俳句つれづれ窓
俳句へのいざない
定年になって、我が家に戻ってくると(私は9年ほど単身赴任であった)、同窓会等で同級生との交流もあって、彼らが俳句を作って楽しんでいることを知った。私も暇を見て俳句を作ることを試みた。自分なりの感動や驚きを短い詩型で表現することは難しかった。それにはかなりの集中力と時間との格闘のようなものを必要とするように感じた。松山市は有名な子規が活躍した遺産で多くの方々が俳句をたしなみ、一定の交流をうみだしているようであった。俳句についての系統だった勉強はしたこともなく、子規の遺著をかじり読みするていどであった。司馬遼太郎さんの長編小説「坂の上の雲」を読んで、子規の活躍の様子を身近に追体験させられ、子規には親しみを感じながら、いまだに彼の著書を読んでいない。いずれは読みたいと思っている。最近「俳諧大要」岩波文庫、を読んだ。
そこでここにごみのような拙句をさらけておきたいのである。整理がまずいためせっかく作った俳句をどこかに散逸してしまい、後悔することが結構あるためである。作ったものを半分は自分のために公開するのである。
2年ほどたってみると殆どごみに等しい恥ずかしいものが占めていて、初心者の方もお笑いになると思う。反面教師の役割を果たせれば、幸いである。暇ができれば、添削する予定である。
(以下に新しい順番に並べ替えて表示しました。)
- (2010年11月23日から2011年2月20日まで)
- 春光や総身に湧く力かな
- 枯草のまた燃え初めし輪廻かな
- 春光の飛び跳ねている車列かな
- 春光に誘い出されて街路かな
- 春光や問うてもみたしなぜ生きる
- 春昼や鯉見る人の欠伸かな
- 純粋な菜の花の黄に見とれおり
- 菜の花の黄の純粋な光かな
- 春昼や足にけだるさ巻きついて
- 揚げ雲雀一番鳴きを終えたるか
- 春光や小砂利踏む音聴くばかり
- 春光の洗浄力や人と家
- 春光や鳥水浴の飛ぶ光
- 春光や靴底温き遍路標
- 春光や自転車で行く細面
- はたと落つ手の書蛙の目借時
- 春光や国会討論拝聴す
- 春光や明日再びなり難し
- 健脚も老いて病みけり春の雲
- 苗床に散水光るアスファルト
- 春浅し洗車の水を見る子らよ
- 暗渠蓋歩く目印春の雲
- 梅の香を嗅がんととまる土塀かな
- 春空や睨む銀光鬼瓦
- 邂逅の一つの装置春の雲
- 春浅し日向に並ぶ暮らし向き
- この春も我田引水歌の主
- 逃れ得ぬ因果応報春浅し
- 日だまりや吾輩は猫春の空
- 伊予柑や陽を閉じ込めて出る色か
- おれが死ぬとは思えぬ春の色
- 効率の果ての無縁や春嵐
- 犬連れてともに肥満や春隣り
- 四五条の日矢洩る雲や春嵐
- 枯草を分けて芽吹きの力かな
- 何時も見る田の土塊や春隣り
- ひょいとできひょいと忘る句春隣り
- 大雪の舟数多沈める悪夢かな
- 糞たるる句も見事なり漱石忌
- 大音声放屁の勢や春の闇
- 僅かなる枕の違和や春の床
- かつおぶし心もあらぬ春の雲
- 春立ちて物につかれる心かな
- 富を得て幸いならず春の雲
- 幽玄に霞のまとう野山かな
- 一雨欲しと思えぬほど青い冬空
- 冬ざれや用心棒の居合い切り
- 東大雪西カラカラ列島下
- 鋤かれたる田の土塊に春隣り
- 春隣る暖かい日の家族連れ
- 難しい宇宙の道や冬銀河
- ちぎれ飛ぶ雲見る君は炬燵かな
- 雪雲のような憎悪の目もあった
- 雪雲や青白い顔にも春隣り
- 墓移し無縁社会や冬の雲
- お互いに老いの寂しさ春隣り
- 冬寒や明待つ闇は深くして
- 見つからぬ書籍探しや春隣り
- 冬寒や朝日一筋さしにけり
- 釣人の影絵に浦の小春かな
- 雪雲や因果応報佛国土
- 寒風や溜池の底はひび割れる
- 伊予路には伊予柑の実転げおり
- 土手潜る目白枯葉に濃き緑
- 甘酒に酔って薄日の街歩く
- 影寒やくしゃみ先生再々度
- 目も足も老いて今日ある小春かな
- 鵯目白枯れ枝潜る小春かな
- 冬耕のトラクターが従える鴉かな
- 大雪はや老襲うとは天無慈悲
- 落ち穂あるや鴉一群田の日向
- 小春日や列車一閃切る平野
- あきらめの付きかねており冬の雲
- みかん捨てて根方を染める伊予路かな
- 着ぶくれて鍬打つ人の薄日かな
- 寒鯉や稚魚を狙いて鷺不動
- 凧のごと眩暈てふわりふわりかな
- 薄日射す大寒の街歩きけり
- 大寒や犬連れ散歩田焼きかな
- 葱に水缶穴開けて如雨露かな
- 大寒や月煌々と明るき夜
- 生と死や天地無始終冬の月
- 小春日や一挙に動く気配かな
- 冬ざれや雀の群れの暖かさ
- ラニーニャにそそのかされた寒気かな
- 冬嵐目覚めた目玉闇の中
- 潮満ちて丸石を海へざんぶりこ
- 黄金蜘蛛山河に探す宝かな
- 冬寒や長命の功煎茶飲む
- 菜の花が土手に僅かに萌したぜ
- 厳寒の襟に凍みいる隙間かな
- 老いてゆくり小春の街を歩きけり
- 刀狩り車狩らぬか冬の街
- 海峡や鵯渡る決意有りや無しや
- 冬晴れやわれも寡黙を継いでおる
- 初春や田起こす土の光かな
- 青空に白煙立ちて峰の雪
- 公園で冬晴れの高縄山を見る
- 冬晴れやわが道を行くまたの思い
- 菜の花の萌す向うに土工かな
- くじけくじけこの世を渡る冬の雲
- 小春日や分け隔てなく一万歩
- 今日はまた煙あがりて冬晴れる
- くじけない挑戦冬の空晴れて
- 厳寒に旗揺れる街の薄日かな
- 山茶花や雲はちぎれて影の中
- 炬燵にて青空暑き茶を喫す
- 寒晴れの青空に暑き茶を喫す
- 小春にて浦々の海の穏やかさ
- 食卓に伊予柑光る友の汗
- 小富士山裾に汽船や冬の旅
- 震え文字真四角に書く寒の空
- 眩暈する足目は雪雲を指し難し
- 冬嵐新春の山の雪を吹く
- 影法師雲に濃淡吹きて峰の雪
- 平野割る轟音列車日向ぼこ
- 寒ばしる背筋の道や谷に沿う
- 高縄の雪雲離る高さかな
- 背筋にぞくぞくと寒響きけり
- 冬嵐ふと止む眩暈雲の街
- 雪雲の切れて一筋日向山
- 弧舟覚めて寒夜の闇をさまよえり
- 書字に震え悩み悩みて冬の闇
- 島中のみかん熟れけり星のごと
- 冬嵐去りて敗残の兵残す
- 冬嵐止みて平野の日向山
- 笹の中椿の花や枝桜
- 古暦取り替えにけり幕の内
- 島影の夕焼けて清かに黒し
- 鶺鴒や土手一筋に曇りけり
- 舞いそうで舞わぬ落葉の溜まりかな
- 冬平野特急に散る鴉かな
- 年の瀬を打つ黒雲の溜まりかな
- 冬晴れの我を誘う赤さかな
- 枯山や物思いする露天風呂
- 台風や後を涼しい秋の風
- 天高し剣山を見て露天風呂
- 枯れ枝に孤高の星は冴え冴えと
- 春の気の漂う街や星を見る
- 青空や落葉からから無尽蔵
- 無限なる傘の向こうの雪の舞い
- 市場てふ近きて遠き宝船
- 着ぶくれや目線さえぎる腹の線
- 冬嵐緩みて南風の吹く日かな
- 工場の黒排水や冬の雲
- 雪降りて世俗は新た変化かな
- わが句ベスト撰者を気取る年の暮れ
- 歳末や豊かさにある弧絶かな
- 年の瀬や怨念と走力せめぎあい
- 明ゆくや電車の窓の小富士かな
- 陽が上がる後幾日の師走かな
- 冬影に立つ枝桜雲白し
- 逆光の松山城や冬の雲
- 人心も川も荒れたり冬の雲
- 土手道や山河草木冬の雲
- 冬晴れて光勇まし車列かな
- 着ぶくれや働く人の凛々し朝
- 冬の旅小富士夜明けて帰りけり
- 城門の木立の中や日向ぼこ
- 錯綜す心の路地や冬の街
- 闇に揺らぐ記憶の糸や冬の街
- 朝日照る島のみかんの赤さかな
- 興居島や小春の海の穏やかさ
- 冬晴れに弁当開く港かな
- 寒波きて雲どろどろと閉ざす城
- みかん熟れて星にも似たり島の畑
- 星凍てる自らに問う布団かな
- 小春日や古老に海の穏やかさ
- 馬磯港小春日和のヒジキ乾し
- 冬寒や空に船底雲の群れ
- 小春日や甘酒に酔い日溜まりぬ
- 自転車の翁弁当積む師走
- 妖怪のごとき毛虫や冬の雲
- 青草の根方を染めし銀杏かな
- 警報や冬雲を指す特急車
- 垣埋める桜紅葉や空の枝
- 瀬戸小富士無情の世にも夕焼ける
- 冬雲や水底の葉と流れる葉
- 十二月時は流れる雲晴れる
- 吹き溜まる落葉はつとに枯ゆきぬ
- 柿熟す裏窓に障子破れけり
- 銀杏散って川床に敷きまた散りぬ
- 冬影の稜線を越え峰の雪
- 残り葉は少なし落葉また少な
- 冬川の流れ賑わす落葉かな
- 冬晴れや一万歩とて馳走なる
- 桜紅葉残り葉の空青きかな
- みかん熟れ星と出でたる伊予路かな
- 空晴れて落葉流れる影黒き
- 小春日や影清かなる街を行く
- 舗装路に櫨一葉の赤さかな
- 熟柿や廃屋の窓破れけり
- 白銀の薄の向こう山錦
- 川流る落葉の上の落葉かな
- 苗桜落葉となりて雲垂れる
- 落葉積む色さまざまや川流る
- 帰りにはマイカーに積む銀杏かな
- 小春日やただ外に出る有難さ
- 勇ましく小春に光る車列かな
- 鯉跳ねて小春の水面目を射たり
- 工事終え道清々し小春かな
- 桜紅葉怨念のごと色深き
- 鶺鴒が鋤かれた土につまずきぬ
- 冬晴れて透明に見ゆ世間かな
- 強風やカラカラ廻る枯葉かな
- 父母は利に疎きかな桜紅葉
- 舗装路や褐色一点バッタかな
- 冬の川稚魚群鈍き光かな
- 主婦行くやバイクの荷籠大根葉
- 山紅葉影は清かに立つ煙
- みかん熟れて李下の冠伊予路かな
- 桜紅葉枝を離れる光かな
- 冬晴れや物捨てるは心弱きもの
- 銀杏散って堤さらさら滑り落つ
- 小春行けば雀のお宿葦の中
- 黒き影と同行するや小春かな
- 世の中を老いの方から小春かな
- 小春てふ有難きこと老いてより
- 老いと小春その影の友真昼かな
- 枇杷香り経口ずさむ唸りかな
- 蜜蜂の読経に香る枇杷の花
- 山茶花や落葉に埋まる垣の中
- 冬雲の薄し真珠と化す陽かな
- 人生の読み難くして年詰まる
- 遺影見て後悔多し冬の雲
- 時待たず古希同窓の星月夜
- 地方寂びてシャッター街の小春かな
- 落葉して命の尽きる涅槃かな
- 歳末や田に稲消えて煙立つ
- 歳末や松山にはや白蝶が
- 川魚は見えず流れは澄みにけり
- 道筋に真向かう山の錦かな
- 小春日を馳走に外出したのだよ
- 猥雑な店出て小春浴びにけり
- (2010年6月27日から2010年11月23日まで)
- 人もなき公園に落葉回りけり
- 土手草が枯葉の簪(かざし)挿(さ)しにけり
- みかん熟れて常緑海に赤き星
- 平野囲む錦秋の山に雲込める
- 人垣のごとき藁塚囲む山
- 舗装路をからからと鳴る落葉かな
- 残る葉と散る葉の色は分かれけり
- 足止めて陽の当たりたる山紅葉
- 虫食いの公園に積む落葉かな
- 小春日や自転車修理友らとす
- 興居島やみかんが熟れて赤き星
- 興居島に櫨燃えてみかんの赤さかな
- 頻尿や窓辺に漏れる冬の月
- 夏の白蝶温暖の土手草を飛ぶ
- 青草が枯葉挿しけり土手の雲
- 豆剝きの親子並びて似たる顔
- 石蕗咲きて阿弥陀の光こぼれたり
- 桜紅葉稚魚腹返す光かな
- だんだんに木々色づきて混ざりけり
- 鴉群れ喰い物ねだる冬平野
- 色づきてみかん浮出す伊予路かな
- 蜘蛛の囲が草の実のみの留守居かな
- 小春日にただ満ちている光かな
- 色づきし銀杏はらはら土手を飾る
- 小春日の街影清か衣干し
- 山荘や今宵眠れず星月夜
- 庭木切りて秋清々の笑顔かな
- 黄砂濁る山河はことに暮れ易し
- 暮れ易きひこばえの田の平和かな
- 放屁して水澄む小川行く翁
- 花カタバミ曇天照らす灯りかな
- 休眠の枝に掛けある忘れ物
- 舗装路に命の尽きた尾長蜂
- 桜紅葉一枚拾ふて葉脈美
- 色づいて浮かび出でたり伊予ミカン
- 小川澄みて花カタバミの赤さかな
- 秋蝶や真白にひふみ上がりけり
- 秋蝶のもつれる真白騒ぐ風
- 冬の田の野焼く煙に巻かれけり
- 冬の田のひこばえにさす夕日かな
- 藁塚のひこばえにさす夕日かな
- 冬影に白蝶あがる真白かな
- 冬雲や舗装路に虫倒れけり
- 冬雲や南に重く積みにけり
- 冬雲や日矢射す街に神降りる
- ウオーキング気まま気ままに黄落葉
- 分相応の暮らし向きなりちちろ鳴く
- 夕照や桜の枝に雀咲く
- 落葉まだ黄色で公園人は無し
- 岩根照らす花カタバミの乾きかな
- 小春日のうららや日差し残す壁
- 静か静か座を満たしたる小春の陽
- 布団干す天の恵みの小春かな
- 延々と乾きし川や秋の蝶
- 石打てば当たる秋鯉水の中
- 小春日の稚魚腹返す光かな
- 眩暈や藁塚のみの空平野
- 舗装路のかまきり踏むな武士の情け
- 秋蝶やひらひらと真白二つ三つ
- 水澄みて白鷺立つや不動心
- 秋蝶や小春の風に丸で紙屑
- 葛咲きて栄枯のみかんからめ捕り
- コスモスや乾いた風に揺れ残る
- 経塚の遺跡たどりや島の秋
- みかん熟れて労苦の星は出でにけり
- 大根分く蕪分く空の心地よさ
- 秋遍路温暖の野に菅の傘
- 舗装路に蟷螂出でて緑かな
- 蟷螂や木枯らしに向き仁王立ち
- 水澄みて稚魚の影散る日差しかな
- 秋蝶や草間の風に吹きでたり
- 寒気入りて乱流の風秋の蝶
- 藁塚やクレーンは高く雲寄せる
- 鶺鴒や尾は振りやまず沢の水
- 秋蝶や草揺る風に流される
- 蟷螂や舗装路に立つ影一つ
- 秋蝶や蜘蛛の囲の間をすりぬける
- 落葉見るや若葉枯葉と混ざりけり
- 老兵は消えてゆくかな水澄めり
- わが靴の音聴く街や台風過
- 鶺鴒や眦(まなじり)に見ゆ白と黒
- 言の葉に換えたき落葉動かざり
- 藁塚や死ぬまでの間は遠からず
- 貧窮の殺人続く雲の秋
- 台風の裂け目にあがる秋の蝶
- ジュース香の甘き伊予路や天高し
- 夢覚むや指先に水冷たかり
- 読書する虚ろの目にや秋の蝶
- この世にて生享けており星月夜
- 秋蝶やひこばえ実る田に遊ぶ
- 藁塚や電線鴉呆けたり
- 冬影にさびてありたり遍路標
- 冬へ入る急展開やジュースの香
- 明治へと坊っちゃん列車天高し
- 秋鯉の稚魚幾百光る雲の秋
- 藁塚や立ち居伏し居の平野かな
- 蟷螂や落武者のごと草の道
- 稲刈りて空洞の声や風吹きぬ
- 孤高なる人の生なり星月夜
- 空隙を抱えたるまま雲の秋
- ささやかな一つの悟り星月夜
- 絶品や古希同窓の星月夜
- 暑き日に安リンゴ買う市場かな
- 地を染める無限の数の桜かな
- 時流れ時に任せて星月夜
- 影と化す伊予の小富士や月出る
- 瀬戸の月宵の明星光りけり
- 瀬戸の月竿振る先の向こう岸
- 影蔽う伊予の小富士は暮れ易し
- 瀬戸の月対岸の灯の縺れかな
- 平凡な何もない日や秋の風
- 稲架掛けやひこばえ緑兆しけり
- 新聞に秋の手触りありしかな
- 待ちかねた秋風の立つ交差点
- 前籠の葉書抑えて秋の風
- 温暖を危機にあげつらう心地かな
- 馬のよに稲架掛けの影落ちにけり
- 奇跡の落盤救出ニュース天高し
- 稲刈りや平野の萌黄にまだらの斑(ふ)
- 放屁して秋の空へと昇る心地
- 稲刈りて空き地を満たす日向臭
- 都市の一角に稲穂萌黄の残りけり
- ふと見れば御簾多き家夕暮れぬ
- 蚊遣りくゆるこの秋はなお夏姿
- 秋寒や目覚めて見たる夢のこと
- 息苦し蜻蛉少なきこの街よ
- 鉄塔に雲は盛りてちさき秋
- 紫の花露草に澄む心
- 稲原の萌黄平野を囲む山
- ご神灯赤とんぼの風に揺れる
- 言の葉の遥かに散りて雲の秋
- 秋霖やそれ愚かなり独断家
- ありし日の瞬時の笑顔天高し
- 男女をば見極め難し雲の秋
- ちちろ鳴く小川の岸に稚魚光る
- 萌黄の田露降り来たり鳴くチチロ
- 秋霧や手触るほどの生ぬるさ
- 藁塚や稲架掛けの影黒々と
- 秋霖や迷路に落ちる人の生
- 稲架掛けの影長々と彼岸花
- 祭り唄稲穂萌黄の風清か
- 詩魂問う彼岸花土手に燃えるまま
- 秋寒や蚊一匹飛びこむ布団かな
- 赤とんぼ骸となりて橋の上
- 秋光る稚魚になりたき心かな
- 無心なる稚魚光るなり秋の暮れ
- 露草の花紫に蜘蛛太る
- 旗鳴るや刈り株跡の天高き
- 稲架かけて刈り株跡の風ばかり
- 稲架かけて整然とする屋敷かな
- 藁塚や萌黄の稲に並びおり
- 彼岸花咲いて稲刈る心地かな
- 天高し精進の志の高くして
- 孤独らし松山城の雲の秋
- 萌黄稲穂刈られて空し天地かな
- 秋風や吹く街はいま穴だらけ
- 推敲の足らぬ俳句や曼殊沙華
- 萌黄の田刈る斑(まだら)増え日日(ひにち)かな
- 杭打ちて稲架立つ影や急ぎ足
- 彼岸花、玉すだれ、稲架吹く風や
- 夜長へと移ろいゆくや読書癖
- 滔々と移ろう輪廻花むくげ
- 雲の秋稚魚腹返す光かな
- 高縄に伏す秋雲や背の汗
- 萌黄の田露おく光静寂かな
- わた雲やはためきもせぬ秋祭
- 彼岸花Y字の蕾雲増しぬ
- 水澄みて稚魚鋭利なる光かな
- 大根播く労に換えたる釣の味
- 秋霖や靴底伝う寒気かな
- 目覚めるやここは彼岸か秋の風
- 特急の残す疾風(はやて)や天高し
- 稲穂熟れツイッターする仏かな
- 地平一筋残る青空野分かな
- 名月や慈雨に代わって天の宰
- 稲穂沈み葉身上がる変化かな
- 塩辛トンボの骸は暮れゆきぬ
- 夕暮れて稲穂の凪ぎや背の汗
- あさましや詩魂も枯て彼岸花
- ちちろ鳴くや暮れゆく空のありにけり
- 秋風やその囲繕う蜘蛛ありぬ
- 萌黄深し刈り跡の空増えにけり
- 天高し鳥威し鳴る風の野に
- 風の中蜻蛉少なき夕べかな
- 萌黄の田見つつ鍬打つ土塊かな
- うそ寒き世に嘆息や秋の風
- ちちろ鳴く声鐘と太鼓になじみけり
- 古希の街一刷け青き秋の空
- 死の淵は万有の則鳥威し
- 棗熟れて赤き実落ちる土の道
- 慈雨あがり小川に曇る鬼ヤンマ
- 慈雨あがり風滔々と吹き抜ける
- 秋風や言葉と物の分かれ道
- 雷鳴雷雨肝冷やしつつ歓喜かな
- 秋風や友に母あり我になし
- 秋は来ず先進国富高きかな
- 秋風や又三郎は稚魚を追う
- 秋風に問うてはみたしわが明日
- 秋風や老いて目先の見えぬまま
- 稲穂垂れ葉のとがり立つ入日かな
- 葛咲くや萌黄の原に列車かな
- 葛咲くや蜘蛛の囲の蜘蛛太りけり
- 背鰭立つ枯渇の川や鬼ヤンマ
- 車窓より侮蔑する目や秋暑し
- 死ぬまでは喜び悲しみへひり虫
- 物言いの異な人ありて秋の風
- 秋風や矛盾に潜む宝物
- 秋風や眠ると死ぬは似ておるか
- 秋風や眠りに至る自己放下
- 大残暑腐臭の街は暮れ初めぬ
- 稲穂熟れて重力を背に坂下る
- ヤンマ飛ぶ背の青色のさびしき日
- 稲穂熟れ夕凪にかすか揺れ残る
- 足裏の胼胝(たこ)積み上げて天高し
- 葛咲きて山飲み込むや大残暑
- 稲穂揺れてさびしかないかと聞いておる
- 秋風が袖をひっぱり友あるや
- 稲穂にて風揮毫して去りぬかな
- 文明の歴史の底に稲穂揺る
- 幽霊の集まる家や大残暑
- 布団にも違和あるらしや今朝の秋
- しゃらくさき儲け本位や浜炎暑
- 二雨で夏去りゆくや放屁かな
- 熟れてゆく稲穂を分けて列車かな
- 葛咲くや思い出遠き黄金虫
- 萌黄にて染めぬかれたる天地かな
- 雷雲や入れ替わる世の静寂かな
- 猛暑日や不二の山あり伊予小富士
- 秋風やホメラレモセズクニモサレズ
- 秋風や空っぽになるステーション
- 秋風や飄々として列車かな
- 秋風やわれ何者と問うたりす
- 秋風や痛覚もなく吹きぬける
- 秋風に知り人ありやステーション
- 老いと秋洗浄列車いできたり
- ようように風の鉄路をヤンマかな
- 天高し列車待つ身は老いており
- アメンボウ高き青空混ぜる足
- 敗残の兵となりけり猛暑かな
- ただ一雨猛暑いなしておりにけり
- 胸凪ぐや蕭々と慈雨大残暑
- 大残暑時を言葉でくくりたし
- 秋風に誘われて見る野山かな
- 赤とんぼ荒れ田に一人離れ鴨
