応 ①胃アトニー体質者の不眠・神経症
②呼吸器疾患で熱が長引き、咳・痰がとれず、イライラして眠れないような場合。

処方名 治打撲一方
(ちだぼくいっぽう)
構成方剤 桂枝 甘草 川芎 丁香 川骨 樸樕 大黄
方剤の意味 この方剤は発散薬と収斂薬を上手に組み合わせて、打撲後の治療を促進する目的でつくられた方剤と見ることが出来る。
桂枝・甘草の組み合わせは桂枝湯の基本構造であり、これに芍薬の代わりに、活血・鎮痛作用のある川芎と、健胃・駆風作用のある丁香が加えられて、発散・鎮痛効果を万全たらしめている
一方、止血作用のある川骨、消炎作用と排瀉作用のある大黄は、樸樕と共に収斂作用を持っており、打撲による腫れと痛みを、一面において発散させつつ、収斂し止血する効を兼ねたものと見ることが出来る。
桂枝・川骨・丁香いずれにも健胃作用があり、打撲時に用いられる西洋薬が、とかく胃腸障害を伴いやすいことを考えれば、安心して使える打撲傷用薬と言える。
適応 打撲症・捻挫。
やや温性であるが、証は特に考慮しないで用いることが出来る。

処方名 治頭瘡一方
(ちずそういっぽう)
構成方剤 荊芥 防風 連翹 蒼朮 忍冬 川芎 紅花 甘草 大黄
方剤の意味 荊芥から紅花まですべて発散薬であり、特に荊芥・防風・連翹は皮膚病の要薬である。
忍冬には解毒作用、川芎・紅花には活血作用(停滞した血液の循環を促す作用)があり、蒼朮は水分の発散作用が強い
川芎・甘草を除いてすべて燥性薬で瀉性薬であり、方剤全体として見ても、停滞した水分を追い出す力が強い
温性薬と寒性薬とが相半ばしているので、清上防風湯のような強い消炎作用はない。
適応 小児頭部の湿疹を目標につくられた方剤である。
分泌物・痂皮の多い、便秘がちの者に適する。
ただし、著しい虚証の者には適さない。

処方名 調胃承気湯
(ちょういじょうきとう)
構成方剤 大黄 芒硝 甘草
方剤の意味 胃腸を調え(調胃)腹が張ってガスがたまるのを除く(承気)方剤の意
この方剤の主薬である大黄も、その補佐薬である芒硝も、ともに漢方の緩下薬の代表で、それに緩和の目的で甘草が加えられたのが本方剤である。
すなわち緩下剤の基方ともいうべきものである。
もっとも大黄・甘草の二味からなる大黄甘草湯というものもあるが、大黄は燥屎(コロコロ便)の場合は、出ることは出るが快便しない。
ところが芒硝は潤性であるから、燥屎の場合も出やすくなる。
これが芒硝が配合されている理由である。
適応 ①比較的体力のある者の便秘
②過食による急性胃炎(便秘を伴うもの)
ただし、顔色の悪い、腹部の軟弱無力の者には用い難い。
多くは頓服的に用いる。

処方名 釣藤散
(ちょうとうさん)
構成方剤 甘草 石膏 人参 半夏 麦門冬 釣藤 菊花 防風 陳皮 茯苓 生姜
方剤の意味 白虎加人参湯から知母と粳米を去って、半夏以下を加えたものと見ることが出来る。
石膏が入っているので熱証用であることは間違いないし、人参が入っているので多少とも虚証向きに考慮されていることが分かる。
釣藤には鎮静・鎮痙作用があり、血圧降下作用もあるようで、おそらくは脳動脈硬化に対して良い影響を与えるのではないかと思われる。
これに発散薬である菊花・防風などが加わって、脳動脈硬化に伴う頭痛や神経症状を除くものと考えられる。
菊花には目や脳の充血を去り、血圧を下げる効果もあるようである。
茯苓は、半夏・生姜・陳皮とともに、停滞した水(めまいは水の停滞によると漢方では考える)を追い出す役をするとともに、動悸などに対する鎮静効果も期待される。
適応 脳動脈硬化症による頭痛・眩暈・肩凝り(この方剤の効く頭痛は、朝又は午前中に強いことが多い)。
更年期障害による頭痛・眩暈にもよい場合がある。
ただし、必ず熱証であることを条件とする。