- 栴檀の陰に秋風集いくる
- 舗装路は稲田へ続く白露かな
- 幽霊の集まる家や雲の峰
- 蜻蛉きらめき夕べ歌流れけり
- 垂れさがる稲穂何処まで続くやら
- 頭垂れ稲穂のたわみ続きけり
- 秋風や大地を歩く懐かしさ
- 秋風や断ずることが最良か
- 雷雲や小学生の通学路
- 秋茜群れて水田に有りにけり
- 蜘蛛の囲や手八本の匠かな
- 水欲しし雷雲に飛ぶ鴉群
- 雷雲や山を隠してしまいけり
- 猛暑日や秋をうばいておりぬかな
- 猛暑日や何にもない日が幸せか
- 雷雲や溝川(みぞ)に自転車鈍き光
- 目と耳に稲穂の波は揺れにけり
- 稲穂揺れ白鷺ひときわ曲がり首
- 「の」の字書く稲穂の揺れや心の音
- 野分吹く稲穂ざわめき一揃い
- ざわざわと野分穂分ける心持
- 葛咲くや高縄山を隠す雲
- 大気蒸し赤とんぼ低く群れて飛ぶ
- 一万歩ある日吹きだす野分かな
- 山越えるごとき筆耕猛暑かな
- 扇子振る風古風なる時代かな
- 起居生死銭かかる世や大残暑
- 秋茜先短かくもひたすらに飛ぶ
- 鬼ヤンマくわえたる餌重く飛ぶ
- 雷雲や[盗むな」と表札畑にあり
- 「の」の字書く稲穂の実り風さわわ
- 秋茜群れてひたすら飛ぶ日かな
- 風に浮き悠々光る秋茜
- 条条と稲実りたるトンボの目
- 栴檀の樹下の瞑想茶一杯
- 草刈りや新涼の風清かなる
- 大残暑自問自答し道折れる
- 雷雲や飯炊く香りありにけり
- 猛暑日や麦茶こぼれる台所
- 一直線の道に風に吹く大残暑
- 猛暑日や儲け一途の働き手
- 大残暑柿の葉光る風の道
- 身を置くや日傘を立てた監視椅子
- 雷雲や老眼鏡を磨きおり
- 炎熱の盛りに光る秋茜
- 鉄路脇仏の涅槃秋茜
- 葛咲いて腹のあたりを蝶出る
- 高縄に立つ雲の峰雑談義
- 何時も寄る空公園の残暑かな
- 塩辛トンボ地を徘徊す老いの足
- 風紋や墨跡にも似て稲穂かな
- 爽涼や向うから来る稲穂風
- 稲穂揺れ蒼蒼と吹く風の紋
- 大残暑芽立ちを見張る傘のうち
- 大残暑掛け声響く小学校
- 稲穂ゆくり揺れるや青き背のヤンマ
- 爽涼の窓辺を選りて椅子の場所
- 爽涼や俳句作法極意読む
- 猛暑日や路地に人無き真昼かな
- ヤンマ飛ぶ路地に住みたる己かな
- 一万歩歩くよすがに稲穂風
- 秋風や荒れ田に独り離れ鴨
- 秋風や蜘蛛の囲の蜘蛛太りけり
- さまざまな蜻蛉混ざりて風の中
- 猛暑日や過去の方から友来たり
- 雷雲や人生き死する巷かな
- 雷雲や韜晦したきこと多し
- 猛暑日や誰もわからぬ明日かな
- 猛暑日やビル街に突如乾きかな
- 猛暑日や求む書は無く疲れかな
- 雷雲や迂路に迷いておるごとし
- 蜘蛛の囲や溝川の橋に五つ六つ
- わが影が稲穂を歩く夕べかな
- 老婆一人門で眺める稲穂かな
- 雷雲や空田の水の夕焼けて
- 夕照や出穂の田の微風かな
- 列島に猛暑止まざる恐怖かな
- 雷雨来て豹変の空青きかな
- 青田に真直ぐな穂出て野分かな
- 雑臭の蒸せる暑さや雷雨かな
- 思いだすこと団扇振りつつおりぬかな
- 赤々と朝日恐ろし猛暑かな
- 秋茜群れておるなり街区の田
- ヤンマ飛ぶや稲穂熟れ色さやぎけり
- 青田何時か稲穂の風に変わりけり
- 夾竹桃赤し街に巻く重き雲
- 雷雲や街区に稲穂揺れにけり
- 雷雲の風増しつつや八月尽
- 夾竹桃赤々として球児かな
- 蒼鉛の雷雲ビルの谷間より
- 水打つや涼風そよと鼻腔かな
- 出穂の青田に風の強き日や
- 肌暑き秋風に吹く演歌かな
- 猛暑日に雷雲立てば慈雨欲しし
- 紙飛んで涼風の窓へ移りけり
- 猛暑日や金貯めて首絞める愚かさか
- 夕照の湖面に没す猛暑かな
- 夕照や湖面を群れる夏燕
- 秋風やなお汗臭き現場かな
- 猛暑日や冷アップル缶開ける音
- 富み貯めて暑さ地獄を生きておる
- 時折は涼風が背撫ずこともある
- 西風の涼しき窓で読書かな
- あちこちと団扇散り置く家のうち
- 寝不足の眩暈もたまに炎暑かな
- 早朝の打ち水をする珍事かな
- 猛暑日や白骨の川に己が影
- 責め追わぬ天の猛暑に世は移る
- 蜘蛛の囲や少年の日の夢の跡
- 日の足の処暑越えてなお猛暑かな
- 秋風や金力化ける独裁者
- 猛暑日やたこ飯旨きすまし汁
- 若者が炎暑盛り上げ浜辺かな
- 猛暑日にたこ飯食うや浜座敷
- 鷲ガ巣や浜にぎわせる炎暑かな
- 栴檀の青陰に降る蝉しぐれ
- 秋風や荒れ田復して水に雲
- 遠近と蝉しぐれ聞く古ベンチ
- しばらくは秋風吹くや背の汗
- 塩辛トンボ蒼し小川枯る
- 足達者わが家を出れば秋の風
- 小富士山瀬戸夕焼けて誰かある
- 汗だくのシャツ着て帰る小富士山
- 日の終わり小富士山頂夕焼けて
- フェリーから瀬戸の夕焼け暮れるなかれ
- 猛暑日や地球破壊まで幾日か
- 強者威張り弱者落ち込む猛暑かな
- 栴檀の実青々し蝉しぐれ
- 猛暑日の街にも朝の鮮度かな
- 秋風に慣れた時分に稲穂出る
- ひやひやと青田に立てる秋の風
- 一万歩夢見るごとき青田かな
- 蜘蛛の囲や草の間合いを測りたる
- おしろいの蕾赤くして枯れる川
- 猛暑日や打てど響かぬ太鼓ども
- 有難き片蔭の道呪文かな
- 腰に届く青田の向こう雲の峰
- はかなさの蝉時雨盛る道を行く
- 川床やからからにして赤とんぼ
- 朝風や日傘が一つ青田かな
- 盆過ぎてベンチに戻る雑談義
- 土手道や空清くして猛暑かな
- 秋風やヤンマの背色残り水
- 背を流る汗百粒や雑魚の影
- 猛暑にて老い心にも炎かな
- 蝉時雨ひときわ高き塀の中
- 雷雲や葉桜の陰鯉を見る
- また出会う葉桜に吹く秋の風
- 雷雲や隆々として赤とんぼ
- 秋の風日影なる田の一角に
- 赤とんぼつがいでゆくり光る風
- 青田にも熟れ色付きて案山子かな
- 蝉しぐれ稚魚の朝影清かなる
- 哀れ赤とんぼ光りてどこへ行く
- たのもしや稚魚腹返す夏の川
- 蚯蚓渡る焦熱道や青天井
- 木陰なる墓売り場まで熱地獄
- 青山や風に乗る赤トンボしばし
- 木陰吹く風に憩いてみる山よ
- 木陰より青山つくづく眺めたり
- 朝風や青田に案山子幾つかな
- 鎮魂の風吹く盆に天の声
- 片蔭の風の癒しや旗の朝
- 瀬戸の海の花火山越え上がりけり
- 一万歩汗に萎れて還り来る
- ごみ捨てて荒れ果てる川青田かな
- 重々し灰色の街溽暑かな
- 風紋の微塵もなくて青田かな
- 猛暑日や無情変化を生きる魚
- 青田風渦巻く中に居りにけり
- 今もなお黄金蜘蛛欲しき童かな
- 台風やまだ遠き距離奇妙な間
- 月昇り山河抱く影琥珀色
- 舗装路に青みかん転ぶ伊予路かな
- 青蛙ネバネバネバと鳴いておる
- 焦熱の地獄に青田一人勝ち
- 台風の溽暑に薄揺れておる
- 原爆忌ごもっともなる平和論
- 盆用意先祖の位牌古木簡
- 台風や北上の間に墓参する
- 境内の一陣の風に喫す涼
- 盆準備故郷の山なお青き
- 花火咲く轟音一泊ずつの闇
- 雲の峰くずれくずれて驟雨かな
- 雷の山追いたてる驟雨かな
- 日向臭き路地を出や青田かな
- 雷鳴の遠くになりて青田かな
- 青田にて驟雨の洗う青さかな
- 驟雨にて街臭い立つ鼻腔かな
- 雷雲や悔悟の道の長々と
- 雷雲や青田風紋の遺墨集
- 雨傘を日傘に換えて青田かな
- 雲隆々南風打つ萱のさやぎかな
- 雲隆々稲に肥えやる溽暑かな
- 蜘蛛の囲や星またたきて夜露かな
- 青田暮れる帽子の人は犬連れて
- 青田馳す風紋を見る夕べかな
- 夏燕湖面に歩く己が影
- 猛暑日や何時か板間に眠りけり
- 青田行く白装束の五穀守
- 大暑にて重力という悟りかな
- 蒸し暑や鬼ゆりを飛ぶ蝶数多
- 白鷺や青田にありて動かざり
- 影絵にて茶筒飲み干す大暑かな
- 蜘蛛の囲の草の虫捕る忍び技
- 木陰にて涼一服を充填す
- 木陰より雲の峰呼ぶ鴉かな
- わが影や憂いの重き雲の峰
- 足裏に豆畑できて雲の峰
- のしかかる光の束を吸う青田
- 飴色に熱暑の小川稚魚群れる
- 雲の峰幾つ重ねて無縁墓地
- 青田風一文字「雲」と書きにけり
- 夏姿一糸まとわぬ瀬戸の島
- 雲の峰武士の情けの運転手
- 酷熱を吸いて天衝く青田かな
- 生命の水と光や青田風
- 天と地に青空青田眼の限り
- 市場には悪質な罠雲の峰
- 夏霧や白龍登る小富士山
- 粋がってはいけない風が青田吹く
- 歩くことわが修業ならずや青田風
- とぼとぼとわが行く影や青田風
- わが影の重なりて揺る青田風
- 神の御手知るや知らずや青田風
- 夏川やわれに似た鯉よろよろと
- 赤トンボ青田の猛暑きらり切る
- 谷風や玉虫ゆくり舞い降りる
- 蜘蛛の囲や世情の風を細き糸
- 白鷺の首獲物追う青田かな
- 赤トンボ飛ぶ健気さと哀れさと
- 涼風や一本道を吹いてくる
- 停まるたび関節さびて青田風
- 梅雨明けや石鹸香る辻を行く
- 暴れ梅雨日本列島袈裟に切る
- 雷鳴や梅雨明けるらし気の夕べ
- 梅雨晴間田青々し天地かな
- 親愛や若葉黙して黒揚羽
- 蒸し蒸しと青田一雨掛かる雲
- 残る靄梅雨明け近い中学校
- 梅雨晴間世に掛かりたる薄き靄
- いも蔓や昭和の飢えに掛かる橋
- 蒸し暑し草にゆっくり止まる雲
- 梅雨寒や誰にも宛てぬメッセージ
- 大雨や頑迷の信覚めやらず
- 暴れ梅雨愚陀仏庵を壊しけり
- 梅雨晴間故郷を出て住みおりぬ
- 紫の花咲く霧の小富士山
- 急傾斜みかん消毒白い霧
- コガネムシ舗装路に突如不時着す
- 別れるや芙蓉の落花掃く夕べ
- 蜥蜴馳せ瑠璃光揺れる草の中
- 餌求め白鷺の首青田かな
- ぼうぼうと蝦蟇鳴く池や腹の底
- 夏畑や土に向かいて老夫婦
- 七夕や無縁電車の自由客
- 七夕や無縁社会の富の垣
- 七夕や星に願いも少なかり
- 大概は端に座す癖梅雨電車
- お茶買うて梅雨雲電車待つ日かな
- 人々の生きゆく姿梅雨の駅
- 死ぬ順が頭かすめて雲の峰
- 梅雨晴間早苗早くも青田かな
- 日の音の懐かしきかな早苗立つ
- 松一本庭に涼しき緑かな
- 蝦蟇鳴いて墓苑たまたま弔いぬ
- 複雑に土臭いけり早苗の田
- 草いきれ足這いあがり背の汗
- 綱白し池を渡りて蜻蛉かな
- 山を背に社飲み込む若葉かな
- 無雑作に紫陽花倒る晴間かな
- 堰で見る色紛れ易し稚魚も群
- 一角は青田に隣る茄子の畑
- 影と陽の格差に死ぬる蚯蚓かな
- 溝川を川蝉真直馳せる瑠璃
- 野苺に小川の水の光かな
- (2010年5月30日から2010年6月26日まで)
- わが臓腑毛虫食いけり呪詛の池
- 稚魚上る初夏の日差しを右左
- 混沌をがなり吹き除け窓若葉
- 初夏や人の間塞ぐ富の山
- 田植え風人の臭みをさらさらと
- 衣更え舌にきゅうり半本の快楽
- 蛙鳴く家山稜におぼろなる
- 遍路道稚魚光る小川見ておりぬ
- 稚魚群れて光る小川に少年の目
- 今日新た吐露す雑草諂曲図
- 栴檀の花の香に湧く覚りかな
- 栴檀の花の小川に稚魚はおらず
- 水入れる田に染みの影動くかな
- 梅雨雲や蛙鳴く声天に湧く
- 歩は揺れる道も揺れけり遍路道
- 毛虫食いて若葉五六分残りけり
- 蠅どもの眼前に寄る若葉かな
- チャイム鳴る鶯山の中学校
- 轟音によろめく足や衣更え
- 梅雨雲や鯉の背びれに揺れる空
- 梅雨雲や稚魚餌獲る腹燻し銀
- 燕飛ぶ黒き水の化小虫ども
- 鶯や痩せて汚れた老婆通る
- にわか雨蛙澎湃と鳴きにけり
- 萎れたる躑躅の影やわが影や
- 衣更え電線の影伝う風
- 流速や稚魚編隊の柔らかさ
- 栴檀の花の香りや田植え水
- 青葉桜ベンチの人は雲を眺む
- ボンネット玉光りたる揚げ雲雀
- 梅雨雲や南がかりの扇の手
- 赤芽樫刈り揃えたる梅雨晴間
- リンゴかじる果肉真白や梅雨雲る
- 麦秋や野燕麦を弧に揺する風
- 田は鋤かれ土整然と静寂かな
- 袋掛けの桃は見知らぬ路地の奥
- 黒き水堰落ちて燕虫捕る
- 鯉群れて蝶飛ぶ土手の綿帽子
- 橘の香やクリークの梅雨曇り
- 堰上げて田に水引くや煙立つ
- 青笹や針葉鋭し蝶刺さん
- 真砂踏む音のみありて梅雨雲る
- 光溢れ若葉青けり稚魚の群れ
- 栴檀の花散る影や武骨者
- 苗付いて一雨欲しき乾きかな
- 時空統べる人、物の道青葉勢
- 夏草や夢回帰する港かな
- 時差積もる壊死細胞や雲の峰
- どぶ川に燕や鯉おる安堵かな
- 田植え待つから田を遊ぶ鴉ども
- 土染めるさくらんぼの実慈雨来るや
- 梅雨雲や小石の影に光る稚魚
- どぶ川に澎湃として燕かな
- 額紫陽花紫匂う薄雲り
- 耳朶の奥をバチンと鳴りて夏の朝
- 梅雨に入る正直に生き難きこと多し
- 梅雨雲や活字追う目が眠り落つ
- 梅雨雲や翁われ止め世間話
- 正直の通らぬ世なり草刈る人
- 梅雨雲や鏡となりて池満々
- 燕飛ぶゆくりなりけり池満々
- 栴檀の花匂いけり傘のうち
- 飛行音閉じ込む低き梅雨の雲
- 煙雨あり坂駆けあがる燕かな
- 袋掛け枇杷熟れており明るき黄
- 老鶯や光速に鳴く風清か
- 紫陽花や空青き深き日の風
- 初ヤンマ水鏡に止まるナルシスト
- 青葉若葉人嫌いも癒す天真
- 稚魚群れて川床の影さやさやと
- 稚魚群れて橋で眺める梅雨晴間
- 青葉影六月の光強き日々
- サクランボ踏み潰れてや土染める
- 青葉若葉田植え待つ風抜けてゆく
- 額紫陽花褒められもせず咲いている
- 小川立つや梅雨に漁する少年の目
- 君に一癖俺に二癖夏を生く
- 田植え前畦細道の静寂かな
- 花愛ずる人柄の気品庭にふわり
- 苗椿新葉開く梅雨晴間
- 夏空や見知らぬ街へいで立ちぬ
- 青葉若葉まだ知らぬ路地へ踏みてゆく
- 樹齢古き楠並木葉影かな
- 赤く咲くゼラニュームの道行き止まる
- 入り込めば迷路なりけり夏帽子
- 成願寺景勝下る若葉かな
- 夏の朝腹空きて覚め新たな陽
- 枝刈るや舗装路に満つ若葉かな
- ワイシャツの白晴々と若葉かな
- 紫陽花の白紫と並びけり
- 夕べには梅雨雲くるや堰の亀
- 葛茨諂曲模様坂雪崩
- 水張りの一番の田に寄る燕
- 旗揺れる梅雨の晴間や濁り川
- 水染みて田潤す色の移りけり
- 田植え機の後立つ苗の青きかな
- 見ても飽かぬ鯉の稚魚走す光かな
- 花樗(おうち)積む舗装路を踏み行けり
- 堰守や燕飛ぶ樋門ごみ重き
- 泥土に生享けるもの梅雨晴間
- 肌蒸すや瑞穂の国に早苗立つ
- 陽炎や田植え水鳴るそこかしこ
- 梅雨雲や黒糸トンボ青き笹
- 梅雨雲やアメンボ走るツツイノツイ
- 梅雨雲の西曇りつつ田植えかな
- 梅雨雲の鏡の上の早苗かな
- 田を染める早苗緑に驟雨かな
- 陽炎や木製標(しるべ)匂う門
- 暗き世や瑞穂の国に蛙鳴く
- 梅雨晴れや生臭き風濁り川
- 三万を超す自殺者や梅雨雲る
- 広々と田植える人や畦渡り
- 蒸し暑や燕通りの汗臭さ
- 梅雨雲の染める街路を車列かな
- 梅雨晴れや湖面首出す亀のなり
- 瑞穂国枕さえざえ鳴く蛙
- 早苗らと梅雨雲浮かぶ水静寂
- 田を囲む家迫りつつ田植えかな
- 立葵花蕾雲へと登る階
- 叢雲や早苗緑の田植えかな
- 田の畦や見回る人に泥汚れ
- 水鏡苗運ぶ畦の綱渡り
- 陽炎や私心悲しき汚れ川
- 燕ひらり水鏡なる平野かな
- 生き抜かん梅雨雲市場知人いて
- 早苗揺りて小さき細き風の紋
- 梅雨晴れや樋門水湧く力瘤
- 梅雨晴れや紫陽花乾くままの門
- 鯉の稚魚少年追いたき梅雨晴間
- 早苗立ちて青笹潜り出る雀かな
- 亀浮いて梅雨雲眺む晴間かな
- 生涯や物言わぬ骸五月空
- 霧湧くやマドンナが立つターナ島
- トンネルを潜りて出るや梅雨の空
- 島々や霧の中から上り龍
- (2010年5月21日から2010年5月30日まで)
- 寝覚めるや闇さえざえと鳴く蛙
- 雨上がり枇杷熟れており濁り川
- 濁り川初夏光る記憶かな
- 五月雨や草もつれたる濁り川
- 雨上がり父なる自然燕飛ぶ
- 雨あがる田を飛び暮らす燕かな
- 五月雨に生き物戻る湿りかな
- 五月雨や暑さ寒さを身繕い
- 停まるたび橘の香のそよぎかな
- 布団二つ暑さ寒さを処す五月
- 鯵釣るや句作する間を竿振りて
- 花香る人生の岐路幾多かな
- 梅雨雲る青葉若葉の電波塔
- 梅雨雲る燕通りのアスファルト
- 梅雨雲や舗装路は燕通りかな
- 行く春や肌寒き日の沈みおり
- 肌寒や苜蓿(うまごやし)の花空しかり
- 一歩ずつもどかしく行く花水木
- 生臭し桜若葉に泳ぐ鯉
- 復活や危機同在す梅雨走り
- 肌寒や栴檀の花薄雲り
- ボールペン金具冷たき若葉かな
- 妙技する燕怪しき国の明日
- 取水口に集まる鯉や梅雨雲り
- 隆々と梅雨走る雲の地平かな
- 花水木みみず乾いてアスファルト
- 虫食いの若葉のベンチ人もなし
- 関節の痛みに蝦蟇の響きけり
- 平野割る一筋の梅雨雲電車
- 梅雨雲の川面ひらひら燕飛ぶ
- 梅雨雲や軍歌で耳塞ぐファシズム
- 虫捕りて黒き水舞う燕かな
- 赤き薔薇見事咲き居たる梅雨雲
- 草いきれもあらず風揺らす野燕麦
- 田植え風人の臭みをさらさらと
- 田植え風人の垢をばさらさらと
- 一つ辻入らば車少なき若葉風
- 必然の熟する時を若葉風
- 毎日小言湧いて初夏寒し
- 諍いて傷心の日の若葉かな
- 青笹や青き鋭き葉針の風
- 苜蓿(うまごやし)花咲く街のガソリン車
- 偽り多き末路や虫食う若葉
- 露出狂足だらけなり衣更え
- 冷夏にて白雲渦まく若葉かな
- 青葉風東を指して冷夏かな
- 呪詛しつつ田植えの前の青き山
- さもし世の新緑香る罵倒かな
- (2010年5月8日から2010年5月21日まで)
- 冷水の旨き日差しを帰りけり
- 花咲き花次ぎて畝に苗立ちぬ
- 初トンボ燕飛びたり田の曇り
- 離れ就き雲の湖面に燕かな
- 雲鏡湖面対なす燕かな
- 薄日和燕飛び交う呪詛の胸
- 振り返る間もなし花も人生も
- 公園や尿意を脅す毛虫かな
- 一徹の居士たらしめよ花香る
- カキツバタ咲く白雲の切れ目かな
- 希望の赤き陽あり早朝の窓
- 小乗のあがき割りなし薔薇咲きぬ
- 二十四番花信風吹く土手を行く
- 放屁して晩春の闇安堵かな
- 引力や晩春の闇目覚めたり
- 新緑に囲まれている田鋤かな
- 闇路踏む呪詛鳴りやまず墓地若葉
- 涅槃光波乱に生きる春寒し
- 昔より天空段畑瀬戸の春
- 小学生小さき背並ぶ五月空
- 燕群れて虫獲る宙や黒き水
- 大愚かな鯉の群れ見る若葉土手
- 頭上より燕落ち来る堰の虫
- 風車物言うごとき花の風
- 蛇も嗅ぐ花信の風や花茨
- 野燕麦光りておるや五月風
- 影清か電柱隠す青葉かな
- 襟閉ざす燕ひらりと小川かな
- 花溢れ巷隈々影清か
- 薫風やこの時空に居る不思議かな
- 世を継ぐは大それたこと白き薔薇
- 薫風や鷺間を測り佇めり
- 春天に飛行機雲の掃く尾かな
- 生きゆくや薫風旗を翻す
- 山里や新緑の谷田鋤かな
- 五月来て水を眺める橋の上
- 青葉風土にまみれた笑顔かな
- 薫風や泡噛むごとく世は流る
- 若葉らはいで立つごとく門にあり
- 薫風や草の花散る湖面かな
- タンポポや綿帽子幾つ風に乗る
- 薫風や木目のごとき輪廻かな
- クローバの無縁仏や田の乾き
- 田植え水濁りて浮かぶ曇り空
- 野燕麦雨降るごとき実の青さ
- 春雨の止む間若葉を眺めおり
- 春雨の上がる薄日や濁り水
- 慈雨ありて遍路見送る燕かな
- 薊(あざみ)採る土手ぬかるみて薄日かな
- 春雨や茫洋の山蓬かな
- 春雨や電線の露帽子打つ
- 春雨や薄日射しこむ蒸し暑さ
- サツマイモ蔓植えたての雨の畝
- 鯉群れて背びれをかすめ燕かな
- 堰下りて水無し川の夕化粧
- 春雨や若葉潤す街歩く
- 春雨や若葉の乾き癒すかな
- 小雨降る門に薔薇の香匂うかな
- 五月雨や薄霧包む山や家
- 空豆の薄青き殻燕飛ぶ
- 五月雨や蓬の向こう鯉の群れ
- 桜並木青葉トンネル燕飛ぶ
- 田植え水茶に濁り居て霧茫洋
- 鳩鳴きて野燕麦の草いきれ
- 五月霧青く包みて平野かな
- 真砂踏めば甲羅干す亀飛び込みぬ
- 栴檀の花紫に青い霧
- 田鋤きたる土隆々として五月霧
- むせかえる橘の香田鋤かな
- 青葉若葉陽の和らげるベンチかな
- 特急の轟音烈風五月霧
- 道行けば青葉慰む心かな
- 白蝶や若葉愛でたる平和な世
- 田植え待つ鋤かれし土の整いて
- 苜蓿(うまごやし)馬おらぬ郷に盛るかな
- 野燕麦刈り敷く道や犬の糞
- 綿帽子波紋ゆらめく黒き水
- (2010年3月8日から2010年5月8日まで)
- 面白や鳥つき従いて田鋤かな
- 橘の香にほふ道や遍路標
- 蝶となる青葉桜の毛虫かな
- 野良猫撫ぜやさし弱き人の春
- 鶯やわれ煙に巻く曇り道
- ゆっくりと小川に沿いて花茨
- ゴキブリ一匹出て夜も眠られず
- 白蝶のひらひら渡る黒き水
- 藤咲きてしだれ落ちたる巨木かな
- 葉桜や青きトンネル黒揚羽
- 乾く春子桜根方刈り敷ける
- 古き記憶健脚戻る青葉かな
- トラクター土黒々と五月空
- 産卵の鯉蹴る水や草の中
- 花茨蝶の白さに並々て
- 草いきれ黒揚羽浮かびておりぬ
- 草刈り機陽炎に揺れる帽子かな
- 陽炎や剪定の音山青葉
- 陽炎や耳底に響く虫の声
- 花茨香りて土手の五月かな
- 初夏や青葉溢れて鍬の音
- わが行くを垣と見紛う蜂ありぬ
- タンポポや綿帽子幾百白き玉
- イタドリや採るより見るを楽しめり
- 向う山笑いて近き五月空
- 影清か姐さん被りの遍路かな
- 舗装路を渡る毛虫や日の赤き
- 連休や一万歩行く無人街
- 野の花の競い咲きたる変化かな
- 日輪の躑躅咲きたる日和かな
- 躑躅咲く垣並連休もぬけかな
- 葉桜の青さに止まる毛虫かな
- アスファルト割る一列の蓬かな
- ひこばえの穂を吹く風の光かな
- 白蝶の草ひらひらと田植え水
- 穢れ落とす茶一服の春野かな
- 春遍路衆生を救う縁かな
- タンポポや鯉群れ亀は甲羅干す
- 毛虫らと青葉桜に憩うかな
- 共に生きた桜咲きたる深山かな
- 脚力の癒えて嬉しき春路かな
- 溝さらう田植えも近き堤かな
- 田の備え春動く地方の力
- 一本の溝上り下る群燕
- 風早し鶯の声光る道
- 春寒や潤色過ぎるテレビ劇
- 風早し空豆の葉光る波
- 公園や葉桜揺らす風ばかり
- 風早し湖面かすめて燕かな
- 春寒や苦しき道の踏みごたえ
- 春雨や子ら駆けてゆく雨上がり
- 新緑や白蝶の数増えにけり
- 脚力やイタドリ赤き新芽かな
- 菖蒲(あやめ)咲きて塀の無聊に花灯り
- 阿修羅神黄砂に濁る山の峰
- 修羅心の地獄を救う白き蝶
- 春雨や水心あり魚心
- 春雨の止みて白雲山登る
- 春雨や田植え待つ田は雲鏡
- 春雨や蓬に青き雫かな
- 春雨や蝸牛這うアスファルト
- 春雨は止まず恨めし心かな
- 新緑や若返る心持子持山
- 鈍痛の関節で見る躑躅かな
- 坂越えて路地の躑躅も経たるかな
- 花好きの足忙しきうららかな
- 春うららこぎ足ゆくりリンゴ買い
- 春寒や蜂来る窓の日の赤さ
- 白蝶や大根の花にまぎれたり
- 鶯や谺は谷の向うかな
- 白蝶や四五羽もつれて草の風
- 春トカゲ腹ふとぶとと日向ぼこ
- 新緑や空の一角青きこと
- 空豆や菜の花終えし空(から)平野
- 湖面寒々として燕すれ飛ぶ
- 春寒や日溜まる襟の遍路道
- 札所たどる道有難き春の雲
- 南無大師旗に春風島四国
- 犬フグリ青き星出る堤かな
- 偶然に過ぎ行く時空桜散る
- 菜の花の灯りのもとで鯉の群
- 去り難き桜散るその時空かな
- 残り桜散る舞をただ見ておりぬ
- 子鷺揃い飛ぶ川筋の蝶々かな
- 黒揚羽残り桜の蜜吸う風や
- 躑躅咲く飛行機雲の高さかな
- 桜浴び流れ落ちるや背(せな)の川
- 天真の桜ちるちる汚れ川
- 堰あげて水懐かしき近さかな
- 桜散り無意識揺れる光かな
- 川魚の群にひとひら桜かな
- 白蝶の流されそうな蓬かな
- 土塊に幾千万の草芽かな
- 蜜蜂の顫音(せんおん)幾千桜散る
- シンパシイ好々爺犬連れし春
- 天空の段畑みかん瀬戸の春
- 花冷えや爆音バイク群燕
- アスファルト桜流れて占い師
- 花冷えや轍(わだち)を埋める桜花
- 花冷えや草に止まりて桜花
- 蓮華草古き案山子に日差しけり
- 南北に郷分ける雲春嵐
- 花冷えや残り桜の青芽かな
- 静かなる春の夜の闇われも他も
- 一億の人眠りたる春の闇
- 春雨や峰分け描く薄き墨
- 蜜蜂の顫音に散る桜かな
- タンポポや土手温かき花灯り
- 藁塚や春七草に談義せり
- 春雨や小虫の羽を濡らすほど
- 雑草を刈り敷く土手の春田かな
- 桜咲く臓腑の中の阿修羅神
- 空豆や黒眼美人の春の雨
- 桜花ゆるりゆるりと落ちてゆく
- 春雨を大根の花飲んでいる
- 桜散りて花灯りなる雨の道
- 雨浴びてつばくらめ飛ぶ田草かな
- ホーホホと鶯雨を温めるや
- 万草を潤す雨や枝桜
- 春雨や小虫蹴散らせ花の道
- 堰あげて菜の花浸かる花灯り
- 堤立つ春雨平野あるがまま
- 春雨や雨滴波紋は無尽蔵
- 影寒や市場泡立つ光かな
- 豌豆の花街中の狭き土
- 栗食えば口より淡き月の色
- 何時も聞く安堵の曲や春の空
- 足重く日は濃し垣の赤芽樫
- 堰あげてとどろと響く春の水
- 白蝶に出会いし数や木の芽風
- 興居島やいたどり酸い味少年の日
- 桜見るや真白光を潜る魚
- 墓売るや日は濃く桜開く丘
- 日の濃さや桜の開く丘の上
- おばあちゃん孫おんぶして桜かな
- 桜並木蜜蜂顫音経に似たり
- 疲れたる仏の足に蝶の舞
- 親水や桜の空の青さかな
- 遺恨消え桜光りておりぬ
- 黒衣(くろこ)なり春光心躍らしむ
- 花冷えの風解く袋リンゴかな
- 波統べる由良弁天や瀬戸桜
- 空を見て生きるものかな峰桜
- 老いし友若布刈る瀬戸風光る
- 憂いつつ筋雲空の蓮華草
- 花寒に歩き疲れし仏かな
- 花冷えや変わらぬ土手の道を行く
- 身は古も桜の峰の伊予小富士
- 峰桜光新たなる小富士かな
- 桜鯛海染め来たり青分けて
- 旨酒を桜の下で飲む日あるや
- 兄弟か畑打つ傍に桜咲く
- なん時か春風強き堰の水
- 山桜甍に添えし光りかな
- 列車行く鉄路菜の花一さやぎ
- 春雲に阿修羅浮かべて見ておりぬ
- 飛び火して峰咲く桜小富士山
- フェリーから峰咲く桜小富士山
- 鎌研ぐや鶯朗々と鳴いて
- 桜咲く小富士見紛う白髪峰
- 栄光と惨苦の混ざる春ニュース
- この世をば転覆させる桜かな
- 春光や車列に不況光るばかり
- どぶ川や空に突き出す角芽かな
- 鯉群れて漁獲本能覚める春
- さくらさくら大根の花と競いたる
- 菜の花や道でこぼこの溝乾く
- 貧相な土手に出る星犬フグリ
- 春雨ゃ舗装路染め終えず去りぬ
- 子燕や堰ダイブする妙技かな
- 蓮華草雲掴みたき近さかな
- 桜染める地模様幾万のはなびら
- 春光を背に負う橋や菜の花路
- 菜の花や池に映りて小鴨かな
- 春光やわれ生まれ代りてきたか
- 春明き日車列光りて花カタバミ
- 春雨や闇に眠り落つまでの時
- 春は花われを誘う日の赤さ
- 春雨や心の阿修羅ぬぐう夜半
- 桜染める地生きる重さ軽さかな
- 鶯や蓮華揺れ揺れちぎれ雲
- 黄明りのラッパ水仙墓守りぬ
- 地を染めて桜あやかし色模様
- 春嵐霞払いて山と家
- 狭き路地わが家に落ちし椿かな
- 蓮華草日の温める田水かな
- 春光や菜の花の土手土筆取り
- 鶯や臓腑に萌す眠気かな
- 藁塚を春七草の囲みたる
- 土黒し老婆草取る春日和
- 菜の花や白蝶舞いて胸騒ぎ
- 菜の花や水温もれる光かな
- 犬ふぐり地上の星よ語りたし
- 堰光る無数の侏儒や春の水
- 春光や仲睦まじき桜かな
- 人の世を遥かに生きて桜かな
- 紫の木連禅師ら青き空
- 春光や親鸞説きつ行く男
- 雨宿り雨あがる間のミモザかな
- 詩も湧かずただ春雲の流れかな
- 時はらむ深き闇間の桜かな
- 春寒や言の葉生まる日の目かな
- 新築や春光に槌音高し
- 春光や車列光りて街覚ます
- 鶯や田水の日向光る風
- 早桜子目白忙し訪う枝間
- 冴え返る春光明き眩暈かな
- よろめきて角曲がる春光溢る街
- 語る間を白き春光過(よぎ)りたり
- 駐車場木の芽の光見上げたる
- 風止みて春の静寂は続きけり
- 春光や友と語る間空撃てり
- 春の夜の静寂に目覚め動悸かな
- 容れ難き壁乗り越えて春は花
- 耳聞くや腹の虫のみ春静寂
- 花一斉巷に春の早きこと
- 黄明りやラッパ水仙揺らぐ風
- 菜の花や刈られ敷かれてみかん山
- 鶯や霞の底の山と家
- 霞立つ里茫洋として憂いかな
- もちの実に代わりて土手の菜の花路
- 花豌豆(えんどう)蔓ほつれたる薄日かな
- 春らしや堤水落つ土筆狩り
- 日向光る田水を揺らすほーほけきょ
- 水仙の花落ちる道列車ゆく
- 咲きかかる桜花芽の贅の空
- 菜の花や立ちつくしたり寒暖差
- 春嵐温き夜過ぎて静寂(しじま)かな
- 春寒や老い容れ難き交差点
- 春寒や日向の中で出る欠伸
- ノースポール白磁を渡る影一つ
- ゆるゆると春田の畔の散歩かな
- 鯉群れる日向に亀は甲羅干す
- 落ち穂拾う鳩の日向に薺(なずな)咲く
- 枝に立つ新芽一斉春野かな
- 桜花芽唇赤くこぼれたり
- 新築や木の香りする春の空
- トラクター轍の水に春の空
- 春は花勇気を凛ともらいけり
- 小虫湧く払い手繁き春の土手
- 犬ふぐり吾待ちて出る青き星
- いつもより動かぬ足や春の土手
- 陽の温さ背(せな)伝いくる影法師
- 赤芽樫温き日照らす安堵かな
- 鼓動聴く早春プールのクロール
- (2010年2月25日から2010年3月8日まで)
- 春雨や山峡溢る霞かな
- 菜の花や春雨愛ずる舞一つ
- 春雨や草踏みてゆくぬかる道
- 春雨や鯉遡上する浅瀬かな
- 一枚の紙捨てがたし春日和
- 雨あがる春日を流る車列かな
- 白蝶や菜の花の黄を踊りけり
- 公園の手水温みて花椿
- 舗装路や足伝いくる春の温
- 菜の花やなずなはこべら仏の座
- われもまた春七草の余勢借る
- 春雨や優し語りの耳の夜さ
- この春や撰者に媚びぬ歌の主
- 土温し花畑埋む媼かな
- 廃屋や椿の花煤け水光る
- 春一番一番星に犬ふぐり
- 春一番影清かなる街路かな
- 菜の花や脇入る道の幾筋ぞ
- 椿散って赤き輪残す大地かな
- 菜の花や黄の光揺る風の層
- 鶯やホーホホと鳴く日のうらら
- 山霞山に止まりし遠慮かな
- 桜花芽雨粒に映ゆ緑かな
- 風寒し花々蕾む巷かな
- 自転車や花えんどうの白き風
- 菜の花やみかん蕪れ畑蔽いたる
- 捨て猫や老いの早春賑わえる
- 菜の花や幾筋できるにわか道
- 春の七草に沿いゆく遍路標
- 踏切や菜の花の空うろこ雲
- 菜の花や中州に照らす鯉の群れ
- 藁塚や春の七草囲みたる
- じゅじゅじゅじゅじゅ春の呪術を群雀
- ヘリ潜る早春連々うろこ雲
- 桜花芽青める空の乱れ雲
- 鶯やはこべ燃えたり乱れ雲
- 魚道無く堰二分する春の鯉
- 堰あげて喫水高き春の雲
- 春雨や暗夜行路の温かき
- 花と蝶返り来たれり堰の水
- 潮干きて岸壁上げる春の動
- 春霞遠山隠す厚みかな
- 遠山や霞の底に潜りたる
- 菜の花や橋に交う道風匂う
- 桜花芽ふくらみ青む雲間かな
- 桜花芽露落ちかかる青さかな
- 白木蓮蕾重きや掌(たなごころ)
- 菜の花や寒風避ける背中かな
- この世の苦知らですくすく枇杷新芽
- 春嵐寒引き戻す菜の花路
- (2009年12月21日から2010年2月25日まで)
- 青ざめて雲問えば山紅葉降る
- 日矢囲む冬雲平野綺羅の里
- 古平野枯田神々し日矢の束
- 薄雲や日照らす枯田がらんどう
- 冬晴れや黒雲の怪愛し白雲
- 今朝会いし冬雲小富士眠たげな
- 青ざめて雲問う里や山錦
- 鶺鴒や日矢の里道横駆けぬ
- 枯田がらがら空きて雲黒き
- 風車(かざぐるま)菜畑青き冬の雲
- 照射(ともし)して薄冬雲の城下かな
- 買い物客の青空に冬雲の怪(け)
- 冬雲や土手急く男家並かな
- 軽トラやみかん積む老いの汗光る
- 腰痛の男の夢や冬苗木
- 空凍てて老談しばしば手水かな
- 突風や蝶飛ばされて土手の草
- 冬の雨君振る竿の大魚かな
- 年の瀬や歯科待つオチョボ並びおる
- 冬の蚊や客待つ部屋の安堵かな
- 年の瀬や先駆けて悔い数多(あまた)なる
- 年の瀬や気新たならざり荷物着く
- 自転車の人隠るるや草紅葉
- 小春がかる土手道母子揺れており
- かき曇る手水の窓の紅葉かな
- 藁伏してひこ生えの田薄雲る
- 舗装路や落葉空(くう)打つ反身かな
- 散り際や名惜しむ武士の茜雲
- 一むらの水菜薄がかる冬の雲
- 歳末やはやもタンポポ綿帽子
- リンゴ買う遺伝子連鎖二〇〇〇余年
- 自転車やクリスマス浮遊する街
- 冬枯れて眠れぬ闇や臓腑かな
- 落葉埋(うず)む山茶花に蜘蛛太りたる
- ミカン手に先祖守るてふ誇り顔
- 冬晴れや何時も凪ぐ瀬戸船を待つ
- 年の瀬を配る貨物や田の家並
- 焚き火囲む老いの欠け歯になごみかな
- 鯉骸(むくろ)冬のどぶ川告げるもの
- 建築のつち音霞む冬降砂
- 冬晴れや肥満犬引く肥満かな
- 腹返し一瞬光る冬の鯉
- うかうかと日は過ぐ老いの小春かな
- 鳥雲の散りゆく空や冬特急
- 満つ怒り冬雲の底沈めたり
- 冬嵐巷(ちまた)風圧超高ビル
- 籾摺るや雀降りくる寒晴間
- 赤々と落葉一枚アスファルト
- 鴨の嘴(くちばし)餌(え)探る水面かな
- 藁塚や伊予柑穫(と)りて静寂(しじま)かな
- 餅つきや昼の月ある東空
- 昼の月降砂に潤む年の暮れ
- 黒がねもちの実赫々(かっかく)影仕切る
- 鯉群れて小春の日差し動かざる
- 風車(かざぐるま)回す西風昼の月
- まわるまわる郵便さんの年の暮れ
- 手笠して小春逆光の池廻る
- 鳩群れて飛ぶ羽の朝日寒冴えて
- 尿意急(せ)く句作逸(そ)れたり遍路標
- 寒冴えて枯草かしぐ群雀
- 駄菓子買って鼻水たらす仏かな
- 寒晴れや清(さや)けき木影愛ずるかな
- 寒晴れや笹出て空に群雀
- 貴賎知らぬ貧乏性や冬の辻
- 冬雲や照らすハナカタバミの黄明り
- 餅つきや焚き火語りの老い若き
- 時雨れるや焼き芋売りが客急かす
- 冬嵐日矢射す晦日マーケット
- 元旦や車列疎らに凍てし雲
- 土手も池も田も家も凍てて乾ける
- 元旦や凍てたる橋の仏かな
- 凍て雲や裏に輝く入日かな
- 凍て雲やマラソン人の脛(はぎ)白し
- 凍て雲や鴉疎らに鳴く平野
- 空豆の凍てて静かな開花かな
- 凍て雲を夕日染めたり桜の木
- 茜雲窓に凍てたる忘れ物
- 寝正月神の目掛かる背中かな
- 息つく間ユータンラッシュ年明ける
- 寒緩む余勢に空の魯鈍かな
- 寒緩み拍子抜けたる世間かな
- 鴉どもに投網(とあみ)投げたき小春かな
- 移ろえる日の妖しさや三が日
- 着ぶくれを訪う筋雲や頬冷(すず)し
- 鴨の嘴餌(え)求む音の水面かな
- 連凧や幼子走る田のむくろ
- 藁塚や人の膏肓(こうこう)薄暗き
- 午後3時静寂(しじま)の宮の初詣
- 自転車の初荷の婦人平野かな
- タンポポや土手の斜面を枯葉分け
- 御幣白きかどの祠の小春かな
- 残光や鴨かまびすし影法師
- 物に当たる悲しき性や冬晴間
- ぬばたまの夢の文様冬嵐
- 何時か死ぬ足炬燵ほのか闇の幸
- 寒雲や家並の煙平野かな
- 竹藪の雲輝きて鴨の池
- 寒雲を割りて日矢射す川と家
- 雲累々浮かびし池の小鴨隊
- 冬雲や日矢千本にけむる里
- 冬雲や遠山隠す電波塔
- 左膝痛む寒雲日矢の里
- 土手に立ち日矢千本の冬の里
- 七草や物皆口入る孫天真
- 七草やパック詰めする自然かな
- 黒がねもちの実赫々(かっかく)見飽かざり
- 松の内子供道馳す足の羽
- 冬雲や来迎の日矢降りておる
- 紋次郎楊枝飛ばして枯葉かな
- 頬冷(すず)しシクラメンの冬朝日
- 釣り行や吾待つごとき冬朝日
- ジャンバーの胸開く小富士小春かな
- きこしめす翁語りかく冬フェリー
- 身は古りて小春の小富士フェリー来る
- 高浜や冬入日呑む小富士山
- 不安突如冬雲累々人の生
- 意味あるも消費狂なる小正月
- 草の芽の浅き田ほじる鴉かな
- ひたひたと風邪癒えてゆく夜明けかな
- 頬刺すに冬晴れ園児どよめける
- 梅咲く庭人あらずして華やげる
- 田起こして土新たなる平野かな
- 暖冬やふと恐ろしき冬の月
- 暖冬や富巨大なる黒き影
- 土手一人南無冬風の笹の音
- 笹鳴るや心洗える冬の風
- わが道をかく鳴る冬の笹に風
- わが道の崖深かりし冬神社
- 菜の花や田の新た土遠巻きて
- 善悪は皆同じほど桜花芽
- 福豆や喜怒哀楽を生きる人
- モザイクのニュース飽きたり冬の雨
- 戻らざる時照らすなり冬晴間
- 雨あがる陽の懐かしさ梅便り
- 臓腑かな春立つ朝日街路行く
- 登り竜朝日に枯葉分く新芽
- 弱からぬ詩吟流れて冬朝日
- 立ち話す空豆畑の冬朝日
- 梅咲くや花とつぼみの春談義
- 朝日射しわれまだあるや春の橋
- 手袋を脱ぎつ行く道山霞
- 老い夫婦小春の朝の草むしり
- 穏やかな小春の朝の山霞
- 警報機菜の花咲きて山霞
- 春立つや臓腑に赤き梅の花
- 春めきて川流る音鯉群れし
- 動かざる鯉群れており春の水
- 鯉登る小春の川や背びれ波
- 時巡る命の春や草青む
- 椿散って朝日に露の名残りかな
- 頬寒しジュース工場湯気白き
- 頬寒や春空深く澄む朝日
- 小春光る蕪(あ)れ地に植えし苗木かな
- 影躍る寒晴れ土手に草芽吹く
- 寒晴れや砂一粒の靴の違和
- 耕して田の土新た寒晴間
- 立春や寒波寄せくる峠かな
- さんさんと春光にあるわれ一人
- デデポポと鳩鳴く春の時計かな
- 耕起せる新土に群れる春鴉
- 梅咲きて蕾も追いぬ春の庭
- 春光や魚にも似たる石の影
- 風花や春光に舞う猫の宿
- 春光に風花光る古き橋
- 春光に風花光る街新た
- 古寺や春光がらんと一人おる
- 影法師清(さや)か老犬日向ぼこ
- 寒晴れて街の勇気の明さかな
- 影清か山茶花の空ビル高き
- 影清か街路の端の小春空
- 橋状に飛行機雲や小春空
- 塩打てり大根輪切る白磁かな
- 春雨や傘時々に地の温み
- 春雨やカタピラたたくアスファルト
- 土いじる新居の主や春立ちぬ
- 春雨や光らぬ鏡鳥威し
- 菜の花や一雨にして土手挿頭(かざし)
- 身をしぼる道春雨の一万歩
- 鶏に寒いかと聞く春市場
- 春光や梅百輪の庭静寂(しじま)
- 春雨や地温み足に伝いくる
- 春の大雪ワシントン今日の雲
- 若草の青める土手の冬日差し
- 梅の花丘の斜面に咲く朝日
- 梅咲きて観光バスの窓の人
- 高浜や釣り竿の先冬小富士
- 寒風や生き物生き難しごみの川
- 寒風に吹かれておりぬわれと田と
- 犬のごと草嗅ぎてゆく早春譜
- 春雨や鶺鴒駆ける傘の先
- 春雨や傘の内より山霞
- 春雨の傘の内より車列かな
- 気を換えて臓腑の知恵や春の雨
- わが街や寒風旗鳴る雄々しき
- 冬雲や舗装路染めて石仏
- 空豆の剪定屑に時雨かな
- たたら踏む足覚束な冬列車
- 梅咲きて庭の瑣末を照らすかな
- 餌探して鴨の嘴早春譜
- 一徹や蚊の越冬を断ちし寒
- 菜の花や特急列車巻きし風
- 道尽きず心は冬の桜の木
- 鶺鴒やぱと白黒に飛ぶ斑(まだら)
- 一瞬に早春列車日を浴びる