処方名 腸癰湯
(ちょうようとう)
構成方剤 薏苡仁 牡丹皮 桃仁 冬瓜子
方剤の意味 大黄牡丹皮湯の大黄・芒硝の代わりに薏苡仁を加えたもの。
薏苡仁には滋養・緩和作用と共に、イボを治す作用があり、おそらくは排膿を助け、皮膚・粘膜を修復する効があるものと思われる。
大黄・芒硝がないので瀉下作用はなく、方剤はより緩和な駆瘀血・消炎・排膿剤と見ることが出来る。
適応 比較的体力弱く、便秘傾向のない人の急性虫垂炎の初期。
または大黄牡丹皮湯を用いて急性症状が消失したが、慢性化して体力もやや衰弱した場合。
腸癰とは虫垂炎の古名であるが、方剤は寒性であるから、明らかな寒虚証者には用い難い

処方名 猪苓湯合四物湯
(ちょれいとう)
構成方剤 沢瀉 茯苓 猪苓 阿膠 滑石 当帰 川芎 芍薬 熟地黄
方剤の意味 猪苓湯に四物湯を合方したもの。
適応 猪苓湯を使うべき状態で慢性化し、顔色も悪く、皮膚もカサカサしているような場合に、四物湯を合方して用いる。
芍薬が入るので排尿痛にもよく、排尿困難、残尿感、排尿痛、頻尿、血尿などを目標として用いられる。
ただし、地黄が入っているので胃弱者には不向きである

処方名 通導散
(つうどうさん)
構成方剤 大黄 芒硝 枳実 厚朴 甘草 当帰 紅花 蘇木 木通 陳皮
方剤の意味 大黄・芒硝・枳実・厚朴は大承気湯大黄・芒硝・甘草は調胃承気湯である。
これに当帰以下の加わったものが本方剤である。
当帰には補血・月経調整作用、紅花には月経調整・活血・鎮痛作用、蘇木には駆瘀血・止血・鎮痛作用があり、この三者が本方剤の中核をなしている
すなわち、大承気湯を使いたいような顔色も体格もよいガッチリタイプで、胸腹部が張って重苦しいような人の瘀血に用いる方剤と言える。
木通は消炎・利尿を促す目的で、陳皮は祛痰というよりも気を巡らす目的で加えられたと見てよい。
この方剤には枳実・厚朴・陳皮と気剤が多く含まれており、瘀血と気滞を兼ねる者を治すのに適しているが、桃核承気湯のようにのぼせを下げる作用はない。

本方剤は元来、打撲による瘀血を駆除する目的でつくられたもののようで、打撲により皮下出血を起こし、大小便が通ぜず、胸腹部が張って苦しいというのが、その目標のようである。
しかし打撲によるものでなくても、同様の状態に広く用いてよい。
適応 顔色も良く、体力もある便秘傾向の人の次の諸症。
①月経困難ならびひ婦人科諸疾患
②打撲による鬱血
③その他、月経異常または瘀血を伴うと思われる諸病に、単独または兼用で広く用いることが出来る。

処方名 桃核承気湯
(とうかくじょうきとう)
構成方剤 大黄 芒硝 甘草 桃仁 桂枝
方剤の意味 調胃承気湯に桃仁と桂枝を加えたもの。
桃仁には駆瘀血作用桂枝にはのぼせを治す作用があり、ともに発散性である。
従ってこの方剤は、顔色も良く、体力もある便秘傾向の人で、瘀血があってのぼせというのによいということがわかる。

瘀血は通常、下腹部ことに左下腹部に索状物を触れたり、圧痛を認めたりすること、月経不順や月経困難のあることなどから知ることが出来る。
適応 顔色も良く、体力もある便秘傾向の人の次の諸症
①月経困難、ことに月経時における精神異常(ヒステリーなど)
②月経異常者の吐血・下血・衂血
③打撲による鬱血
④その他、月経異常または瘀血を伴うと思われる諸病に単独または兼用で広く用いられる。

処方名 当帰飲子
(とうきいんし)
構成方剤 当帰 川芎 芍薬 熟地黄 荊芥 防風 蒺梨子 黄耆 何首烏 甘草
方剤の意味 四物湯に荊芥以下を加えたもの。
荊芥・防風は発散薬で皮膚病の要薬黄耆・何首烏は皮膚の栄養を高める強壮薬である。
蒺梨子も一種の強壮薬であるが、瘀血性皮膚疾患の掻痒を治す効果があるようである。
四物湯も指掌角皮症などに効くが、本方は四物湯を一層皮膚疾患向きにつくり変えた方剤と見ることが出来る。
適応 老人・虚弱者など、貧血性で冷え症、皮膚がカサカサしている者の皮膚掻痒症に用いる。
ただし、分泌物の多い者、湿証の者には適さない。