- 指温き早春の日の安堵かな
- 土手温しポンプ汲み上ぐ春の水
- 修羅の道早春列車行き過ぎし
- 欄干に雀ら日向早春譜
- 土塀に梅咲く庭の日向かな
- 「最徐行」菜の花の道細くして
- 影寒やコーヒの湯気たゆたいて
- 亀二匹甲羅干したる春の水
- くま橋で靴の砂取る春日かな
- 草魚泳ぐ影懐かしき春日かな
- 春日温し地上の星や犬ふぐり
- 生き難き世を箒目の春日かな
- 枯草の雀の花や春工事
- 公園に椿散り敷く円の春
- 上着取り腰巻いてゆく春日かな
- 菜の花の黄に収斂す光かな
- 蝶戻る菜の花にたわむれており
- 鶯の初音匂うや菜の花路
- 犬ふぐり土手先駆ける青き星
- また会えし懐かしの星犬ふぐり
- (2009年11月13日から12月21日まで)
- 手の平や胡麻噛みてゆく冬の街
- 大根や市場を棄てて花咲ける
- 目の測り誤差生む目眩(めまい)落葉踏む
- 木は痩せて蜘蛛太りたる冬の土手
- 蓮田枯るや飛行機雲の始発点
- 白蝶の立冬舞うも白々し
- 今日おらず捨て猫の土手水澄める
- 蕪れ田にて白髪薄(しらがすすき)の揺れており
- 今落ちた葉桜赤黄脈打つ血
- 鴨和む陽の水浴や高笑い
- 天と地の新た装い蕎麦の花
- 落葉散って土手道飾る神の御手
- 山茶花の蕾みし空の真珠雲
- 白雲散って小富士裏小富士瀬戸の秋
- 柿熟れる家並を呑みて雲立ちぬ
- 黒雲のひだ重なりて山紅葉
- 松枯れや紅葉と並ぶ古き門
- 木枯らしも丸め込まれし日差しかな
- 白蝶や土手従えて草紅葉
- 捨て猫や道の真中の冬日向
- 白々と入道雲や山紅葉
- 藁乾すを知るやタンポポ狂い咲き
- 重たげに鴨飛ぶ水やくしゃみかな
- 身は古りて天地は温き冬来る
- 鯉増えて川辺は桜紅葉かな
- 冬雲や黒き横腹頭上低き
- 野を踏むや銀杏の色の日々の相
- 薄日射し冬雲まだらに座りたる
- 日曜の車列多かり七五三
- 鳥脅しTシャツ翩翻冬の凧
- 鴉群飛び行く先の冬の雲
- 落葉積むまま動かざる日のありて
- 草の根を埋めて落ち葉の宿りかな
- 鴨蹴りし水面ひらひらと白蝶
- 線いくつ冬並んで光る鳥脅し
- 桜紅葉残り少なし枝の雲
- 土肥やす藁束整列静寂(しじま)かな
- 冬雲の姿態変幻果てもなし
- ジュース工場香りて冬の雲まだら
- 冬雲の染めて鉛の街衣
- 占拠する冬雲駆ける鳥の舞
- おしろいの花赫々と冬雲る
- 桜紅葉空のままなるベンチかな
- 裏に陽や真珠色らし冬の雲
- 鵯(ひよ)渡る海峡鳥雲(ちょううん)隙一瞬
- 冬雲や墨絵に変わる街路かな
- 山茶花や数あまたにて雲挿頭(かざし)
- 神の御手落葉敷く美を下賜(かし)したる
- 冬晴れて新た世のごと明(あか)きかな
- 青空に白雲散りて身切る風
- 電線鳥一羽冬雲睨みおり
- 冬雲の降りかね浮かぶ口惜し顔
- 冬雲の腹黒き性(さが)山隠す
- 冬雲の見下ろしている家並かな
- 冬雲の挿頭となりて家並かな
- やや赤目腹黒々と雲の冬
- 冬の雲太り損ねて蜘蛛太る
- 藁伏して空の冬雲眺めおり
- 昆虫の姿見えざり雲の冬
- 口惜しがる冬雲残す地平線
- 冬雲や質量転化なき句作
- 藁ひそと土肥やす日を待ちており
- 逍遥や藁影清き冬晴間
- 桜紅葉散り敷くベンチ日溜まりて
- 枇杷の花香沁みる雲の渡り鳥
- 鯉泳ぐ平和の日差落葉踏む
- 薄取る雲湧く空の土手の人
- 冬雲の群れて藁塚影寂し
- 空豆のビニール染める冬平野
- 群雲や十ほどの藁塚眺めおり
- 冬雲の船団着きし平野かな
- 桜紅葉木の間小山の落葉かな
- 籾焼けるじりじり黒き匂いかな
- 冬雲の俘囚となりて漂いぬ
- 黒々と巨鳥影さす冬の雲
- 小春日を背に小学校赤目樫
- 松剪るや小春の空の青さかな
- 小春日や隠れ蝶飛ぶ草紅葉
- 小春日に黒雲顛倒夢想かな
- 桜紅葉沁みる青空深いこと
- 乾し藁の影いくつある小春かな
- 行く当てもないカラス群藁平野
- 散り際に桜紅葉の赤さかな
- 桜紅葉落葉無心に空青々
- 晴れ際に散って冬雲真白なる
- 田の溜まり水冬晴れの白雲散れり
- 冬雲の挿頭(かざし)冠りて家並かな
- 冬雲や万物染めて鉛の兵
- 鶺鴒について歩くや雲緩む
- 防寒も汗ばむ今日や雲緩む
- 寒緩む散り難くして紅葉かな
- 昨日凍て今日暖かき蝶の舞い
- 厳冬一転初春来たり蝶の舞い
- 仏の座紫敷きて枇杷の花
- 落葉敷きて神の自在なアレンジ
- 足二本欠ける蜘蛛の巣みかんかな
- 銀杏留まりて小春の黄金波
- 昼の月挿頭に城下紅葉かな
- 影きざむ冬日鋭きナイフかな
- 鳶越え遥かな機影冬晴間
- 鵜潜りて嘴光る冬晴間
- 家並黒々と切る影の街冬晴間
- 桜紅葉影清々と空真青
- 日溜りてベンチに座る手の落葉
- 桜紅葉散った地天真青(まさお)かな
- 清々(すがすが)し黒き土影冬晴間
- 山々は紅葉を和えた膾(なます)かな
- 感性に響くひとひらの落ち葉かな
- 溝渇き吹き溜めし落ち葉うごめく
- 憂い晴らす天真の孫冬晴れ間
- 小春日や犬後に付く青き空
- 冬雲や変幻万化魅するかな
- 小春日や日差しの変る瞬時かな
- 冬晴れや散って白雲涯知れず
- 人車列冬晴れてピカピカな朝
- 冬日射し影の精細きざみたる
- 半世紀奇遇ありたり赤とんぼ
- 黒がねもちの実街路赫々朝日かな
- 紅葉冠る小富士に瀬戸の凪具合
- 昼の月山は紅葉の火照りかな
- 橋に交う紅葉赫々(かっかく)骨の髄
- 黒がねもちの実赤き標(しるべ)高浜港
- 屋根に上り枝刈る小春空果てず
- 修羅相や目やに子猫の日向ぼこ
- 落葉一枚わが身も等し宇宙塵
- 冬の田を切る影のうちわれ一つ
- 四季巡る終わりを照らす紅葉かな
- 影清々冬のみ影の世にすべし
- 冬の蚊や天上におり満月夜
- 浪費文明黒がねもちの実赫々
- 陽と影の寒暖肌照る街路かな
- 小春日や影と日向を縫って行く
- 桜紅葉並びて銀杏散り混ざる
- 小春日や逍遥ゆれる蝶の舞
- 小春日や慶事はこれに勝るなし
- 小春日や呪文の渦の群れ雀
- 鯉ゆたり小春を光る腹返し
- 鯉骸浅瀬に座礁す小春かな
- 雲のふち明かりて冬の月出し
- 大漁や波止暮れやすし竿の先
- 名月や暖冬暴走青き鮫
- 大根の葉青々と家並かな
- 旗なびく街路の向こう山紅葉
- 暖冬や訃報続きて櫨(はぜ)燃える
- 川床の落ち葉の上を落葉流れ
- 道過ぎる老婆幸ありや山紅葉
- 桜紅葉残る僅かな精鋭子
- 木枯らしを温暖の雲吹ききるか
- 歯も朽ちつ垂涎の日の冬晴間
- 年の瀬や銀杏巻き上げ車列かな
- 透明な木枯らしたまに月明かり
- 冬雲や山温暖の錦かな
- 鶺鴒や恋の乱舞す白と黒
- 木枯らしや菜畑回す風車
- 藁塚やひこばえ薄き浅緑
- 冬雲の船底の間に陽出る
- 草紅葉淘汰の果ての土手の道
- 落ち葉止める道草もまた紅葉かな
- あの婆は作句嘲る落葉かな
- 温暖や紅葉とどめる長さかな
- 青き瀬戸櫨(はぜ)の真紅と並び立つ
- ジュース工場香りし町の師走かな
- 冬晴れや稜線を切る風の層
- 川澄みて床敷く落葉赤黄かな
- 午後2時も桜紅葉の落葉かな
- 道草や落葉を刺して挿頭かな
- 桜紅葉艶(つや)増す空の青さかな
- 風晴れて銀杏散る足疲れたか
- 桜紅葉身反りて艶増す骸かな
- 神技ともいうべき歌や冬の闇
- パールハーバ日の丸帰還せず冬晴間
- 小春日やどぶ川生みてコスト減
- 暖冬や月影青き獣道
- 橋に寄せ臓腑染めたる紅葉かな
- 雲込めて素顔影なき桜紅葉
- 桜紅葉地を染む心訪ねたし
- 琵琶香る方十間に生きるもの
- 冬雲や山に幾重の墨絵かな
- 桜紅葉値知らざる色変幻
- 川床や落葉水澄む赤黄色
- 冬に降る温き雨の怪(け)背筋かな
- 海神(わたつみ)の青き瀬戸に櫨(はぜ)赫々
- 興居島や櫨燃ゆ島の巡り歌
- 黄泉の標(しるべ)島に櫨(はぜ)燃ゆ赤さかな
- 冬の雲鴉群れ飛ぶ草の道
- 散る落ち葉残る落ち葉にたすきかな
- 暖冬や雲湧き立てる湿りかな
- 雨宿る時雨のままに車列ゆく
- 落葉一枚舗装路雲込める
- 大雪や物皆口入る天真の孫
- あかねさす冬雲のひび架線空
- 人の気や陽のありがたさ世間様
- 冬銀河一番風呂の哲理ある
- 漢字忘却筆順倦(あぐ)む星月夜
- 欲望の電車煽るや冬の川
- ぬけがらか定年という冬日差し
- 老いてまた試練の山か日向ぼこ
- 冬晴れて大根ぬか漬け窓の日矢
- 山茶花や真珠雲棚引く空に
- ポインセチア赤と緑の輪廻かな
- 暖冬や緑残せし紅葉かな
- 鴨どもの静寂(しじま)隊列雲の池
- 草紅葉川を挟みて薄曇る
- 枯れ芒(すすき)漢詩吟ずる橋あたり
- 公園に落ち葉の衆の踊かな
- 物欲しと鴉の群れの平野かな
- 座礁せる鯉拾わぬか冬の水
- 梅が枝に雀の花や呪文かな
- 銀杏散って杉垣染める二三間
- 黒猫やポオ怪奇談寒き壁
- 籾摺るや冬雲真珠泡と湧く
- 櫨燃える祖霊は山に帰るかな
- 雪起こしようよう渡る日本海
- ヒマラヤの雪も消ゆるや狂い咲き
- 青い空象の冬雲ゆくりかな
- 冬晴れて駅舎がらみの山紅葉
- ターナ島赤桟橋の冬晴れて
- 小富士山割り込むフェリー冬朝日
- 冬晴れて群雲屋根に青ざめし
- 冬晴れて無頼運転青き鮫
- 寒風や楓赫々屋敷塀
- 冬将軍雲は青ざめておりぬ
- 落葉散り草道刺せるリボンかな
- 櫨燃ゆや欲より深き瀬戸の青
- 冬雲や稜線舐める長き舌
- 手凍えて土手草紅葉となりぬ
- 冬雲や棚引く街の魅惑かな
- 陽は低く空晴れて寒気包みし
- 冬雲の割れて日矢刺す家並かな
- 冬雲や日矢刺す山の塔光る
- 冬雲や塔おぼろげな山づたい
- 田起こしや新た土なる小正月
- あだ傘や田起こす土に冬鴉
- 鬱(うつ)の人飴舐めやがて冬空へ
- 寒風や仏頂面の責め落し
- 一歩ずつ憂い融けてゆく冬の塔
- 日脚伸ぶ目立ちがりやの花菜種
- 水門や鴉おらべり餌獲る鴨に
- なすすべもなき冬雲リュック負う
- 寒鯉や無心に泳ぐ仲間入る
- 誰も知らぬ生一つ閉ず冬銀河
- 雲凍てて魚打ちあがる寒波かな
- 凍て雲の晴れゆく夕べ希望かな
- 白木蓮愛しき花芽日矢射せる
- 寒風や日矢射す巷虎落笛(もがりぶえ)
- 機遠ざかる厳寒の闇布団かな
- 愚行空し熱燗一杯寒北斗
- 初春の雪降る港吉事ある
- 繁みなる花知られざり恋苦し
- 潮は満ち満月かなう夏の瀬戸
- ひばりあがりはたと止まりし憂いかな
- 落葉深し山魑木魅(さんちもくみ)の御手洗(みたらい)路
- 花再び父母亡き永久の世なるかな
- 陽に会えば希望蘇生す冬晴間
- 堰に来れば冬雲融けて魯鈍なる
- 草刈り機うなる新春農始め
- 橋にあり相会いて笑む小春かな
- 子に贈るパソコン一台冬の老い
- 舵失せて恋の迷路や空凍てる
- カーブミラーに老醜さらす冬の街
- 小春に釣られし車列鈍き光
- 胸開けて小春満ちくる竹の風
- 餌杓(しゃく)いて鴨の嘴鳴る水面
- 欠伸(あくび)して小春の橋を渡るかな
- 轟音の鉄路に枯れし草の夢
- 小春日の照らすベンチや寺寂し
- 山茶花や一輪赤き柵の外
- 新年の田の白煙や春耕起
- 気の精で再生もあり春の水
- 大寒や古ノート捨て空となる
- マスク捨てし道交(か)う車列寒緩む
- 鴨餌獲る銀波の紋のシルエット
- 「痴漢注意!」大寒の土手真昼かな
- 白菜の霜除け藁しべ朝日かな
- 小春日や鉢片づける小丸顔
- 視線恐怖空豆の花黒目かな
- 大寒や鳩飛ぶ先の霞山
- 足しだく健脚試す寒晴間
- 覚束なわがゆく道は冬晴間
- 煙草くわえ畝立てる鍬冬晴間
- 濃紺の手袋落ちてアスファルト
- 陽溜まれるベンチに掛けて広場かな
- 春めきて山に沿いたる家並かな
- 貧しくも普通がいいと冬晴間
- 凍てし街われは行くらむ冬晴間
- 凍て雲の固まる空や田草取り
- 冬雲や健脚欲しき男あり
- 野良猫に傘つき巣箱土手の冬
- 立ち番や旗持つ無沙汰冬の橋
- 枯草の雀崩れて列車かな
- 田起こして藁束一隅片づけり
- 冬日射す車の把手に「poor」と
- (2009年11月7日から11月13日まで)
- 逆巻くや秋の峰伏す夏の雲
- 白蝶舞いて秋ゆり戻す夏の雲
- 大根畑飛び交う白蝶温き秋
- 石塀に花カタバミの心尽し
- 何時しかに山茶花垣に咲きにけり
- 落ち葉吹きて渇きし音や車列かな
- 伊予柑の色付く畑に呪文かな
- 藁塚や焼却煙のあがる畦
- 菊の花わが父母の墓参したし
- 石蕗咲くや仏の座る如きかな
- 落穂拾う鴉の群れの平野かな
- 黒々と田を焼く煙柿熟れて
- 呪文唱え落ち葉散るなり温き風
- 冬立つや古いノートを破り捨つ
- 立冬や雷雨一閃己が過去
- 立冬や句想潰える温き雨
- 雨に濡れた山茶花に会う今年かな
- 群れ雀呪文輪唱す冬立てり
- 木の実赤し何赤々と問いしかな
- 温き雨立冬の土手蜘蛛太る
- 枇杷咲きぬ川面を走る濁り水
- 鵜潜りて口の川魚冬日射す
- いぶかりつ捨て猫寄るや冬の雲
- 藁塚や雨溜まる田に裾濡らす
- 名月や伊予柑山の夢抱きて
- 藁束や人立つ如し読経かな
- 落葉散る葉の新旧を打ち重ね
- 落葉踏む遍路の標(しるべ)大山寺
- 桜並木根方の落葉枝の雲
- 桜紅葉散りやまぬまま老婆座す
- 地底より冬立ち上がり星鋭利
- 木枯らしや寄せては返し静寂かな
- 樗(おうち)散って土手の舗装路薄緑
- 老いを撃つ木枯らし右手に笹騒ぐ
- 木枯温し田はひこばえの緑立つ
- 落葉散る古き落葉に打ち重ね
- 屋の屋打ち重なりて落葉散る
- 土手の眺め山家の色に冬立てり
- 木枯らしや倒されそうなみかん畑
- 癒えて歩く喜び噛みて落葉踏む
- 木々痩せて通り広がる冬日和
- 陽の辺り雲真珠色青い葱
- (2009年11月1日から11月7日まで)
- ゆく秋や撰者うらみて評論家
- ゆり戻す秋の日澄みて柿熟れる
- 冬雲の紫寒き日差しかな
- 冬立つや土手澄み渡り顔締まる
- 稜線の縁(ふち)影絵なる冬の雲
- 冬立つや陽の明るさに桟掃除
- 冬雲やおしろいの花あまた咲く
- 冬雲や巣の破れたる蜘蛛太る
- 枇杷の間渡す蜘蛛の巣光るかな
- 懸け稲や空となりゆく冬の雲
- 笑顔晴れて行く人見るや冬の雲
- 桜紅葉冬雲に影冴えざえと
- 冬雲の影青白く峰になびく
- 月明かり稲刈り跡の淡きこと
- 雲も無き月光屋根ども抱く影
- やわらかき月光踏みゆく街よ
- 月光浴びれば心淡く溶けたり
- 月光やまつげに青しさまよいぬ
- 霜月に風来坊白蝶あまた
- 土手の秋夢心地なる蝶白き
- 残光を浴びる喜び秋の鍬
- 道で突如吾にかえるや秋の風
- 秋冬の神争いて雲乱る
- 浮き草やはかなき夢を窓の月
- 伊予柑や色付く夢を月明かり
- 名月や伊予柑累々眠る原
- 虫のごと時計の針や月明かり
- 秋深し街路に落ちる影の量
- 田焼く煙立ちて白蝶花の如
- 白蝶の花と揺れたる大根畑
- 藁塚の伏せる向こうに家並かな
- 空晴れて藁塚伏せる日向ぼこ
- 藁乾すや中学校のチャイム鳴る
- 藁塚の錘群れたちて秋桜
- 霜月や稲架(はざ)やや空となりにけり
- 狂い咲くタンポポの花鯉登る
- 撰句恨む歌主(うたぬし)なるや月そぞろ
- 天高し投打相食(あいは)む目の光
- 霜月や白蝶数多温暖化
- 霜月や田はひこばえて年越すや
- 霜月やビニール畝の豆双葉
- 溝の蜘蛛肥満体にて温暖化
- 月上り山家影抱く淡き光
- 立冬や狂い咲きたる花と蝶
- 月動く光と影は従者かな
- 平野空(あ)く刈り株の群れ藁の原
- 鵯鳴きて袋掛けみかん花ならむ
- (2009年9月28日から10月31まで)
- 秋雨前線湿舌温き彼岸花
- コスモスや時空を揺れる鮮やかさ
- 稲穂熟れて観念したる重さかな
- 萌黄色の極まる稲田天地かな
- 生臭きどぶ川行くや萌黄の田
- 秋雨前線の雲巻く巷彼岸花
- 籾焼くや秋雨前線巻し雲
- 萌黄の田美の美眺める案山子かな
- 萌黄の田白鷺の美しのぎたる
- 萌黄の田秋雨前線雲巻きつ
- 秋深し暮れ易きかな夕化粧
- 眠られぬ秋雨いつか月明かり
- 天高し潮目交う瀬戸に小富士山
- 名月や虫鳴く声の鈴と鳴りて
- 名月や肝胆照らさず山黒々
- 名月や雲居て瀬戸の真上かな
- 台風過秋風寒し旗鳴りて
- 黒雲はわんさと残りチチロ鳴く
- 台風過野分騒げる黄金の田
- 山呑みて黒雲盛りぬ台風過
- チチロ虫星と鳴く道小学校
- 人群れに知る人もなし秋の風
- 稲熟れて萌黄絨毯敷く田かな
- 柿食えば簾(すだれ)洩る陽の暖かき
- 台風の呼ぶ秋猫の日向ぼこ
- コスモスや薄紫の風揺れる
- 台風の呼ぶ秋トンボ隠せるか
- 懸稲や木犀香る辻曲がる
- チチロ鳴いて伊予柑の実玉太り
- 露草の花藍深しチチロ鳴く
- 鞄忘る由良の江いまだ天高き
- 初栗や友もてなせるやさし味
- 風邪ひきて晴れし秋見る窓の空
- 天高し深き無限の澄み心
- 萌黄の田天高き日に刈り取らる
- 萌黄の田深さ無限の天の青
- 玉簾(たますだれ)白染み渡る土手に居る
- 天高き日は等しくもわれに深き
- 萌黄の田白雲浮かぶ天青く
- 懸稲や平野に土の色戻る
- 懸稲や馬立つごとき影寂し
- 藁束ね藁しべ長者お百姓
- 温暖防止掲ぐ秋魔の眼潜む
- 黄金の田に隣るひこばえ緑の田
- 春霞島影千古竜潜む
- やせ子猫玉簾白き土手の杭
- 銀杏わずかに色づき白蝶忙し
- 籾殻焼けし跡黒々と秋深し
- チチロ鳴く秋深まりて昼の星
- 秋空濁す雲たなびきて暖かき
- 天高しところが山の端雲の峰
- トンボ少なくて揺れるや秋桜
- 風軽くチチロ鳴く水辺光りぬ
- チチロ鳴く水辺は澄みて夕化粧
- 取り入れて土色戻る渡り鳥
- 金稼ぐ言かまびすし秋の風
- 秋風の巷に溢る恵みかな
- 秋風や溢れるほどに足も軽き
- 秋風の溢れすぎたる肌寒さ
- 虫鳴く無心の原に月浩々
- 修羅相抜きがたし秋風サララ
- カタバミの花赤々と白蝶迎ふ
- 鈴振りてチチロ鳴く捨て猫悲し
- 揺れもせじ薄白々と蕪れ田かな
- 鳥どもよ渡り遅るな秋暮れる
- チチロ鳴く蕪れ田に立てば昼の星
- 暗き顔生徒帰れる黄金の田
- チチロ鳴く田の稲刈るや星心地
- 秋刀魚食う衆庶のレモン哀歌かな
- ゴオゴオと背戸で稲刈る日和かな
- つぶら瞳の無限光天高し
- 街なかに取り残されて黄金の田
- 釣瓶落とし家並影濃き街路かな
- チチロ鳴き鈴となる街暮れ易き
- 天地の間一粒の砂渡り鳥
- 蜘蛛の巣破る風が薄揺する
- 風呂で死せる秋の蚊杓い捨つ
- 秋長(た)くや選句うらみて髭剃りぬ
- 昼蕪れ田虫鳴く寝言ありにけり
- ジュース工場の香りは今年異なれり
- 秋の果て蜘蛛の巣多くなりにけり
- 白蝶や収穫終る田の煙
- 白蝶の群れて円舞す草の秋
- ひこばえの春田に紛う余勢かな
- 収穫の気忙し気配雲不動
- 柿酔いて伊予柑酔えぬ青さかな
- 蜘蛛の巣を草の実濁す風増せり
- 蜘蛛太り草の実濁す巣に居りぬ
- 虫共の生命の終わり蜘蛛太る
- 人生の癒えざる傷や秋の風
- 花開く帰路のジョークに竜淵に潜む
- 時移す速さや秋の日陰かな
- セイタカアワダチソウ土手一列に池眺む
- 核禁止掲げる世界竜淵に潜む
- 正直の酬い少なし柿熟れる
- こもるには惜し天高き街出て歩く
- 藁塚の立ちて黒々影絵かな
- 畝立ちて土新たなり秋長けし
- 藁束を干すごと一つ黒き影
- 眼前の葉桜色づきて鰯雲
- 天仰ぎ深く息吸う岐路の秋
- 陽没して萎え登りて元気秋深し
- 草紅葉知らずカタバミの花赤々
- コスモスの揺れるを知らず読書かな
- 白蝶乱舞藁焼きし田黒々し
- セイタカアワダチソウ亀の潜水見て居りぬ
- 薄揺れて招き美し蕪れ田かな
- 鶺鴒の早がけするや風の道
- 藁塚の今日は照らざる景色かな
- 田螺累々水無き田の面夢の跡
- 草の実や蜘蛛の巣濁す乱れうち
- 彩りや日々に開きし昼夜温
- 稲刈りて畝新しき土の色
- 街路樹をまたぐ蜘蛛の巣雲の秋
- コスモスの真紅落魄を撃つ如し
- 雲の秋修羅相醜き己が顔
- 雲の秋外人客は島へ行く
- 雲の秋鴉群れたる子持ち山
- 若者は自在に間取りて雲の秋
- 秋風や薪船踊り楠揺りて
- 弦月や薪船踊り雲の秋
- 流星無くて弦月走る雲の間に
- 雨にぬれて秋の乾きを癒しおり
- からからの街に秋雨潤いぬ
- 秋雨や木の実赤々と空港へ
- 一瞬の着陸緊張雲の秋
- 落葉踏みて木橋を渡る親子かな
- 全山の紅葉車窓に開けたり
- 暮れる紅葉の山に鴉群れ飛びぬ
- 連山紅葉間歇泉は泣くばかり
- 旅の秋夢心地にて不眠かな
- 秋を食う馳走の数の胃の腑かな
- 連山紅葉車窓遠近錦かな
- 登りゆく紅葉の果ての鴉群
- 錦秋の連山断てる窓氷
- 錦秋や朝日の黄金浴びにけり
- 小樽の青空深く山錦秋
- 世を凍らせる真言ありて紅葉映ゆ
- 一本の紅葉明るき世界かな
- マルクスの思索偉大に夜長かな
- 一本の紅葉の道や万華鏡
- 天高し旅の雑念そのままに
- 天高し四肢は健在蝶白き
- 天高し土手草どももやや紅葉
- 白蝶の止まるも飛ぶも土手の秋
- 木々染める紅葉は奥の美なるかな
- 尾振り早がけ鶺鴒遊ぶ秋日和
- 取り入れて鴉追い込む群れ一つ
- 腹返し秋光るかな稚魚の床
- 秋日和朱鯉赤々ゆたりかな
- 秋日和命止む如穏やかさ
- 白鷺や鯉逃散の秋の水
- 堰下りて鯉登り行く秋日和
- カタバミの照らす根石の秋もありぬ
- 隙間風鼻水垂れる秋季かな
- 花カタバミ照らす小道のりんご買い
- (2009年5月20日から9月28日まで)
- 池満ちて栴檀の花空晴れし
- 初夏や垣刈る空の老夫婦
- 鯵釣やわがうちにある暴れ川
- 初夏やキューリ糠漬け朝餉かな
- 紫陽花の咲き初めし町雲薄く
- 草の香や目前を切るつばくらめ
- 栴檀の花呼ぶ如し雲の群れ
- 車列無常天地有情の毛虫かな
- 蕪(あ)れ畑や鶯鳴きて風呼びぬ
- 紫陽花の咲き初めし山雲の峰
- ガザニアの燃える陽射しを歩くかな
- 鯵釣やうき吸い込まる目の一瞬
- 渇水やカタバミの花目の癒し
- 渇水や街闊歩して足埃
- 額紫陽花の咲く一片や雲の峰
- 渇水も吹き飛びており嬰児泣く
- 栴檀の咲く空の色紫雨
- 初トンボ草いきれ熱風流る
- 紫のアザミに蝶の白黄2羽
- 笹の葉の新生青き風ぞ吹く
- 童心やコガネグモの巣見ておりぬ
- 薫風に足取り軽き平野かな
- 薫風や凧乱高下鳥脅し
- 草生して青山飽かぬ浮世かな
- サツマイモ苗伏す畑の乾きかな
- 空豆の茎の骸や草の道
- 土手行きて花の輪廻の心知る
- 灌漑の側溝さらえし泥土かな
- 薫風や一万歩行く浄土かな
- 額紫陽花の外輪咲くや二三片
- 白薔薇の花汚るるも無常かな
- 野茨や泡沫と消ゆ夢のうち
- 土手に枇杷熟れるや虫の食いし傷
- 雲映す湖面群れるやつばくらめ
- 紫にアザミは揺れつ青嵐
- 栴檀の花香りつつ青嵐
- 花過ぎて山渡り行く青嵐
- 青嵐山腹白く波立ちて
- 空豆の骸(むくろ)さ緑田一枚
- つばくらめ葉桜並木群れ飛びて
- 葉桜を群れ飛ぶ燕風騒ぐ
- 鳥脅しとうきび支柱無為の風
- 暑さ寒さ分け難き日や衣替え
- 片隅にとうきびの畝鳥脅し
- つばくらめ湖面の雲に群れ飛びぬ
- 群れ飛びて葉桜くぐる燕かな
- 糠漬けにキューリ塩打つ晴間かな
- 手づかみの近さ群れ飛ぶつばくらめ
- 笹新芽薫風染める青さかな
- 童心に返る引き金コガネグモ
- 田植前玉葱干せる畝半ば
- さくらんぼ実を踏み染めてアスファルト
- 群雲や万緑の山ごろ寝する
- 群雲や万緑ねたむ青嵐
- 五月耕につき従いて鷺雀
- 帰り来て一陣の風欲しきかな
- 枇杷熟す巷に残る古木かな
- 陽炎の清濁混ざる匂いかな
- 白蝶の舞うや青笹道さやぐ
- 若草や道突っ切ってつばくらめ
- 古井戸の蓋欠けし田水未だ
- 慰める真白な花の名も知らず
- 車列無常虫共踏みて五月道
- 田を鋤くや鳥どもついて虫拾う
- 踏みしだく足の力や青嵐
- 水足りて田は鋤かるべき時孕む
- 蕪地(あれち)舞う燕変幻もつれ糸
- ランダム飛(ひ)蕪地上空燕かな
- 葉桜並木熱孕む風を歩くかな
- 葉桜並木影に出入りて歩くかな
- 堰上げて土手すれすれに田植水
- 渇水や小雨悔しき空騒ぎ
- みどりごや新た世に泣き薔薇香る
- 梅雨入るやアジアモンスーン湿り来る
- 梅雨曇る山懐(ふところ)の小学校
- 梅雨雲やアスファルト路の濃さ増せる
- 五月雨を待ちて紫陽花萎れたり
- 堰上がりトラクタ唸る蝶の道
- ひばり上がる野に梅雨雲の薄日かな
- ひばり鳴く野はビー玉のさざれ音
- 鶯に口笛かけて山に沿う
- 堰上げて枝浸かりたる田植水
- 三寸足らず針葉震えし早苗箱
- 闊歩する足嬉しさやつばくらめ
- おしろいの花ピンクにて過客かな
- 梅雨雲の吹き寄せる風コガネグモ
- さくらんぼ踏むや染めたり紫野
- どくだみや遠き昔の傷の膿
- 黒目きらり目覚めし嬰児暑くなるか
- 時の端や余りにあらず雨乞いす
- 死にかけて蝶顫動すアスファルト
- 青笹青し輪廻転生大自然
- 青笹に白蝶二羽来て遊ぶかな
- 霧雨や蒸し暑き日を蝦蟇唸る
- かんな赤し雲のどぶ川つばくらめ
- 渇水や雨音の一粒ずつを聞いている
- 渇水や雨音憎きまがいかな
- 蝦蟇鳴くや重低音の釜に入る
- みどりごの天真重き抱き心地
- 田一枚水は入りたり群れ燕
- 青臭き梅雨晴れ池の濁りかな
- 紫陽花や晴れ際の露残したる
- 樋を開けて田に水浸むや楕円形
- 補陀落を訪ねゆく道夏木立
- 田に水や美田の初め風の紋
- 樋に落ちる水音忙しゲンゴロウ
- 土手の池梅雨色に染む湿りかな
- 川流る音親しさや梅雨晴間
- 栴檀の葉陰涼しきごろ寝猫
- 水入るや田は匂いたち燕飛ぶ
- 蒸し暑さ一陣の風草魚かな
- 重波(しきなみ)や白砂のごみよ夏の浜
- 道燃えて栴檀の陰鴉かな
- 早苗立つ国の礎(いしず)の昔かな
- 代掻きや渇水の空映しつつ
- 渇水や日焼けて蛸顔鏡かな
- 仕事終え笑顔安けり夏の畑
- 鳩死んで羽毛散らせり梅雨晴間
- いわれなき非難流速つばくらめ
- 子燕も混ざりて飛ぶや水入る田
- 歯科出るやペチュニアわれに咲いていた
- 池に入るわが影涼し夕日かな
- 稲の道古き歴史や早苗立つ
- 渇水や合歓(ねむ)咲く土手の夢幻かな
- つばくらめ夕日の廂(ひさし)親子舞う
- 合歓咲きて渇水忘る暫(しば)しかな
- 千年の早苗の夕日前にある
- 風紋や早苗に夕陽やわらぎて
- 百合真白わが身世に古(ふる)人の世に
- 合歓咲きて揚羽止まりつ夕陽かな
- 黒揚羽合歓の蜜吸う夕陽かな
- 野苺の粒赤々と夕陽かな
- 雲来るアジアモンスーンの肌触り
- 田植機が田植える見つつ驚かず
- 早苗立つや梅雨空と山の鏡なる
- 梅雨雲や切り落とさんか垂れしまま
- 涼風よ吹けや板間の梅雨晴間
- 慈雨ありて闇に安堵の蛙鳴く
- 遠く近く蛙鳴くなり闇の中
- 渇水を張消しにせし大雨かな
- 蛙鳴いて闇に経聴く心地かな
- 闇枕背戸に蛙の無心鳴く
- 蛙共雑談合唱大雨かな
- 闇測るわが耳に蛙無心鳴く
- 地底あるごとくに鳴くや蛙共
- 家壊す土匂うかな梅雨晴間
- 竹の道葉さらさらや蝦蟇唸る
- 染めかねて早苗緑の影残す
- 蝦蟇鳴きて地底で唸る地獄釜
- 早苗田を自転車駆ける真昼時
- 雑草のわれがちにあり黒揚羽
- アジアモンスーン逸れて涼しき伊予路かな
- 早苗立つ向かいで休む椅子の人
- 夾竹桃花白くして雲の峰
- 雲の峰緑陰泳ぐ草魚かな
- 霧晴れて送電塔の雲の峰
- 補植する農夫早苗の真中かな
- 反射する田の眩しさや早苗田
- アジアモンスーン濃霧残して谷間かな
- 半夏生田はさ緑に薄曇る
- 梅雨雲や田を染めている湿り元
- 漂いて路傍の目眩(めまい)早苗立つ
- 芋蔓や飢えの往昔(おうせき)走馬灯
- 赤とんぼ稈をつかみて梅雨曇る
- 樋門出る水ごぼごぼと早苗かな
- 肥え振るを田の傍らで遍路かな
- 蝦蟇鳴いて地底割れたり田草取り
- 葛伸びて芯踏まれたる路肩かな
- 関節の痛み変われり赤トンボ
- 梅雨曇る早苗立つ野の列車かな
- どぶ川や卑賤の鯉の梅雨曇り
- 輪を描きて稚魚群廻る池の梅雨
- 影に入りて一息つくや雲の峰
- 早苗田や平野渡りて列車かな
- 猫の足霧這う平野早苗立つ
- 糸トンボ蕪田の隅の濁り水
- 梅雨晴間早苗踊るや風の群れ
- 早苗田に夕陽涼しき緑かな
- 雲の峰田で遊ぶ子ら網舞いて
- 梅雨雲の風背押すや草の波
- 梅雨雲のたなびく夕陽見ても飽かぬ
- 夕風の早苗揺らせる安堵かな
- ビル街を抜けて城山梅雨煙る
- 梅雨貯めて満ちたる池の草の畦
- 早苗育つ田の水鏡狭まりて
- 遮断機や稲青々と列車かな
- 真実を知る難しさ青田青し
- 蛙鳴かぬ夜さや梅雨明け期すべしや
- 木影ぞ標(しるべ)こなたに入らせ息継ぎに
- 雷雨にて軒端伝うや日向臭
- 肉縛る魂ありぬ梅雨末期
- 元なしとりんご安かり梅雨の街
- 池満々風温(ぬる)き道濁川
- 濁川風に流され赤とんぼ
- 赤とんぼ湿舌に舞うは重きか
- 白鷺や田鏡閉じて緑のみ
- われ囲む梅雨雲群れて赤とんぼ
- 田鏡の閉ざさる平野緑かな
- 樋門鳴り桃色まだらタニシ卵
- 赤とんぼ増えてねぐらは何処(いずこ)なる
- 魚影見て川筋歩く夏心
- 梅雨明けの陽射し煌々軒端伝う
- 熱帯夜残夢うつつに明け蛙
- 乱れ雲梅雨明けかねて赤とんぼ
- 梅雨明けの炎暑に蝶の千鳥足
- 明けきれぬ梅雨にもつれし蝶二頭
- 梅雨末期黒雲なびく蝉時雨
- 梅雨末期黒雲動かず草の露
- 幻聴のままに機下りぬ梅雨空港
- 風景の見えぬ風呂入る都会梅雨
- 梅雨雲を越す機太陽明かるかな
- 梅雨雲の切れ目機ありて人家かな
- 梅雨雲や機は薄日坂駆け上がる
- 長梅雨や大暑を過ぎし豪雨かな
- 稲伸びて田鏡閉ざすさやぎかな
- 蕪田(あれた)にて赤とんぼ舞う大暑かな
- 戦陣に散りし墓石の大暑かな
- 蝦蟇鳴けば汗だくだくに赤とんぼ
- 梅雨未だ豪雨の雲に茜かな
- 一群の鷺談合に稲さやぐ
- 人を呑む豪雨に地続く虹シャワー
- 腹立つも空群れており赤とんぼ
- 灰色にベソかく街や長き梅雨
- 長梅雨や萱(かや)吹く風の濁川
- 透かし見るや赤とんぼ増す蕪田(あれた)かな
- 赤とんぼ橋周り飛ぶ穏やかさ
- 梅雨未だ赤とんぼ群れ飛ぶ美あり
- 濁川われにぶつかる黒揚羽
- 草生(む)して火照るや梅雨の薄曇り
- 梅雨雲や列車一両稲平野
- 葛伸びて白線越ゆる寝相かな
- 赤とんぼ羽泡沫の青田かな
- 田に立ちて稲渡る風眺めおり
- 湿舌に目覚め雷鳴オドロかな
- 空蝉や生死分からぬ友のこと
- 空に散る幻想破片赤とんぼ
- 温暖豪雨根こそぎするや財生命
- 午後2時の暑き陽背に雲の峰
- 暑き陽や栴檀の影はよ入らせ
- 暑き陽や人の世厳し段畑
- 影に入らせ朝顔しばし見てゆかん
- 日新た夏街路樹の朝緑
- 暑き日やたち換わる人船着場
- 蝉時雨鬼百合窓に招き入る
- 湿舌や花麗しき路地行きぬ
- 影に入らせ炎暑にゃ勝てぬ日照りぞな
- 街なかや田に風紋が一呼吸
- 梅雨雲や機のスチュワデス花となる
- 白々と黒雲越えて雲の峰
- 梅雨雲の何時まで池に鬼やんま
- 茶一杯青田風紋さやぐかな
- 赤とんぼ農夫は老いて稲の空
- 熱き日や唇にがき青葉風
- 蛙かすか心静かな夏の月
- 風紋の鬼ごっこする青田かな
- 赤とんぼ羽悠々と夕陽かな
- 入日は背風紋遊ぶ青田かな
- 青田らは半ば影入る夕陽かな
- わが影は青田歩きて風の紋
- 核爆の魔力頼むや大蛮政
- 鉄路燃ゆ背に一筋の滝流る
- 青春の蹉跌空間炎暑かな
- ロック吠えて小富士の麓夏祭り
- やり直しコスモスの風涼しかり
- 台風過迎え火焚きし庭湿る
- コガネグモ少年の夢草いきれ
- 台風過青田ばかりの風の盆
- 秋風や蝶一対の残暑かな
- 爽涼や青田駆けゆく風の紋
- 盆の風裏山遠き蝉時雨
- 積雲や風無き池のお盆かな
- 盆の風積雲なびく青田かな
- 青田飛ぶ白蝶一羽終戦日
- あぶら蝉裏に隠れし桜かな
- はと気付く溝に真白き玉簾
- 積雲や蕪れ地に低き赤とんぼ
- 人無くて積雲赤き夾竹桃
- 蚊遣り置き読書再び晩夏光
- 道挟む萱(かや)肩ほどに盆の風
- 青田青し家並浮かべて盆の風
- 木漏れ日の部屋に秋風ところどこ
- 秋風や別れ歌など似合おうか
- 秋風や失いしもの告げる音
- 竹の道曲がりて涼し秋の風
- 蝉の声はたと止まりぬ真砂道
- 塩からトンボわが足元の残暑かな
- 逢うたびにわが目染め抜く青田かな
- 薄揺れて残暑の影の墨絵かな
- 秋風や萱影引きて夕べかな
- 秋風や自転車一台の青田かな
- 朝顔や赤く蕾めるおちょぼ口
- 秋風のわれに訪い来る青田かな
- つくつく法師命の限り秋の風
- 茹だる街自転車吹かす秋の風
- 鯉どもに亀は残暑を見舞うかな
- 鳥威し残暑の風を光りけり
- 台風や湿舌入りて街茹だる
- ようように爽涼の風花芙蓉
- 芙蓉咲いて積雲なびく今日の土手
- 積雲や青田白々噴霧立つ
- 夕涼む連れ立つ親子青田かな
- 老老の車椅子押す青田かな
- 積雲や今宵も青田蒸す夜なる
- 青田縫い秋風光る車列かな
- 夕化粧花赤々と二三百
- 爽涼やおしろい花の二三百
- 消毒に軽トラ沈む青田かな
- 見上げるや天高々と稲穂かな
- わが影や青田に落ちて秋の風
- 半袖や風に足らざり鰯雲
- 秋風や胸に息吸う空の色
- 草分ける秋風の音陽の乾き
- 鉄路割る稲の平野に秋の風
- 赤とんぼ青田に失せて秋の風
- 青田吹く秋風増えて赤とんぼ
- 秋風や稲も熟れたる直射かな
- 夏と秋つば競り合うや空の色
- 泳ぎたり読書は夢に続くかな
- 秋風や残暑に挑む出入りかな
- ボーボースットントン残暑暑きというなかれ
- コスモスや尚足すくませる残暑かな
- 田蕪(あ)れて湖口潰せる無残かな
- 秋風の耳吹き来るや出穂期
- 秋風や辻々にある残暑かな
- 赤とんぼ影と二つの秋の風
- 秋風や穂の色増せる田の真昼
- 電車唸り鴉四散す秋の風
- 無と思う裏にある有鬼やんま
- 案山子立つ街中の田秋の風
- つくつく法師寂し夏歌夕暮れて
- 台風や茹だる街抜く秋の風
- 青田通る鉄路の錆や台風下
- 萱揺れて野分壊せり蜘蛛の糸
- 穂の色が加わり騒ぐ野分かな
- 稲穂揺する野分の音や鳥脅し
- 青田渡る野分の音や旅列車
- 桜並木青田を縫いて野分かな
- 鬼やんま命惜しむか背の青さ
- 二百十日風増す空の槿(むくげ)かな
- 二百十日風吹き込みて大根(だいこ)切る
- 青田守りて赤とんぼ飛ぶ野分かな
- 二百十日風吹込みし座敷かな
- 風満ちる二百十日過ぎし街
- 朧(おぼろ)月二百十日に静かなる
- 稲穂香る青田は揺れず静かなる
- 穂の色に何時しか染まり赤とんぼ
- 穂の色に染め上げられし黒揚羽
- 穂の色に染め上げられて平野かな
- 穂揃いて積雲なびく夕陽かな
- 夕涼し夾竹桃の花赤く
- 稲穂たわむ力を得たり風嫋々
- 萱刈りし白露の道の残暑かな
- 塩からトンボわが足元へ直訴かな
- 伊予柑の玉太りたる白露かな
- おしろいの花赤々に昼寝かな
- おしろいの花赤々に列車行く
- 稲穂揺れてつくつく法師蝉時雨
- 積雲や台風連れし風の袖
- 稲穂たわみ嫋々揺れる実りかな
- すじ雲の腹ばう空や涼む人
- 秋蝶のわれに付き来る涼しさよ
- 天高しにちにち草の花笑顔
- 闇に火や心温める花芙蓉
- 青田見て過ぎこしある日彼岸花
- 朱に染まる時勢に秋の天高し
- 天高し乾きて直射稲穂かな
- 陽の色の乾きて秋の物語
- 命短し塩からトンボ秋の風
- 彼岸花咲き初めており風車(かざぐるま)
- 草の種蜘蛛の巣汚す野分かな
- 眼下には稲穂揺れるや赤とんぼ
- 秋風や稲穂踊りを赤とんぼ
- 蝉時雨稲穂嫋々と音軽き
- 稲穂さわわ目の高さ飛ぶ赤とんぼ
- 花芙蓉心打つ美の超々速
- 玉簾(たますだれ)清廉の志真白なる
- 競い鳴く蕪れ田の虫や暮れなずむ
- 彼岸花かっと赤かり浄土門
- 土手行けば青田ばかりの風の果て
- 温暖化地球氷冠屍かな
- 夢のかけら赤とんぼ飛ぶ稲穂かな
- 心象の安堵伊予柑玉太り
- 高浜や霧立つ秋の伊予小富士
- 某々の指名手配書秋暑し
- 時過ぎる不可思議ありて秋暑し
- 時進む不可視の時空伊予小富士
- 中巌前神社秋風涼し瀬戸青し
- 島影を照り残してや瀬戸の月
- 興居島へ渡る十分秋フェリー
- 伊予小富士民家の背後秋立ちぬ
- ターナ島マドンナ居るや秋の月
- 人生きる知恵の輪ありぬ路地の秋
- 宿痾なる修羅そのままに穂波かな
- 真昼間に虫星と鳴く蕪れ田かな
- 台風の積雲静か秋桜
- 星の如虫鳴く蕪れ田真昼時
- 稲穂垂る重々しさや鳩鳴きつ
- 伊予柑の玉太りして彼岸花
- 夫婦して麦藁帽や鳥脅し
- 露光る稲穂に飛べる秋茜
- 芝垣を抜きて赤々曼朱沙華
- マンションの壁縫う電車秋茜
- 天高し浮雲ありてわが定め
- 葉桜の色づく秋や陽煌々
- 逝きし人見送る墓の残暑かな
- 残暑厳し秋茜群駐車場
- 目を焼くや花紅に彼岸花
- 針葉の下に沈みて稲穂嫋々
- 稲穂たわむわが満足の秋の風
- 頭垂れて稲穂揺れつつ曼朱沙華
- 秋風や歌う声聞く穂波かな
- 秋風や樋門の水音とともにあり
- 秋風や何を囁く過客かな
- 秋風や辻々に立つ何者か
- 秋風や辻々沁みるものありぬ
- 秋茜風避けて稲穂すれすれに
- 秋風の歌う野山の巡りかな
- 逝く人や残暑の風のふと涼し
- 藷蒸して二三個食うや秋の風
- 野分涼し残暑煌々玉簾
- 土手騒ぐ野分涼しき彼岸花
- 稲穂渡る風紋鳴りて彼岸花
- 稲刈りて空を埋めたる稲架(とうか)かな
- 刈り株や懸稲(かけいね)めぐる彼岸花
- 葛(くず)咲きて草蹂躙す蔓の勢
- わが温み求める如し秋茜
- 彼岸花音乾きおり風車
- 燎原の火と彼岸花風飄々
- 彼岸花此岸を騒ぐ稲嫋々
- 涼風や虫の声きく彼岸花
- 懸稲(かけいね)や影黒々と空を撃つ
- 針葉を残して稲穂沈みけり
- 星と降る蕪れ田に虫のなく音かな
- 稲穂揺れて野分涼しきさざれ音
- 稲穂揺れて野分の波は寄せ返す
- 鐘一つ稲穂騒がす野分かな
- たわむ稲穂降りんとて崩る雀共
- 秋の陽の透明直射野分かな
- 煌々と路地の秋陽に人もあらず
- 稲穂平野列車渡りし夕べかな
- 稲穂尽くし夕凪の辻静かなる
- 萌黄色と変わりし青田彼岸花
- 黒揚羽トンネル半ばに死せり
- 海亀来るや秋澄みし頃浜掃除
- 秋分や小富士仰ぎて太公望
- 葛咲けど海亀は来ず瀬戸白砂
- 白砂青松死滅す瀬戸や葛の花
- 萌黄の田風渡る音彼岸花
- 涼風の日々増す街や稲熟れる
- 煩悩もとまどうほどに彼岸花
- 吐息つき彼岸花見る此岸かな
- まだ此岸赤く燃えたり彼岸花
- われ見るわれ萌黄稲穂の色と化す
- 葛咲きて田は萌黄色冴えるかな
- 温暖や葛の花見る雲の峰
- 鬼潜む車列の窓や葛の花
- 白を黒と天高き日に井の蛙
- 残暑厳しサツマイモ掘る蔓の畑
- 萌黄絨毯に変わりし青田チチロ鳴く
- 松枯れや野分の門の落ち葉かな
- 松枯れや路地群れ飛べる秋茜
- 運動会飛行機雲一筋白き
- 稲熟れて萌黄絨毯敷く田かな
- 稲熟れて萌黄に染まる平野かな