処方名 当帰建中湯
(とうきけんちゅうとう)
構成方剤 桂枝 芍薬 生姜 大棗 甘草 当帰
方剤の意味 小建中湯に当帰を加えたもの(原方では膠飴は入れない)
当帰には補血・月経調整作用があるので、小建中湯を使いたいような場合で貧血がある場合に用いる。
適応 虚弱な婦人の諸出血による貧血、月経痛には好適である。
ただし、小建中湯の場合と同じく、振水音の著しい胃アトニー者には適さない。

処方名 当帰四逆加呉茱萸生姜湯
(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)
構成方剤 桂枝 芍薬 生姜 大棗 甘草 当帰 細辛 呉茱萸 木通
方剤の意味 当帰四逆湯があり、それに呉茱萸と生姜を加えたものが本方剤であるが、一般には当帰四逆湯を用いることはない。

下線部は桂枝湯(この場合は桂枝加芍薬湯と見た方が方剤の意味を考える上ではわかりやすい)で、それに当帰以下を加えたもの。
当帰・細辛・呉茱萸はいずれも温める作用が強く、また細辛には麻酔作用があって、芍薬の鎮痙・鎮痛作用と相まって、冷えて痛むというのには好適な組み合わせとなっている。
細辛・木通・呉茱萸は燥性で、漢方では冷え痛むという場合、そこには水分の停滞があると考えるから、それを動かす目的でこれらが加えられている。
適応 寒虚証者の冷えによる痛みに用いるが、主として手足の冷え(凍瘡やレ―ノー氏病)を目標にして用いる。
手足の冷える人の下腹部冷痛にもよい。

処方名 当帰芍薬散
(とうきしゃくやくさん)
構成方剤 当帰 川芎 芍薬 白朮 茯苓 沢瀉
方剤の意味 四物湯の熟地黄の代わりに白朮・茯苓・沢瀉が入ったもの。
白朮・茯苓・沢瀉はいずれも燥性で、この方剤は全体として湿証向きにつくられている。
その点、四物湯が燥証向きであるのと対照的である。
当帰・川芎は温性補血薬の代表であり、血液、ことに月経を調整する。
芍薬には鎮痛・鎮痙作用があり、月経痛に良い
沢瀉を除き、大半が温性で補性であり、寒虚証者で湿証の者の補血方剤ということが出来る。
適応 当帰芍薬散は婦人の聖薬と言われるもので、色白で虚弱な胃アトニー型婦人ならば、誰もが常備薬として服用して良い者である。
冷え症で、多少ともむくむ傾向がある、というのが適応となる。
①月経不順(無月経ないし遅延)
②月経痛
③妊娠中(流産や妊娠腎防止の目的で)
④流産癖
⑤不妊症
⑥慢性腎炎で貧血・尿量減少のあるもの、男子に用いてもよい場合がある
⑦痩せ型・冷え症の者のにきび

処方名 当帰湯
(とうきとう)
構成方剤 当帰 黄耆 桂枝 芍薬 甘草 蜀椒 乾姜 人参 半夏 厚朴
方剤の意味 本方剤の主薬は当帰と見るべきであろうが、その基本を成しているものは、やはり桂枝湯(桂枝加芍薬湯)である。
ただし、大棗は除かれ、生姜はより温性の強い乾姜に代えられている

桂枝加芍薬湯に当帰と黄耆を加えたものは帰耆建中湯といい、小建中湯を用いるべき場合で、さらに貧血や盗汗のある場合に用いるが、本方剤中にもそれがやや変形された形で入っていると見てよい。

蜀椒・乾姜・人参は大建中湯から膠飴を去ったものに相当するが、大建中湯は腹部が軟弱無力で冷えのある人の、堪え難い腹痛に用いられる方剤であるから、帰耆建中湯と合わせ考えると、貧血や盗汗のある冷え症の虚弱者の激しい痛みに良効ある方剤と見ることが出来る。

これに半夏厚朴湯の主薬である半夏と厚朴が加えられたものが本方剤であるが、半夏・厚朴はともに降作用が強いことから、痛みによるイライラを鎮静させる作用の強い方剤ということが出来る。
従って帰耆建中湯や大建中湯の痛みの対象は、主として腹部であったが、本方剤の痛みの対象はむしろ胸背部であり、胸背部の激痛を下に引き下げ、落ち着かせるような効果を本方剤は持っていると思われる。
適応 寒虚証者の胸背痛(狭心症、肋間神経痛など)