- 摘果せしみかん腐敗す葛の花
- 露の玉溜めて稲穂の黄金波
- (以上2009年9月28日)
- 2009/2/21~2009/5/20
- 見れど飽かぬ山春霞影絵かな
- 春霞山を描きて水墨画
- 春耕起虫取る鳥やわれ忘る
- 畏れつつ山を隠して春霞
- 見れど飽かぬ小富士の春と共に居る
- 風に乗る薄日の山の芽吹きかな
- 菜の花や猫を埋みて昼寝する
- 桟橋に春の旅人伊予小富士
- 菜の花に風割る雲間日射しかな
- 昼の月逍遥するや一万歩
- 水墨や重畳の山春霞
- 晴れぎわの早春青き芽立ちかな
- 凍て返るバラツキ高き日和変
- あくび噛み土手行く春の日和かな
- 誘いて庭畑打たす春日和
- 春の音届けて走る列車かな
- 春雲の濃淡変化見るも飽かず
- 古き門春雲変わる面白さ
- 石割て菜の花一本のど根性
- 雲晴れてさ緑の山草新た
- ひきずって泥縄政治春の憂い
- 凍て返る陽は白々と衣干す
- 薄日射す霞を洩れて列車行く
- 年古りて思いで遠き春の門
- 菜の花や自転車軽き娘行く
- 傘持てど光返りて霞かな
- 菜の花や池に映りて二条かな
- 眼白乗りて白梅の花揺れ具合
- こだまする列車轟音山霞
- 菜の花や一人離れて線路脇
- 妻に似た帽子かぶりて春の橋
- 春浅し子虫飛ぶ土手歩くかな
- 椿散って祠の前の花いくつ
- 菜の花やせせらぎ送る水辺かな
- 橋に立てば黄に菜の花の護岸守
- 一台の電車疾駆す春平野
- 春霞織り成す山の幾重かな
- 亀泳ぐ春風に首吹かれつつ
- 春ひたひた布団一枚取る夜かな
- 春の修羅後悔の渦臓腑かな
- 土手道や春陽に訪うは風ばかり
- 春日和人なき道の影踊る
- 堰流る無限明滅春の精
- 待つ人も無くて長閑や春日和
- パンジー冴えてその影も冴ゆ春日和
- 枇杷の実の一寸ほどに春の脚
- 寒桜巷に細き路地の奥
- 青き星明滅するや犬ふぐり
- 鷺立ちて鯉あわて逃ぐ春の水
- 興居島や黄の無限光石蕗(つわ)の花
- 春の音川の流れにある如し
- 雨上がる霞更紗の七変化
- カンカンと列車警報春野かな
- 柑橘の下萌え青き陽射しかな
- 稲株の白骨さらす芽立ちかな
- 春来るや弁証法の轍踏みて
- 犬ふぐり小さき宇宙の星なるか
- かき曇る天に菜の花の便りかな
- 菜の花の根に居つきたる眠り猫
- 雨上がる草の息吹や濁川
- 佐保姫や気団を敷きて山霞
- 常世とや菜の花香る橋の上
- 春光や真白にさらす臓腑かな
- 啓蟄や虫籠もらしむ冷雨かな
- 春霞俘囚の街や人と家
- 梅咲きぬシャッター下りる霞町
- 春霞吸いて咳する障りかな
- 枇杷の実の一寸青き霞かな
- すねほどの深さの春を歩くかな
- 空豆やぺんぺん草に巻かれおり
- 紅白の梅春日のみがらんどう
- ミモザ咲く霞に淡き黄を染めて
- 春は花海棠庭に紅させる
- 春雨や山蒼茫の眠りかな
- 胎動す春静かなる青き雨
- 黄水仙庭に太陽もう一つ
- 小虫飛ぶ粉塵吸うな土手の春
- 春光や平野の真中列車行く
- 鉄路脇ひそと花活く石仏
- 冬の気を入れ替える日や籠もり人
- 着水や鴨の航跡光るかな
- 春たちぬ田の賑わいや草祭り
- 動かずも明滅するや犬ふぐり
- 日一日春寄せ来る布団かな
- 逃れえぬ罪障重き春の夢
- 配信の臓腑に苦き春の水
- あな嬉し春雨の街癒えし足
- 春嵐罪障重きまま生きる
- 春雲やややこごえ居るひだの相
- 春天や見ても飽かざる雲の層
- 春雲や黒き船底並べおり
- 白木蓮雲抜く白さ七部咲き
- 長き日の辛き覚醒読書かな
- ディスカバリ春を残せる若田さん
- 家建つや景気狭間に落ちし春
- 菜の花や水辺の草魚見ておりぬ
- 犬ふぐり星拾うごと土手の道
- 山七重春の朧の墨絵かな
- 日向ぼこ潜るもありて鴨の雛
- 菜の花や轟音列車平野行く
- 犬ふぐり青き明滅数知れず
- 売れぬままどぶ川泳ぐ春の鯉
- 春の修羅臓腑に黒き疼きかな
- 見ても飽かぬ犬ふぐり見に迂路を行く
- 春光に籠もり人(ど)うかと野に出る
- みかん香るジュース工場春暮れる
- 沈丁花屋敷乗り出す香かな
- 空覆う白木蓮に入日かな
- 花一斉昨夜集いし暖気共
- 犬ふぐりまた屈み見ん土手の道
- 春雲や水を奪いて乾き風
- 菜の花や土手で見送るわが歩み
- 旗鳴りて平野に春の風乾く
- チリカラと春風遊ぶ落ち葉かな
- 華添えて白木蓮の送り人
- ガザニアに春光降りて仏かな
- 六十余度目回り舞台を始む春
- 春光や虚子俳句論読破せし
- 春光や影さえし庭空虚かな
- 連翹の黄の仏光や仏の座
- 菜の花や川の流れにかしずかれ
- 惜しみなく古きベンチの桜かな
- からすえんどう幼き記憶たどる花
- 鉄路沿い仏の座咲く紫雲かな
- 遠まわる桜咲く日のとっておき
- くしゃみして桜の陰を出でしかな
- 鶯の初音を聞くや風光る
- 鶯の鳴いて狭間の深さかな
- 鶯の初音や山の笑い初め
- 保具橋や亀甲羅干す春日和
- 春光を銜(くわ)えて亀の首伸びぬ
- 逃げこみし穴のぞきたき春の水
- 桜咲く古いベンチで空となる
- 桜花洩るる青空果てぬ青
- また寄るや桜ふわりと敷く寺に
- 青踏むや土筆誘う迷路かな
- 青踏むや七草の花大騒ぎ
- 木の下のゲートボールや花忘れ
- 見れど飽かぬ桜の空の青さかな
- 空嫋々桜花芽やほの赤き
- はこべらの座すには高し仏の座
- 花待てと押し返しに来凍ての使者
- 鶯の鳴くや安堵ののど仏
- 堀の内桜に酔いし電車かな
- 古塀の紅梅赤き歴史かな
- 蓮華咲く三味線草のバチさばき
- 松の花雲落とさんと立ち尽くす
- たわむれにぺんぺん草で三味弾きぬ
- イタドリの酸味懐かし鴨の池
- 大根の花見ておりぬ犬ふぐり
- 空豆の黒目多きに桜咲く
- 老い止める句作せんとや松の花
- 蓬莱の緑の使者や草蓬
- 花冷えや春来る道は曲がりつつ
- 板塀の陽炎温き半身かな
- 鶯の風打ち消せる底力
- 強風に鴉吐き出す春の草
- 桜蕾咲き立つ希望ほの赤き
- 大根を花と咲かせし価格かな
- 青空を焦がして桜蕾むかな
- 伊予小富士汽船を供に霞かな
- 枝条々桜蕾の昼餉かな
- 草刈りて見上げる空の桜かな
- 枝条々桜蕾みて高戸山
- 興居島や瀬戸を枕に桜花
- われら友桜の精に当てられし
- 鶯や山桜咲く深山かな
- 西強し空豆の花目を閉じよ
- 木の下に別離新生桜かな
- もんしろや二羽連れ添いて竹の道
- 桜咲く見も飽かぬ山見ておりぬ
- 甲羅干す亀も桜を見ておりぬ
- 空豆の花の黒目や恐ろしき
- 鶯の鳴く風の色ありやなし
- もんしろのもつれもつれて長き土手
- 大根の花悪びれず蕪(あ)れ畑
- 紫のがく萼(がく)に真白の桜かな
- 桜香る距離3尺の風ふけり
- 草むらやからすえんどう咲き初めし
- 蓮華咲く傍らの星犬ふぐり
- 鶯の鳴くやひとひら山桜
- 山桜甍(いらか)かざりて古代相
- 野の草と遊びておりぬ春の風
- 鶯の鳴くや蕪(あ)れ地の草舞台
- 鶯の鳴きてわが背の後ろ髪
- 旅立ちや桜白々胸騒ぎ
- イタドリの藪飛び込むや蛇忘れ
- イタドリや友と青踏む山路かな
- 花遍路鈴むなしかり道しるべ
- 春雨や釣待つ人を忘れしか
- 春雨やかもめ重たく濡れかかる
- 春雨や波止に鴉の黒きかな
- 魚釣れずただ春の潮満ち来る
- 春霞山笑う歯を洩らしつつ
- 古甍桜咲きたち新居かな
- 葉桜や川遊びする子等ありて
- 春光の溢れる道の空虚かな
- きんぽうげ蕪れ地を占める二三割
- 青踏むも後幾度の旅心
- 空豆をとる麦藁帽明(あか)きかな
- 土手道や菜の花灯り鯉上る
- 桜咲くやそこに何者か潜み居る
- 花飾る土手になにやら住みつきし
- 春は花野を踏む胸の騒ぎかな
- 春は花独裁の鼻領土越ゆ
- 春光や悟り開けよ庭の空
- 闇かける夢重かりし漱石忌
- 札捨てて大根の花咲かせたり
- 天地人さらいて桜咲いており
- タンポポや桜と土手を分けており
- 桜花土手道ひそと小人かな
- 葉桜や残りし花の肩身かな
- 野の花や浮沈泡沫(うたかた)一万歩
- 桜散る車音なし昼餉かな
- アスファルト染めて桜の分かれかな
- 野の花の乱れ咲きたる蕪れ田かな
- 鶯や池抱く谷の谺(こだま)かな
- 野の花を蝶々渡る日永かな
- 蜜蜂の顫音かすか桜散る
- 朧月花影匂う路地の奥
- 霞洩る笑いし山よ人忙し
- 影さやか葉桜散るに蝶混ざる
- 草魚ゆたり葉桜舞いし光かな
- 蝶一羽混ざりて降りぬ散る桜
- 春風やうらうらとして己あり
- 土手を行くわれに供する蝶一羽
- 甲羅干す亀飛び込むや春の風
- 桜吹雪幼子無心遊び中
- 永き日や電話のベルの答え無し
- カラス豌豆花一畝の蕪れ地かな
- 補陀落に来たりや鉄路の山笑う
- 鶯や古節まわして上機嫌
- 葱坊主胞子に蝶の崩れつつ
- 花貝母(ばいも)照らす古塀静かなる
- 葉桜や蜜蜂顫音経を読む
- 秘め事に独り弁当桜散る
- 一日を魚釣る長き堤かな
- 葉桜や土手に開ける夏舞台
- 焼き捨てて土手黒々し夏舞台
- 鶯の鳴きて吹かすや夏の風
- タンポポや堰止めの水攻め来る
- 取り落とす手の書蛙の目借り時
- チューリップ揺れて山際雲の峰
- タンポポの土手暖かき春の水
- 暑き陽や桜錦の上り龍
- 静寂に絡め捕られし島の春
- 鶯の鳴くや鯵釣る瀬戸の春
- ゆく春や蓬さやぎて笑うかな
- 人無くて花見送れる贅ありぬ
- タンポポや葉桜並木土温し
- 小でまりの蕾青々猫の塀
- 鶏鳴きて空豆の莢畝満たす
- タンポポや数増す土手の甲羅干し
- 葉桜や一筋白き道乾く
- ゆく春や道尋ねたる若き人
- ゆく春や廃屋静かに暮れゆきぬ
- 空豆の莢列を成す畝間かな
- 引力に勝つやわが足菜の花路
- 鶯の鳴き声は即浄土かな
- 万緑の山盛り上がる力かな
- 背に汗影黒々し山笑う
- 上向きて空豆の畝莢並ぶ
- 蓮華村飛行機雲の白さかな
- イタドリの薹(とう)立ちており鴨の池
- はみ出して竹の子遊ぶ五六本
- トラクター日向臭する新土かな
- 変わらざる世の生き様や山笑う
- 万緑やどぶ川映す緑かな
- ゆく春や釣見る人の風話
- 昨日あらず今日咲き初めし躑躅かな
- 万緑のたそがれており波止の凪
- 木を借りて藤の花房滝落し
- あやめ立つ美人は遠き昔かな
- 南無大師歩けばあやめ立ちており
- 橘の香匂う道や島遍路
- 楠守る中厳前神社春嵐
- 興居島や橘香る昼餉かな
- 興居島や藤の花房雨のごと
- 瀬戸に落つ藤の花房匂いつつ
- 牡丹咲いて甘酒うましお接待
- 小富士から牡丹散らしの風突如
- お接待の悟りは瞬時花牡丹
- 桐の花紫にじむ雲間かな
- 伊予小富士浜大根の花の裾
- 興居島や浜大根の花堤
- 砂連綿浜大根の花灯り
- 貝寄風(かいよせ)や花をゆすりて霊前寺
- 寒きようで暑き弥生の布団かな
- 蓮華草吹く風見つつ地蔵かな
- 山笑う稜線に満つ力かな
- 石段の果てて大輪牡丹かな
- 曙の頃目洗う癖の読書かな
- 山笑う稜線の声若々し
- 牡丹咲いて腰掛ける人横話
- 橘の香る磯辺の昼餉かな
- 牡丹咲くや人の腰浮く軽さかな
- 空豆の莢万歳の春の空
- 万緑の池慰める風の紋
- タンポポや群れて親しくなるばかり
- タンポポや絮(わた)飛ばす茎脚線美
- 小でまりの眼に染む軒端つばくらめ
- 花躑躅時を止めたき白さかな
- 蝦蟇鳴くや鶯の空薄曇る
- 葱坊主胞を破りて髪茫茫
- 躑躅咲く数も哀れな美なるかな
- 躑躅散ってアスファルト路に花灯り
- 惜春や草取る友に躑躅かな
- 授業引け亀鳴くグランドの躑躅かな
- 花手まり風も揺すらずおかりょうか
- 紫のあやめを前に労働者
- 松の花盲導犬の細き綱
- 一筋の白砂の道や草舞台
- 白砂鳴りて亀飛び込みぬ春日和
- 橘の香れる道や影やわら
- 一群の鳩指しており万緑へ
- 葉桜の実に染まるなり風の色
- さくさくと田を打つ音の入日かな
- 山笑う波止で波音聞いている
- 山笑う世間話の波枕
- タンポポの絮(わた)幾百と揺れている
- 花陰にわれも寄りたき5月かな
- 修羅相も崩れてゆくや花茨
- 初トンボ風によろけて草離る
- タンポポの絮坊(わたぼう)幾百風の舞
- この5月何処指してゆく宇宙塵
- 蝦蟇唸る空即是色綿胞子
- 花茨憂いに風は横なぐる
- 腕めくる五月若葉の土手の風
- 風渡る山万緑の武士の顔
- 新緑の重畳に乗る天守閣
- 目は楽し新緑空間に天守閣
- 新緑の巨人横たう天守閣
- 目の限り新緑の風吹いている
- 緑陰の影深々と美術館
- 新緑に良寛遺墨浮かべたし
- 満水の溜池はあり花茨
- 野焼跡笹の新芽に青き風
- 胸張るや五月緑の風さやぐ
- 風さやぐ五月緑の真砂道
- 花茨その花びらの菩薩かな
- 末世に白薔薇咲くや真白にぞ
- 初夏や耳朶にかすかな虫の声
- 蝦蟇鳴きて誰か叫びぬ真昼時
- 花茨コガネグモの巣張りてあり
- 蝦蟇鳴きて所在もなきや陽は照らす
- イタドリの薹立つ風の白さかな
- 陽を貯めて桜並木の青さかな
- 野燕麦実の香りする晴れた道
- 初夏や突如霧巻く港町
- 初夏や霧急襲す惑い船
- 夏日絶ち間に降る雨の音懐かし
- マツバ菊陽に真向いて真紅かな
- 笹の葉の新芽青々あげひばり
- 変わらざる5月の天地死は訪いぬ
- タンポポの胞子幾百揺れる土手
- 栴檀の花咲く空や背(せな)の汗
- 空豆の殻焼く畑の活気かな
- 見ても飽かぬ雲たなびきて山若葉
- 薫風や花豌豆の五六色
- 野燕麦さやと音立つ路傍かな
- トラクターいで立ち勇む平野かな
- 桜並木青きざわめきつばくらめ
- 2009/1/3~2009/2/21
-
みかん熟れて憂いもありぬ老いの里
-
元旦や墓参に野菊ふと添える
-
初凪や集落埋(うず)む段畑
-
段畑背宇和海前に初日かな
-
老いの里正月墓参人も無し
-
小寒や青空にらむ雲幾多
-
小寒やマスクする人増える街
-
元旦や千年の村涅槃かな
-
山茶花の数病みし人慰める
-
病院の庭に山茶花数数多
-
山茶花や溢れる患者の前に咲く
-
世界ニュース見つつ山茶花庭に咲く
-
背(せな)に汗薄雲の街枇杷香る
-
小寒や堰に陣取る鴉かな
-
散り敷きし山茶花赤きアスファルト
-
黒雲に白煙白き冬嵐
-
冬嵐小富士凛々しき雲の間に
-
取り残すみかんを裾に伊予小富士
-
初句会窓に白波冬嵐
-
初景色小富士は友の如くあり
-
青黒き雪雲の下列車行く
-
風花やアスファルト路に消えてゆく
-
枇杷香る蒼穹の果て極まらず
-
椅子降りて畳に座せり冬嵐
-
孫の声木枯らし弾く高さかな
-
世界危機チェンジのオバマ冬の星
-
風花や冠雪の峰現れて
-
ひたすらに歩けば寒も友の如
-
雪雲や青黒き指広げたる
-
雪雲の低く垂る街列車行く
-
着水や鴨の航跡一筋に
-
網の目の雪雲漏れる光幾条
-
雪雲を割って日柱平野かな
-
雪雲の空半ば占む日差しかな
-
寒風や竹笹攻める鉛玉
-
雪雲や街飲み込んで鉛色
-
白鷺の白屋根寒き五六匹
-
雪雲や蒼鉛高く山呑みぬ
-
辺り昏み鳥雲の如にわか雪
-
初場所や零下の富士の茜かな
-
冬の雨眠れぬ夜の地を叩く
-
武力楯の義は不義と化す冬の月
-
みかん熟れて濃緑の葉に赤き星
-
医の不信風邪こじらせし不覚かな
-
寒空や投句返る間楽しみつ
-
風邪に伏し窓暮れゆきぬ空のまま
-
目覚めたる寒波の闇に潜みおる
-
屋根屋根の雪雲近き鉛色
-
武蔵持つ心眼真似し冬の空
-
寒波去る新た日差しに髭をそる
-
飛行機雲の三筋掻きたる寒入日
-
蛮勇は飛び込む力冬の危機
-
寒日和影清かなる踊りする
-
髪赤く乱せし女水仙花
-
病院へ自転車走る冬の靄
-
銀波まぶし小鴨の遊ぶシルエット
-
居座りて黒雲覆う冬の空
-
鬼打ちて春光白き宵の空
-
節分や霞の立てる平野行く
-
霞曳く平野は重き鉛色
-
物皆の輪郭溶くや春霞
-
田に群れるカラスも春を啄ばむか
-
鮮やかな黄に菜の花は孤独かな
-
鶺鴒や夫婦尾振りて早駆ける
-
菜の花や畦に一足早き春
-
田の神の怒り哀れに春のごみ
-
春暖の雨静かなる目覚めかな
-
土手騒ぐ冬の嵐を漕いで行く
-
真向いの雲吹き降ろす冬嵐
-
冬嵐陽照らす山がわれを呼ぶ
-
通り過ぐ心慰む水仙花
-
冬嵐突如霞に日差しかな
-
寒の関越えたか背(せな)の暖かさ
-
志津川の土手に色濃き春日かな
-
雪雲やうたかたの風吹いている
-
手の甲に暖かき陽平野行く
-
豌豆の蔓這い上がる日差しかな
-
笹揺れる間に眼白すべる早春
-
竹笹を吹き抜く風に春光る
-
春浅し水音和み草魚かな
-
早春や人夫一服の笑い声
-
春浅し黄と白にカタバミ咲ける
-
早春や幼子抱きて庭の梅
-
紫にすみれ鮮烈庭の鉢
-
早春の光の乱舞車列絶えず
-
早春の陽に老いの顔笑み溢る
-
早春や麦藁帽の甦る
-
春息吹くあっという間の野山かな
-
早春や鷺不動尊護岸する
-
猫鳴いて闇路の恋のすれ違い
-
雪雲割れ光線条並び立つ
-
雪雲割れ銀の微塵の筋光る
-
陽の濃さや鉢に紫すみれ咲く
-
上着取る翁の傍の鉢すみれ
-
春は花値千金遠廻り
-
深更や猫の恋熱割り込みぬ
-
春立ちて路傍の稲荷祭祀かな
-
春日和引き寄せられし日向かな
-
窓越しに琥珀の春陽溢れくる
-
衣干す早春の街心新た
-
早春の街のうつろい道普請
-
足伝う陽の温もりや芽立ちかな
-
共同体崩れし祭祀春稲荷
-
定年後守銭奴の如春3度
-
早春の白鷺まぶし風冴える
-
春光の窓寄せ来り畑は明かし
-
雑事措いて春陽の街歩くかな
-
原罪の生忘れしむ春日和
-
布団打つ音暖かき梅の花
-
犬連れし人の春乞う足さばき
-
土手笹の鳥入れ替わる春の水
-
空キャリー照らす春陽の蜜柑園
-
煙立つ春の土塊の荒々し
-
春霞山蒼鉛の影絵かな
-
屋根に鷺親子連れ見る春の土手
-
凡句重ね春また重ぬ屋の屋
-
早春の草取り活字拾うごと
-
紅白の梅咲く庭に春陽のみ
-
枇杷園の下草潜る春陽かな
-
春陽の独り占めする梅の庭
-
深更の目覚め悲しき老いの春
-
遠山を隠し沁みいる 春霞
-
春霞沁み来る街を列車行く
-
春霞影死に絶えしアスファルト
-
枇杷の実の一寸ほどに褐毛かな
-
春霞山這い降りて里に入る
-
早春や不動の鷺の狙いどこ
-
春の野に善悪の規矩を知らず迷う
-
蒼穹の伊予柑赤き瀬戸の春
-
伊予柑の荷は傾斜地を瀬戸に落つ
-
鳥啄の春の収穫伊予みかん
-
窓の梅万蕾いまだ夢のうち
-
鳥と競い伊予柑摘むや春の瀬戸
-
早春の伊予柑食うや眼白共
-
モノレール伊予柑瀬戸へ逆落とし
-
春霞たゆたう街や遍路標
-
臓腑より春の光芒沁みてくる
-
薄衣かけて山々春の峰
-
春霞喰らいて歩く鉛色
-
春霞被りて我と向こう山
-
歩も緩む陽に薄衣春霞
-
春霞池透明に蓋したる
-
原罪の性(さが)なだめたる春霞
-
蒼鉛の地平の向こう春霞
-
春霞田と家にふわり重なりぬ
-
向こう山陽に薄めたる春霞
-
春霞幻視の街に衣替ゆ
-
夢幻かな昨日の街に春霞
-
街にふわり春霞乗せ夢幻かな
-
池の面に鴨背伸びする春日和
-
蒼茫と不安を撒きし春霞
-
春の土手除草の土の香りする
-
溶媒は春霞なり山と家
-
霞立ち紅梅溶かす平野かな
-
鉛色物皆溶かす春霞
-
菜の花や邪気満ちている笑い声
-
鉄路脇沈みて咲ける水仙花
-
春霞山蒼鉛の影絵かな
-
建国や日本の思想つながらず
-
白と黒鯉上りゆく春の川
-
春一番太平洋の雲来る
-
門に咲くすみれお嬢のしとやかさ
-
春一番ぬるき気層に出会いたり
-
春雨やカタストロフィーの音も無く
-
恐慌下バレンタインデーの闇深く
-
菜の花の黄に送られて川歌う
-
春霞着て山と我向かうかな
-
踏み切りの警報鳴るや春霞
-
白鷺の眩しき5匹春の川
-
拡大す温暖の「変」管主の書
-
白梅や笑みほころびし家人かな
-
温暖の良き日たるべし洗車する
-
花ならばわが心春土手のごみ
-
橋ありて菜の花川を挟みたる
-
雲閉ざす人無き春の校舎かな
-
額大畑打つ春の老夫婦
-
凍て返る蒼茫の空影冴えし
-
菜の花や両岸埋めし橋に立つ
-
伊予柑や箱に盛りし実売るも惜し
-
凍て返る陽は白々と透き通る
-
凍て返る緑の眼白笹潜る
-
影踊る冴やけき凍ての返りかな
-
無慈悲なるドンカムバック凍て返る
-
幻影の霞掃き捨て凍て返る
-
凍て返る霞掃き捨て山と家
-
ジュース工場の香盛りて凍て返る
-
凍て返る景気返らず蟻地獄
-
春の修羅賢治の詩魂訪ねゆく
-
見れど飽かぬ山蒼鉛の春霞
- 2008/12/5~2009/1/3
-
寒波低く唸りをあげて闇を行く
-
風引くや炬燵うずみて窓の空
-
寒波来る夜更けにインク補充する
-
千金の小春を浴びに家を出る
-
影日向区切り冴え々小春かな
-
珍しや鶏鳴く土手の小春かな
-
小春日の日差しは冴えて山紅葉
-
小春日の日差し千金土手の人
-
時雨るやまなびを遊ぶ机かな
-
小春日や日向ぼこしに土手に行く
-
陽はあるか覚めし魂問う冬の朝
-
去りがたき布団の温み抱いている
-
胃を空にせし喜びの冬の朝
-
沈黙の安き心で冬の朝
-
なんとなく師走の街の親子かな
-
定年の土手散歩する師走かな
-
定年後3度の師走土手を行く
-
小春日や城を隠してもやの色
-
温暖の川落ち葉敷く流れかな
-
温暖の冬雲送る風鈍き
-
冬嵐呼ぶ温暖の雲閉ざす
-
遍路道尋ねる人や冬の雲
-
鴨の池道沿い行けば枇杷の花
-
色づきしレモン哀歌の風が吹く
-
小学生グランド落ち葉声高く
-
鶺鴒のつがい尾を振り畝渡る
-
銀杏散って道染められし葬儀場
-
伊予柑摘む媼を包む小春かな
-
落ち葉少々時々刻々に山紅葉
-
霧立ちて小富士の小春暖かき
-
鶺鴒のつがい遊べる漁港かな
-
鳶飛ぶ小春の空やひじき干す
-
みかん熟れ緑の海に星出る
-
母子茹でるひじき干す浜小春かな
-
段畑や小春に老いの険し道
-
世界狭し同時不況の冬津波
-
鶺鴒のつがい飛ぶ畝雲閉ざす
-
温暖の雲充つ師走ごみの川
-
犬の糞冬も土手道はばむかな
-
わしゃしらん人見ぬ師走ごみ捨てる
-
地球危機忘れさすよな小春かな
-
興居島や小春の渚ひじき干す
-
社経て田残る街の小春かな
-
陰地より小春の照らす山紅葉
-
霧立ちぬ昨夜の雨の暖かさ
-
落ち葉炊く香り懐かし煙かな
-
我に添う影冴えざえと師走かな
-
自転車の孫ばぶばぶと小春かな
-
枯れ薄影冴えざえと小春かな
-
雲4分残せる空の小春かな
-
ソラマメのマルチまぶしき小春かな
-
尾根に沿う両手に瀬戸の小春かな
-
鷺立ちて不動の川に小春かな
-
路肩埋む落ち葉を照らす日差しかな
-
小春日や鏡の池に鴨1羽
-
白鷺の忍び足する洲の小春
-
悟りとやあるがままなる小春かな
-
稜線に家並み白々山紅葉
-
志津川の堰穏やかに鴨遊ぶ
-
白鷺や忍びて立てる冬の池
-
みかん香るジュース工場師走かな
-
川染めて落ち葉敷きたる流れかな
-
年の瀬や派遣切りする無慈悲かな
-
1万歩年の瀬歩く糧求め
-
年の瀬や反貧困の旗上がる
-
山紅葉落ち葉と化して山細る
-
枇杷の花香る家あり群れすずめ
-
時雨れるか陽光閉ざす雲早し
-
どぶ川に鯉現れて枇杷の花
-
枯れ草や輪廻をたどる仮姿
-
影と陽の寒暖歩く師走かな
-
紅葉から落葉に変わり山細る
-
小春日や草魚ゆたりとごみの川
-
大根一本自転車に乗せ小春行く
-
霧晴れて稜線冴える小春かな
-
大不況忘れて浴びる小春かな
-
機影白く青空はるか小春かな
-
鴨池の対岸の櫨(はぜ)真紅なる
-
みかん積めば軽トラゆかし走りかな
-
業負いて堤を歩く小春かな
-
甲羅干す亀二三匹小春かな
-
落ち葉積みお地蔵さんの胸パッチ
-
小春日や汽船を供に小富士山
-
みかんたわわ星出るごとき赤さかな
-
ため池や赤きみかんの水鏡
-
興居島や枇杷香る空方十間
-
友くれし伊予柑背負う心地よさ
-
伊予柑や青空の下とり給え
-
そらまめや案山子一人で冬の風
-
木枯らしや椿の白をうち重ね
-
木枯らしやめまい感じて池曲がる
-
山茶花や満杯なれど抛りがたし
-
白鷺や足細々と冬の川
-
賀状投ず街新たなる気配立つ
-
陰寒く雲紫に峰冴える
-
2008年の年の瀬騒ぐ枯れ薄
-
年詰まり笹揺らす風嘆くごと
-
雲漏れる光幾条年詰まる
-
休日に大根取るや車付け
-
褐色の深まりし山街囲む
-
漂白に求める一句年暮れる
-
陽はなくて野面延々土塊かな
-
鶺鴒の仲睦まじさ川荒れて
-
散り敷きて落ち葉にぎわう景色かな
-
寒気澄み陽の色白く山近し
-
白光や冷気澄みおり山近し
-
山や家気は澄みに澄み秀でたる
-
寒気澄み山々近き師走かな
-
冷気冴え遠山近き師走かな
-
街路樹の実は真紅なり年詰まる
-
幾度見し小春の小富士今日もあり
-
新しき年迎えんと小富士晴る
-
一衣帯水小富士は凛々し年の瀬に
-
孫帰るみかん収穫小春かな
-
伊予柑の荷重き贅(ぜい)を味わいぬ
-
冬嵐我眠らせぬ物思い
-
鳶舞い果てぬ蒼穹みかんとり
-
伊予柑園にぎわう響き帰郷者
-
伊予柑や他人酸いといい我美味し
-
30度坂の伊予柑取る重力
-
瀬戸に落ちる伊予柑園は熟度よし
-
孫帰る伊予柑園は賑わえり
-
段畑の伊予柑チキンに並べたる
-
寒波緩む空気にごりて山遠し
-
鴨鳴くや高く響きぬ曇り池
-
伊予柑取る実の重力は瀬戸に落つ
-
年の瀬や物溺れする不様かな
-
川埋めるごみ多きまま年暮れる
-
歳末や人性(さが)暗きごみの川
-
身勝手を川に捨てたる年の暮れ
-
寒波来る荒れる世相の暴走車
-
鴨の子等潜り浮きつつ雲の池
-
雪雲の崩れて縁の光まぶし
-
時雨れるや耕起の土に鴉かな
-
うす青く立つ雪雲が街を飲む
-
デコポンの袋掛けたる堤かな
-
時雨れるや濡れるまつげに鳥早し
-
うずみ火や窓訪う風の音たまに
-
大晦日明日なき国かうそ寒き
-
歳末や人よろめいて暴走車
-
歳末や速さを競うめまいかな
-
歳末やつつしみ失せる競争下
-
歳末や新幹線早し無情なる
-
雪雲やうす青くして山浸す
-
電線に鴉の一羽時雨たる
-
雪雲や天蓋埋めて街囲う
-
雪となり筋引く雲や山隠す
-
元日やわら束3つ時雨かな
-
水仙の凛と咲きたる寒波かな
-
鶺鴒の波描く飛翔寒波雲
-
正月の畑にじいちゃん孫来る
-
今日ぞ良き陽はまた戻る年賀かな
-
寒波去り陽の明るさや影きりり
-
福袋積みし自転車陽は明かし
-
物捨てる川年頭の怒りかな
-
大戦に散りし礎に老い重ぬ
-
年頭の祝いも失せる川のごみ
-
庭に立ち新春の陽を浴びている
-
チチと鳴いて鶺鴒飛べる影瞬時
-
山飾る年頭の雲応援歌
-
大自然手習い六十余度の春
-
ごみの川泣いて目出度き春もなし
- 2008/11/25~2008/12/5
-
蔭地寒し日向恋しき冬の街
-
杖ついて冬の海辺に立つ老婆
-
実の赤さ冬の予兆と引き締まる
-
人待つ間高浜港の紅葉かな
-
老人の小舟にカラス訪う小春
-
枇杷の花隣のみかん熟れている
-
ジャンバーを脱いで小春の瀬戸渡る
-
小春日の磯辺に遠き昔かな
-
今日一日終える喜び小春かな
-
干潮になりても小春小富士山
-
友とあり潮引く磯の小春かな
-
風邪抜けし朝は日差しも明るかな
-
冬晴れの影さやかなる切り絵かな
-
冬晴れや洲に白鷺の2羽立てリ
-
家々の影絵の世界冬日差し
-
うたた寝て手の本落ちる小春かな
-
コスモスの残花少なし種となる
-
風無くも銀杏ハラハラ土手染める
-
隠れつつ花カタバミは土手に咲く
-
花は種桜紅葉の美しさ
-
田の籾も絶えてどこ行く群れ雀
-
みかん香るジュース工場裏通り
-
雑草の枯れゆく土手に銀杏散る
-
もんしろの飛べる小春や靄かかる
-
トラクタの轍の土や冬日差し
-
山茶花の花過多も良し冬の街
-
背(せな)の汗小春狂いて温暖化
-
天守閣山紅葉なり冬の雲
-
陽だまりも少なき街の師走かな
-
銀杏散って戻らぬ冬の日数かな
-
平野吹く木枯らし強き師走かな
-
山の端に雪雲凝りて城襲う
-
山紅葉美を較べつつ畦を行く
-
昔美田ブタ草騒ぐ師走かな
-
銀杏残す葉の少なさや山紅葉
-
山茶花の吹き寄せられし軒端かな
-
ジュース工場盛る煙の師走かな
- 2008/11/14~2008/11/25
-
あてどなき池に浮かびし冬の雲
-
驕る草久しからずや薄立つ
-
草紅葉枯れゆく冬の道広く
-
落ち葉踏むベンチには今人もなし
-
銀波まぶし小鴨の遊ぶシルエット
-
薄立ち土手草刈れて路一本
-
渚にて懐古の心うずく秋
-
ちぎれ飛ぶ煙の空や冬の雲
-
雪雲や陽に表白裏黒く
-
寒波来るのたうつ薄群れ雀
-
雪雲や今日は土手行く旅の人
-
われもまた雪雲のごと土手過ぎる
-
陽は射しつ寒風吹くや土手薄
-
こちら照らし向こうは暗し雪雲で
-
雪雲の間を照らす陽に城浮かぶ
-
静かなる寒波の夜の早寝かな
-
冬晴れにカレイ干すかなおばあちゃん
-
善閉ざす日々の事件や冬の雲
-
善悪の岐路見え難し冬の街
-
大自然荒れて人心冬の雨
-
寒波一転小春に戻る夕べかな
-
寒波転じサルビアの花小春かな
-
寒波緩む土手のゆうべの穏やかさ
-
雪雲の裏神々しき陽の光
-
入り陽照らす雪雲の裏縁(ふち)染めて
-
寒波緩み茜の雲の東かな
-
小虫飛ぶ土手の小春に歩緩む
-
小春日や雲平かに土手うらら
-
捨て猫や小春の陽射しうたた寝る
-
ソラマメや列整然とマルチ畝
-
寒波緩み蚊の鳴く寝ざめ冬至かな
-
錦秋といえねど紅葉わが郷土
-
小富士山裏も連れ立つ紅葉かな
-
ひともとの百合咲いており冬の門
-
釣島やわれら迎える小春かな
-
釣島や小春の瀬戸に船交わす
-
釣島や桟橋小春老婆行く
-
かまきりの日向ぼこする小春かな
-
馬の石小富士眺めて瀬戸小春
-
この坂を越える小春の日和かな
-
怱那七島小春の瀬戸に影遥か
-
小春日も灯台守る瀬戸航路
-
瀬戸青し釣島紅葉眺望す
-
帆船の青き瀬戸行く小春かな
-
みかん熟れ釣島灯台瀬戸見張る
-
釣島やいか干す白さ青い瀬戸
-
小春日の青き瀬戸にて遊びたる
-
小富士山紅葉真向かい馬の石
-
釣島や居並ぶ島の小春かな
-
島の老い子らと釣りする小春かな
-
心の馳走小春の空や瀬戸の青
-
波止に着く海の深さや山紅葉
-
驚きのミカンの赤さ瀬戸に映ゆ
-
魂の底打つ青さ島の秋
-
魂かける瀬戸の島々冬の鳥
-
空飛んで怱那七島冬の鳥
-
釣島や小春と過ごす幸数多(あまた)
-
青と藍釣島冴える紅葉かな
-
小春日やあけび見つけし空の青
- 2008/10/26~2008/11/14
-
人倫の荒びの果てや温暖化
-
天高し漂泊心の1時間
-
橋脚の猫呼ぶ女秋の風
-
耕起せし土黒々と冬を待つ
-
ゴミ捨てし川嘆きつつ秋澄みぬ
-
天高し池潜り浮く鴨の子ら
-
人倫の秋を驕れる墓穴掘り
-
正直を支え剛直天高し
-
花の名を思い出せずに今日の秋
-
草紅葉道の枯れ際広がりつ
-
冬雲にカラス鳴く秋夕まぐれ
-
ジャガイモの花咲く夕べチチロ虫
-
早暮れて不況の街のネオンかな
-
秋桜その色隠す暮れの足
-
お接待の心健やか友の秋
-
稲刈りし田と隣り合う分譲地
-
柿赤し葉の赤さとは異なりて
-
秋寂しもんしろわれについて飛ぶ
-
秋雲や花カタバミの照らすごと
-
志津川の土手草紅葉風嫋々
-
籾すりて藁束積むや老農夫
-
舗装路に泥土の轍秋深し
-
木犀も終えて菊咲く路地を行く
-
段畑や明浜誇る初景色
-
秋霖やカラスが群れる田は同じ
-
秋霖や陽の力無き平野かな
-
赤貧で幸せありき遠き秋
-
自転車やトンネル出でて秋の空
-
波打つを聴きつ昼餉の友と秋
-
快晴の石蕗(つわぶき)の花黄金色
-
石蕗の花黄金色の日和かな
-
自転車や坂の途中の柿熟れる
-
枇杷の花背に瀬戸凪いでフェリー行く
-
天高し波打つ音に懐古心
-
太公望になりたき瀬戸の秋深し
-
興居島や札所訪ねて石蕗の花
-
色づきし柑橘畑の札所かな
-
仏訪ね島をめぐりて石蕗の花
-
枇杷の花その先に瀬戸凪いでいる
-
照らすごと花カタバミの赤さかな
-
枇杷の花興居島包む瀬戸青し
-
遍照の光射すかな石蕗の花
-
札所探す迷路に咲ける石蕗の花
-
興居島や仏慰む枇杷の花
-
瀬戸小春さより釣れたる魚影かな
-
お城下の銀杏散りつつ役所行く
-
落ち葉くぐり札の辻前交差点
-
一雨を境に冬のモードかな
-
電線にカラス並びて冬平野
-
新世界一雨冬をば呼び覚ます
-
一雨が冬呼びよせし巷かな
-
枇杷の花土手暮れてゆく雨上がり
-
志津川の土手暮れんとす枇杷の花
-
立冬や静かに暮れる天守閣
-
白と薄茶二色の薄放棄田
-
陽うすし銀波に遊ぶ鴨の子ら
-
冬雲や横一列に船のごと
-
野菜青々と冬暮の陽射しかな
-
雲割れて突如まぶしき冬陽射し
-
蜘蛛の糸光る小春の庭仕事
-
空冴えて山際きりり冬日和
-
今日の山気は澄み渡る冬日和
-
洲の亀も甲羅干したり冬日和
-
種と化しコスモス揺れる冬景色
-
赤き実の続く街路樹晴れ渡る
-
髭剃るを今朝忘れたり春日和
-
小春日や御簾の向こうの小富士山
-
山下る紅葉は時の移り行き
-
山陰(やまかげ)の農道照らす石蕗の花
-
興居島や瀬戸の渚に石蕗の花
-
険阻なる山肌あかる石蕗の花
-
厳かな仏の光石蕗の花
-
気高さや険阻な山の石蕗の花
-
百姓の金剛心や石蕗の花
-
石蕗の花黄金色の不思議なる
-
石蕗の花なぜか魅せらる心かな
-
仏現れたる如し石蕗の花
-
吸い込まる宇宙の青さ紅葉かな
-
小春日の瀬戸の白砂にもの思う
-
興居島や瀬戸の白砂に座す小春
-
藪の中光る如くに石蕗の花
- 2008/9/29~2008/10/26
-
うすみどり茎に真紅の彼岸花
-
台風過戻る秋空雲六分
-
しめかざり祭りを待ちて台風過
-
台風過禍はなく節水続きおり
-
彼岸花隣る木陰に人集う
-
彼岸花惜しや生終え枯れてゆく
-
台風の残せし風が穂に騒ぐ
-
稲穂渡り観音像に風の道
-
稲穂揺する豊饒の風嫋々と
-
秋桜熟れた稲穂と競いつつ
-
台風過石垣越えて秋桜
-
ささいなるいさかいありて秋の風
-
台風過富士冠雪し天高し
-
霊山寺花の季節のお接待
-
パラパラと新聞めくる秋の風
-
秋風や歳取りし今さびさびと
-
土手に咲く野茨の花小さき星
-
刈り跡は秋風もなし入り陽かな
-
入り陽やわら休耕田の秋桜
-
稲穂たわわ暴走車にも頭垂る
-
稲穂熟れて萌黄の美をば極めたる
-
穂と葉との色混ぜ合わせ萌黄の美
-
萌黄の美神技の田んぼ群れ雀
-
稲穂揺れて染まる萌黄に雲出る
-
稲熟れて萌黄の色が草分ける
-
風呂に入る背戸の田んぼのチチロ虫
-
山も田も萌黄の色を紡ぎたる
-
心打つ水軍太鼓天高し
-
瀬戸凪いで岸壁の客船踊り(興居島船踊り)
-
真向かいて小富士も見るや船踊り(興居島船踊り)
-
天高し小富士も見るや船踊り
-
ひまわりも水軍太鼓に揺れている(興居島船踊り)
-
和気姫も見惚れる秋の船踊り(興居島船踊り)
-
いつ見ても見飽きぬ小富士天高し(興居島船踊り)
-
聞き惚れる水軍太鼓秋晴れて(興居島船踊り)
-
天高し水軍太鼓瀬戸の凪(興居島船踊り)
-
雁渡る水軍太鼓響く空(興居島船踊り)
-
岸壁の客沸く秋の船踊り(興居島船踊り)
-
波の揺れ巧みに御して船踊り(興居島船踊り)
-
大自然織りなす神技萌黄色
-
リンゴ拭いて浄机に置くや秋の風
-
秋風も晩秋に入るリンゴ買い
-
秋風や老いが老い引く交差点
-
秋霖や祭りの気勢上がらぬか
-
秋霖や池の干潟に鷺一羽
-
秋霖の憂いを払う秋桜
-
秋霖や籾焼きし跡黒々と
-
秋祭りマイクの声は酔いに揺る
-
秋桜祭り歌聴く夕べかな
-
秋霖や軒に収めるご神灯
-
刈り跡の土黒々と天高し
-
稲刈りや黒土顕わチチロ鳴く
-
神社へと登りてゆくや祭り旗
-
木犀の香る街角総選挙
-
秋霖や土手灰色に染まりつつ
-
秋霖や山々重き鉛色
-
秋暮れていつもは見えし蜘蛛居らぬ
-
はざ架けし稲は獅子にも似たるなり
-
萌黄色座ってみたし稲穂並み
-
秋霖や読経の声の重々し
-
己が足で歩く喜び天高し
-
志津川の土手吹く秋の風涼し
-
秋風や亀に餌やる媼かな
-
稲刈りし跡寂しかり秋の風
-
我が影がよぎって揺れる秋桜
-
萌黄の田夕陽射し込み風静か
-
静かなる秋の陽射しの庭仕事
-
秋風や乾いて目には見えざりし
-
目を撃つや休耕田の秋桜
-
収穫の米袋積む畦を行く
-
稲刈りや田の床土の轍かな
-
秋暮れる墨絵となりし松の枝
-
車列よけてもんしろ飛ぶや天高し
-
天高し背に汗してリンゴ買い
-
朝寒やゆうべの月の冴え具合
-
名月や棚田ぼんぼり灯しつつ
-
いつもより近くに秋の小富士山
-
天高し弁当開く道の端
-
天高し童心帰る弁当ぞ
-
前線の閉ざす雲間で稲を刈る
-
泥土をはねて稲刈るトラクター
-
稲刈りを急ぐ薄日の雲間かな
-
秋霖の雲間を鳴くやピーヨロロ
-
立毛する稲僅少の平野かな
-
籾焼きの青き煙や空曇る
-
コスモスの満開になる寂しさも
-
ヘビ渡る秋の入り陽に光りつつ
-
もんしろのもつれて飛べる秋日和
-
かまきりや道のなかばに仁王立ち
-
良き縁を求めるお嬢秋の空
-
七折れて秋深まりぬ墓参道
-
駅名も懐かしさあり秋電車
-
晩秋の仮寝の旅や旅客船
-
秋深し己が老い見る鏡かな
-
客船や疲れし客の顔の秋
-
まだ明けぬ小倉の駅は秋の星
-
老いたるか小倉は秋の星光る
-
霞立つ晩秋平野覚めやらぬ
-
小さ駅ほっと息つく秋日和
-
秋風や人の定めを分ける駅
-
晩秋の駅は人待つ乾きかな
-
晩秋や長崎はまだ夏日差し
-
長崎や残暑のままに秋深し
-
別かるるやツバメ号行く雲の秋
-
バス待てる停留所の秋暑し
-
トイレ立つ秋の船旅よろけつつ
-
重き荷や友の心ぞ旅の秋
-
この秋や友との旅も限りある
-
心まろく遍路下船す秋深し
-
初電車今朝の衆生の秋深し
-
虚しさや友の輪去りて秋の空
-
旅終えてまた戻りたる土手の秋
-
遍路道示す路標や秋深し
-
秋霖や揺れず満開秋桜
-
刈り株にカラスの群れる気味悪さ
-
うちわ2本骸となりて秋深し
-
秋桜老若話す姿かな
-
池干潟ゴミ顕れて秋暑し
- 2008.7.5~2008/9/29
-
夕凪の湖面を群れるツバメかな
-
ツバメ飛ぶ湖面の対の速さかな
-
にわか雨梅雨の街路の匂い立つ
-
にわか雨続いて日差し梅雨流転
-
万物は己が分身にわか梅雨
-
雷鳴や一瞬床に冷気来る
-
濁川鴨日向ぼこ梅雨明ける
-
梅雨明けて道白々と人気なき
-
田に会えばすず風吹いて息継ぎぬ
-
梅雨明けて腕にかかりし汗覚ゆ
-
梅雨明けや濃霧包める山静か
-
自然対略奪文明温暖化
-
青葉若葉山荘に風吹き通る
-
瀬戸の霧梅雨明けの島浮かび立つ
-
絶景や瀬戸の梅雨霧松山市
-
梅雨明けや瀬戸は朧に島影絵
-
ラザニアの花道しるべ谷下る
-
梅雨明けて紫陽花ロード残りたる
-
猛暑来てお茶浴びるごと島回り
-
興居島や瀬戸の梅雨霧島夢幻
-
入日やわら草影長くゆれている
-
稲株の夕陽織りなす影涼し
-
段畑や夏空と海連れている
-
涼風や老鶯鳴いて心澄む
-
青葉揺れて涼風満ちる山の家
-
興居島や太公望の胸算用
-
猛暑忘れ漁信の指に入り込む
-
夏雲や弾丸のごと車列行く
-
お茶買いて猛暑列島また歩く
-
夏雲や大樹の下の猫2匹
-
梅雨霧や瀬戸の島々浮かばせて
-
羽根きららとんぼ飛ぶなり緑の田
-
緑の田白鷺ぽつり白きかな
-
廃屋や陽やわらいで群れ雀
-
夏暮れて背(せな)に影さす家路かな
-
興居島や落日の陽が瀬戸染める
-
瀬戸の夏暮れて浄土の光さす
-
背(せな)に影作りて夕陽瀬戸に落つ
-
子規に因む糸瓜を植えし猛暑かな
-
熱帯夜目覚めてうちわ午前2時
-
夏雲や風立ちそめし土手をゆく
-
緑陰の蔭に憩いて池を見る
-
風誘う青い田んぼをたのみつつ
-
夕焼けてナイトヲークの坂下る
-
興居島や満月の瀬戸花火かな
-
興居島や瀬戸の夜景にゼンゴ釣る
-
船帰る管弦祭の瀬戸凪いで
-
老鶯や稲妻光る如く鳴く
-
鬼ゆりにアゲハが遊ぶ友の庭
-
鬼ゆりの蜜吸う揚羽ホバリング
-
満月の瀬戸の鏡に花火かな
-
稲育ち鷺立つ白の数いくつ
-
青々と稲はさやかに赤とんぼ
-
砂鳴らし夏草の道歩いてる
-
鬼ヤンマ灰青色の背中(せな)涼し
-
花に水一陣の風涼覚ます
-
土手の池夕凪の頃ヤンマ飛ぶ
-
靄消えて晴れ渡りたる夏景色
-
稲青くすず風吹いてツバメ飛ぶ
-
青田吹く風忘れしむ人生苦
-
汽笛遠し寝がえりを打つ熱帯夜
-
夏草やこがね蜘蛛追う頃思う
-
葉を巻いて猛暑に耐える 土手の笹
-
緑陰やもの言いたげな犬の顔
-
道渡る風いつしかに絶えている
-
人生や漠たる憂いうちわ振る
-
うちわ振る夜半の目覚めの憂いかな
-
炎天や己が影追い道歩く
-
廃屋か否朝顔が植わってる
-
稲青く夕風立ちて影やわら
-
ブタ草に田は荒れつつも水流る
-
青田渡る夕風の音静かなる
-
追肥打つ青田夕風赤とんぼ
-
涼風を待てば遠くに蛙鳴く
-
眠られぬ読書の枕風を待つ
-
蝉骸(むくろ)やがてお盆の風が吹く
-
失いし大和魂夏のゴミ
-
赤とんぼ積乱雲の湖面飛ぶ
-
慈雨ありて積乱雲のお陰知る
-
7000歩積乱雲の街を行く
-
積乱雲激雨か慈雨か分かれ道
-
ふと目覚め秋のすず風夜具掛ける
-
ふと気づく敗残の老秋立ちて
-
穂ばらみの青田をゆする風の色
-
雲の峰銀波に浮かぶ小富士山
-
雲の峰はるかに高し昼の月
-
新涼や積乱雲の高き夕
-
季節一つ巡るか今日の土手の色
-
名月や積乱雲を供に連れ
-
新涼や日暮れの速さ見えたとき
-
新涼や竹枕替え床に就く
-
慈雨ありぬその雨粒の音久し
-
稲穂垂れ遠くに光る鳥脅し
-
秋立ちぬ魂の飢え読書する
-
稲みのり闊歩の力また戻る
-
節水や慈雨念じつつ雲の街
-
新涼や土手歩く人数増しぬ
-
曇る空おしろい花のピンク色
-
実る穂のやや薄茶色曇り空
-
新涼や土手の捨て猫五六匹
-
おしめりのありて息つく処暑の街
-
新涼やサラサラの風袖に入る
-
新涼や訪う風の音門叩く
-
新涼や草の葉騒ぐ土手を行く
-
稲穂渡る新涼の風重たげに
-
新涼や逃がしてやりぬ糸トンボ
-
積乱雲もの皆染めて灰色に
-
どこまでも積乱雲の道を行く
-
蝉骸(むくろ) 転がっているアスファルト
-
整然と巣を織る蜘蛛のあでやかさ
-
日を追いて暮れゆく速さ赤とんぼ
-
雷鳴や慈雨を待ちわび耳求む
-
積乱雲囲める城下なお続く
-
雷雲去って再び戻る残暑かな
-
稲穂垂れ麦わら帽の鳥脅し
-
蒸し暑さ積乱雲の高さほど
-
すず風やビルの蔭地に吹き寄せる
-
鉄塔の雀の群れや稲穂垂る
-
温暖の雲去らぬまま秋の風
-
頭垂れる稲穂に沈む群れ雀
-
傘持ちて雷雲の街散歩する
-
裸にて座る座敷を風抜ける
-
土手道や積乱雲の満ちる空
-
温暖化積乱雲と秋の風
-
稲穂香る気の衰えし夕べかな
-
小虫はらい稲穂の垂れる畦通る
-
土手道や積乱雲の真下行く
-
新涼や夏将軍の粘り腰
-
雑草のはびこりし中蜘蛛太る
-
風入りて果物種類増える街
-
天高し投打に映える芝生かな
-
投打結ぶ白球線や秋の蝶
-
ひらひらと秋の蝶舞う投打戦
-
秋の陽の乾きに萎えるゴーヤかな
-
秋風が窓々訪うや槌の音
-
恐ろしき弾丸車列秋の風
-
秋舞台空気乾いて山近し
-
富めるとて心貧しき秋の空
-
今日終わる入り陽の照らす穂並かな
-
初栗の香り添えしや友和む
-
秋風や辻々抜けて橋渡る
-
穂並み揺れ豊作祝う赤とんぼ
-
煙立つ穂並みの彼方鳥おどし
-
涼求め穂並みの道に車入る
-
故郷の山に秋風輪廻かな
-
森の中ツクツクボウシが輪唱す
-
色づきし稲穂の区画別座敷
-
刈り取りし稲をねぎらう夕陽かな
-
稲穂垂る重さを見つつ畦抜ける
-
台風の慈雨連れてくる不釣り合い
-
残暑にくし台風先兵切り込みぬ
-
嬉しさや稲穂重そな秋の風
-
台風や黒雲伏せて稲穂並み
-
蚊のやつが布団に入れよと鳴く夜長
-
台風の過ぎて新たな天守閣
-
台風過畦燃えるごと曼殊沙華
-
とんぼ飛ぶ墓参の人の穏やかさ
-
台風過山洗われて新たなる
-
天地裂くゲリラ豪雨の止みし静
-
天守閣なお積乱雲に巻かれおり
-
豪雨去り稲刈り跡の水たまり
-
さらさらの秋の気来たり熟睡す
-
土手に咲くおしろい花の慰めや
-
亡き人にふと会ったごと曼殊沙華
-
稲架増え刈り跡広き秋の空
-
豊かなる稲穂揺れつつ母子連れ
-
苦難負う農業よそに稲熟れる
-
土手行けば彼岸花の数増える
-
秋分や犬叱咤する日暮れ時
-
秋暮れて歩かぬ犬を引く娘
-
今日も会う同じ車列に秋の雲
-
車帰る秋の夕暮れ店じまい
-
たわみたる稲穂嫋々秋の風
-
黄緑の茎に真紅の彼岸花
-
昨日無き群生の赤彼岸花
-
橋脚の世間話や秋暮れる
-
老犬を連れし老婆の秋暮れる
-
前線の去って秋気が満ちる街
-
彼岸花草抜く背丈真紅燃ゆ
-
草舞台燃える真紅の彼岸花
-
七分蕾三分で揺れる秋桜
-
土手に咲くおしろい花に曼殊沙華
-
秋霖や落魄の露雲の色
-
真珠色染まる薄雲秋暮れる
-
頭垂れわれを見送る稲穂かな
- 2008/4/2~2008.6
-
おそ桜舗装路舞って朱に染める
-
新緑に囲まれている庭に座す
-
新緑の樹下に座れば風涼し
-
山笑うビル群寄せるふもと見て
-
新緑や利の亡者どもへだてつつ
-
新緑樹無償空間すっからぽん
-
新緑に憩えば買ったリンゴの香
-
ざるに干すタマネギ4個五月晴れ
-
終わっても終わらぬ仕事五月晴れ
-
五月晴れ凡々として日が過ぎる
-
五月晴れ今日の命の投げどころ
-
青葉若葉くねくね道を縫っている
-
青葉若葉墓参に友と会ってきた
-
梅雨走り蛙鳴く声よみがえる
-
いらつきの根源どこぞ五月晴れ
-
道に座す老婆の目立つ五月晴れ
-
五月雨や気を洗いつつ滔々と
-
五月雨や若葉の玉の数知れず
-
五月雨に裾をぬらしてゴミの番
-
歯科の窓香るがごとく目に若葉
-
台風過フライトの窓霧の海
-
北大や新緑浴びて緑色
-
新緑や後へ後へと飛んでゆく
-
梅雨雲を乗り継いでゆく札幌へ
-
梅雨雲る機の着陸に静まりて
-
暮れかかる涼風もよし腕枕
-
刈り跡の草の香残る土手をゆく
-
田起こしのトラクタ忙し梅雨雲る
-
ハヤ群れる橋のたもとの小休止
-
煎り豆や水戸黄門の梅雨日和
-
梅雨晴れ間陽の明るさの有難さ
-
梅雨晴れ間夕陽とともに風呂に入る
-
緑陰に鯉はふわりと宇宙泳
-
水張った田の区画増す梅雨晴れ間
-
梅雨半ば蝶トンボ蛇土手の客
-
舗装路に泥土の跡早苗立つ
-
つゆ雨や暑さ肌寒同居して
-
小賢しや文明のゴミ梅雨雲る
-
もんしろや舗装路割った草に舞う
-
早苗立つさ緑の田に農夫かな
-
早苗立つさ緑の田は雲鏡
-
蛙鳴き梅雨の城下は闇の中
-
闇に鳴く蛙の声を聞いている
-
小枝揺れる影黒々と涼しかり
-
吾我尽きる果てまで行くや草燃える
-
クモの巣に黒いアゲハのもがきかな
-
猫二匹横たう土手の梅雨日和
-
天映す田を一瞬につばめ切る
-
羯諦々々(ぎゃてぎゃて)と心経唱え蛙鳴く
-
梅雨晴れ間みずほの国の美田あり
-
早苗立つ田んぼに早も赤とんぼ
-
田を染めて風紋白き梅雨晴れ間
-
夕陽背に影追い歩く梅雨晴れ間
-
夕陽受け草漁ゆたりと梅雨晴れ間
-
田に入る水にささやく夕陽かな
-
入日やさし涅槃の里の早苗かな
-
入日静か西方浄土の梅雨晴れ間
- 興居島・島四国2008/4/21
- 霊山寺お接待の花開く
- 息切って坂の頂上島四国
- 次の世も守る夫婦の大師堂
- 札所守る夫婦の信は代を継いで
- 椿落ちる遍路の道を過ぎてゆく
- 坂の上開く絶景大師堂
- 島四国信を守って静かなる
- 海辺行くお遍路さんの列ゆかし
- せちがらさ越えて道行く島四国
- 世の善意ここには生きて島四国
- 島四国信継いでいる姿見る
- 信の世を守ってゆくや島四国
- お接待まごころ守る人老いて
- 今日ここに信の花咲く遍路道
- 利を捨てて信を守って島四国
- 島四国そこに見られる深い信
- 常識を覆す信島四国
- 日常を超える信あり島四国
- 利にさとく信薄きわれ島四国
- お大師の縁を守って遍路道
- 信守るむつかしい世ぞ島四国
- お大師の信の懐飛び込まん
- 弁当や山笑いつつ海青し
- 信守る人々ゆかし島四国
- 老いてなお大師堂守(も)る翁かな
- 接待の心哀れにおくゆかし
- 利と信に迷える亡者われ遍路
- 利と信のはざまに揺れて島四国
- 利と信の二極を見たり島四国
- 腰かける疲れて友と遍路道
- お大師と縁深き人遍路道
- 弘正寺峨々たる巌春の瀬戸
-
永き日やお大師さんの縁深さ
- 興居島・島四国2008年4月15日
- 菜の花や満開の黄日向道
- 足悪き人もヲークの春日和
- ほとするや気だるい春の目覚めかな
- 桜前しばしたたずむ翁かな
- 布団干し桜見に行く春うらら
- 水面背に桜映えてる夕暮れて
- 春は花門々の鉢色づいて
- ありふれた空間を切る桜花
- 日本人桜の幹と花の色
- 散る桜浴びて佇む翁かな
- 子ら遊ぶ声に混じって桜散る
- 満開の桜の下の宴かな
- 花惜しや春雨の音高くなる
- しだれ桜背によもぎもち食べている
- ま昼間のがらんどう道や春陽射す
- 自責募る桜散る間も忘れ果て
- 島四国鶯鳴くや瀬戸の凪
- ホーホケキョ瀬戸の凪をば愛でるごと
- イタドリの群生見つつ遍路道
- 坂道や草刈ってあり大師堂
- つわぶきや母の思い出友語る
- 道に座し弁当食べる瀬戸の春
- イタドリの味懐かしい遍路道
- 若夫婦接待心(ごころ)遍路道
- ヘビ座る春眠覚めぬ人のごと
- 弁当や眼下に瀬戸の春日和
- つわぶきや遠い思い出ほろにがさ
- 葉桜になりつつあるや大師堂
- 記憶覚ます遍路の道の出会いかな
- 足疲れ瀬戸の春陽を友と行く
- 春日和束の間憩う涼風に
- 草刈った跡も道標遍路道
- 山笑う札所辿りし人見つつ
- 遍路道旧知に会った友の顔
- イタドリとつわぶき古い記憶物
- イタドリの群生ギョッと記憶衝く
- 2008/3/18半日の島四国の遍路を体験
-
春暖や参拝をする無の心
-
参拝の門暖かき春日和
-
伊予柑のお接待する翁かな
-
無の心溢れる如し寺の春
-
春雨やすることもなくメール開(あ)く
-
水仙の花ちょうちんや遍路道
-
犬吠える遍路の道を遠回り
-
島四国迷路を探す金泉寺
-
もやかかる小富士を眺め遍路道
-
地図たよりたずねたずねて島四国
-
もやかかる小富士に向かう霊山寺
-
霊山寺向かいはもやの小富士山
-
足疲れ春の夕凪島四国
-
呪詛すなれ己を見つめ遍路道
-
ひなびたる迷路を行けば札所あり
-
坂道を天に向かって遍路道
-
札所教えご利益あれと遍路道
-
札所探し天に向かった遍路坂
-
杖もなし背広皮靴遍路坂
-
札所みつけ興居島の瀬戸凪いで見ゆ
-
同行4人迷い迷いの遍路道
-
細い路地札所はどこぞ遍路道
-
細い路地途切れて無言遍路道
-
遍路道老いの同行4人かな
-
老いをゆく遍路の道のしたり顔
-
遍路道に従うわれを見つけたり
-
覚りかな遍路の道を迷いつつ
-
覚りかな遍路の道にふさわしき
-
色即是空遍路の道を訪ねゆく
-
遍路道立てば人生あるごとき
-
千々の思い浮かんで消える遍路道
-
己が全て立って迷路の遍路道
-
やぶわけて坂を登って遍路道
-
祠並ぶ古き姿や遍路道
-
もやかかる小富士は静か遍路道
-
好々爺札所教える遍路道
-
さんさんと陽は余るごと遍路道
-
遍路道帰路のフェリーは凪いでいる
-
遍路道人生航路に在りし道
-
初めての遍路の道をふらついて
-
後悔や慙愧のみなり遍路道
-
ちらほらと桜に出会う遍路道
-
風もなく照らす遍路の道寂し
-
ふととまり道なき道の遍路行く
-
あるがまま行雲流水遍路道
-
あらがえず従ってゆく老遍路
-
別れるは出会いの輪廻遍路道
- 2008年1~3月まで
-
貧しさはドブ川臭う残暑かな
-
稲穂揺れる街に続いたたんぼ道
-
蛇くねる秋雨降った散歩道
-
雑草伸びて赤とんぼ群れている
-
稲穂垂れメールの箱を開くかな
-
稲穂たわわ風吹きぬける散歩道
-
稲穂揺れ祭り太鼓に聞き惚れて
-
人気なき故郷の秋墓参り
-
定年や時取り戻したり春の風
-
靴跡や日の射している雪の上
-
風凪いで石畳に乗る桜花
-
波止釣りや飛行機上がる春の空
-
春日和空即是色よき日かな
-
山笑う車列街道見下ろして
-
土の色新たなりや春耕起
-
ごみあふれ橋に絡まる春寂し
-
食卓に暮れゆく春の夕日かな
-
事なくて天下逸品五月晴れ
-
五月雨や慈雨の雨音聴いている
-
から梅雨や太公望になっている
-
定年や日に300円のゼンゴ釣り
-
梅雨入りや太古のカエル鳴いている
-
目覚めれば蛙鳴いてる闇の中
-
から梅雨や慈雨の音聴く心地よさ
-
稲青し白鷺の首五六本
-
赤とんぼ羽光るなり散歩道
-
盆の風赤とんぼの数増えて
-
猛暑なり稲の株間の水の音
-
自転車と並んで飛ぶや赤とんぼ
-
風の道求めて部屋をあちこちと
-
島四国白砂も涼し瀬戸の海
-
赤とんぼ舗装路低く群れている
-
秋風や久しき友に会ったごと
-
頭垂れる稲穂に心あるごとし
-
ちょっとだけ秋風よ吹け熱い夜に
-
天高し関節痛い道を行く
-
天高し学とは何か振り返る
-
秋日和温暖の城仰ぎつつ
-
秋風や足に大地を感じつつ
-
秋風や祭り歌聞く夕べかな
-
つるべおとし子規の城下は朱に染まる
-
いつしかに事ならぬまま秋深し
-
秋深し我が小心に気がついた
-
ひらひらと蝶の舞いくる秋日和
-
孫帰り秋の陽だまりまだ残る
-
秋深し寝茣蓙をしまう朝が来た
-
収穫や刈り株の跡鮮やかに
-
名月や娘と孫を見送って
-
故郷や秋の海辺は色濃くて
-
名月や思いで刻む友の顔
-
天高し同窓の友故郷に
-
秋清透腋さわやかに陽うらら
-
天高しターナ島は孤独なり
-
高浜やターナ島の秋深し
-
興居島や人情も良く天高し
-
つるべ落とし闇せまりくる早さかな
-
立冬や街路に落ちる影長く
-
影多い立冬の街寂しくて
-
秋深し沈思黙考の夜長かな
-
秋深し新聞を読む陽だまりで
-
秋深し庭の陽だまり恋しくて
-
手の甲に秋の陽乗せてまた下ろす
-
秋の声耳の奥底しんしんと
-
列車ゆく秋の陽射しは傾いて
-
秋深し商店街の旗さびて
-
池めぐる濃霧5色の山隠す
-
陽中天濃霧に浮かぶ枯れ木群
-
霧の街よごれをすべて隠してる
-
木に三分根元に積る七分の葉
-
柏陽の色づく並木影静か
-
柿残る街道端の秋深し
-
秋深し風景に身を浸してる
-
紅葉に囲まれている寮もよし
-
秋晴れや温暖の蝶舞っている
-
天高し遠近揺れてトンビ舞う
-
モミジ谷縫って煙の薄青く
-
5分ほどに色づいた山露天風呂
-
霧の町別れの朝を惜しみつつ
-
紅葉や漁港をぐるり囲んでる
-
雪雲を割って夕日が射してくる
-
黒雲と陽光並ぶ師走かな
-
家並照る陽も新たなる師走かな
-
土手行けば雪雲浮かぶ山々に
-
故郷も美醜を超えて師走かな
-
小春日に子猫と並ぶ老婆かな
-
湧き上がる雪雲の街年詰まる
-
繰り返す普段のままで初日かな
-
大寒や温暖化の反作用
-
大寒や月煌々と照らしつつ
-
大寒や救急サイレン床で聞く
-
大寒や氷雨を踏んで投函に
-
大寒や手に息かけて仕事する
-
大寒やなすこともなく手紙書く
-
眠られぬ夜は大寒の風嵐
-
奥まった路地に照るなり冬日差し
-
寒晴れや黒雲浮かぶ城下町
-
春浅し阿呆をやめて縛を解け
-
秋深しあほすりゃ罠にはまるだけ
-
大寒や己の愚昧切り裂かん
-
早春や色で仕掛けりゃ国滅ぶ
-
みだれ髪大寒の風おさまって
-
寒晴れや自転車行に鳩飛んだ
-
大寒や三月に向け戦わん
-
早春や猫鳴く声の甲高く
-
大寒や春待つ床で虫のごと
-
大寒や髪刈る時期も遅れたり
-
今朝の寒動けば床に忍び入る
-
ともかくもPC起動寒厳し
-
雲破る陽のうれしさよ寒の朝
-
歌聞いて寒の憂いを過ぎ越さん
-
春きざす日差しを受けて街をゆく
-
友集う早春のお茶華やいで
-
暖かい日差しを浴びて句作する
-
暖かい日差し久しく浴びてみる
-
おろかなる繰り返し断て厳寒に
-
寒日差し畳の影の色さやか
-
寒やすみ日差しの戻る座敷かな
-
寒晴れて日差しに踊る影1つ
-
寒晴れや早暮れ初める道急ぐ
-
蚊も蠅も越すに越されぬ寒の関
-
氷雨降る土曜は熱い粥と梅
-
落想を手袋のまま書きとめる
-
氷雨寒し布団を固く閉ざすだけ
-
毒食わす偽装の食のおらが春
-
今朝もまた春呼ぶ猫の甲高く
-
春呼んで冬雲破る猫の声
-
小春日を浴びて聞くなりのど自慢
-
もの皆の歌はあるなり春近し
-
陽の赤さ増すごと思ゆ小春日に
-
地に眠る父母万魂の春の音
-
この命惜しくなるよな春日和
-
春の日が満ちくる部屋の寝ざめかな
-
伊予柑摘む手に冷え冷えと実の赤さ
-
湯に入り伊予柑摘みの労を解く
-
伊予柑や運ぶふらつき傾斜畑
-
伊予柑摘む眼下に青い瀬戸の凪
-
伊予柑や赤い実たわわ空と海
-
伊予柑やいい予感の値段なれ
-
伊予柑やひふみよいつむたわわなり
-
伊予柑や鳥食い残す実の甘さ
-
あちらにも赤く大きい伊予柑が
-
伊予柑や口に含めば陽の味が
-
伊予柑や実の先にある瀬戸の凪
-
絶景の瀬戸の夕凪見惚れつつ
-
ターナ島漱石の故事春の凪
-
春光の満ちるフェリーは興居島へ
-
春陽うららダジャレを言いつミカン取る
-
伊予柑を悠々自適の友らとる
-
久々の傾斜地作業足ふらり
-
伊予柑や吹く風もなく静かなる
-
伊予柑や摘み音チョキリ枝分けて
-
往き返すフェリーは瀬戸の春日和
-
伊予柑の命いただく心欲し
-
伊予柑の命を壊す安価格
-
伊予柑やあわれ実の赤さ安価格
-
葉の支え伊予柑の実の赤さかな
-
まためぐる春の陽射しも濃くなって
-
子ら遊ぶ緋寒桜の花つぼみ
-
春嵐温暖の牙見る思い
-
春嵐なれど春なりいざゆかん
-
春嵐事故続出の列島下
-
春嵐災害ニュース駆け巡る
-
春雨や慈雨ともなりぬしみるごと
-
あふれくる春陽にわれも勇気湧く
-
旅車列街に増えゆく春日和
-
孫発の風邪にやられて春嵐
-
寒ざむを残したままに雛祭り
-
黄砂来る息苦しさの空と山
-
灯油買う寒ざむの日は雛祭り
-
夫婦風邪競うに似たり咳連鎖
-
マイカーの窓も黄砂のみだれうち
-
時移る早さよ今日は雛祭り
-
風邪抜けて体の掃除したごとし
-
啓蟄や庭の陽だまり虫見んと
-
啓蟄や我が巣を抜けて自転車行
-
啓蟄や麦わら帽の見える畑
-
啓蟄や黒々と畝新たなり
-
目覚めれば春雨の音床に来る
-
何事も無に帰せしめる春の雨
-
阿鼻叫喚そ知らぬ如し春の雨
-
土手行きて春胎動の山を見る