正しい傷の手当て 本文へジャンプ





やけどなど


▪ やけどでは,まず冷やす
▪ やけどや指のけがでも,湿潤環境

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水道水による冷却

 やけどは,火,お湯,蒸気,薬品,高温のものとの接触などで生じます。こたつによる低温やけどもあります。
 やけどをしたら,第一に冷やすことが大事です。冷却によりやけどの範囲が拡がるのを防いだり,痛みや腫れを軽くすることができます。受傷後6時間までは,効果があると言われています。15℃前後の水道水が適当で,30分以上行います。原因が薬品の場合は,薬品を洗い流すために水でじゅうぶん洗浄します。衣服から出ているところは冷やしやすく,当然そのまま冷やします。一方,衣服に隠れているところは,着衣のまま冷却します。水疱ができている場合に無理に衣服をとろうとすると,水疱を破る恐れがあるからです。ただし,冷やすことにあたって,小児では体温が下がらないように注意しましょう。こたつで発生した低温やけどは深いことが多く,また時間とともに拡がることがあり注意が必要です。
 やけどの深さは,Ⅰ度(表皮までの損傷,紅斑),浅いⅡ度(真皮浅層までの損傷,水疱やびらんがあり赤色),深いⅡ度(真皮深層までの損傷,水疱やびらんがありやや白色),Ⅲ度(皮膚全層の損傷,光沢ある白色または硬く乾燥して無痛)に分けます。Ⅰ度は,積極的な治療は不要です。Ⅱ度は,水疱が破れないように治療します。水疱膜は良質な創傷被覆材なのです。大きな水疱は,注射器で液を吸引することがあります。一応の目安ですが,Ⅲ度で手のひらより大きいやけどは,遊離植皮術(皮膚が無いところに体の他の場所から皮膚を採取して移植する方法)の適応です。浅いⅡ度では2週間以内で治ることが多く,この場合傷あとは残りにくくなります。今の時代,やけどの治療に秘薬というものは存在しません。上手に治すのは,やはり創傷治癒の理論に沿った方法です。
 指先のけがで,爪の周囲の皮膚がなくなったり切断したときでも,ほとんどそのままの状態で傷を治すことができます。このような場合も,細胞が働きやすい環境を作ってやれば,縫合や植皮術をしなくても傷は治ります。受傷時に止血の処置を行い,そのあと洗浄と湿潤環境の維持を続けます。徐々に,肉芽組織の増殖と上皮の形成が起こり治癒していきます。爪の変形が残った場合は,状態に応じて形成手術を行います。
 このようにさまざまな傷の治療に,創傷被覆材の利用は非常に有効です。利用方法も簡単であり,傷にくっつきにくい製品を使えば,ガーゼに比べて交換のときの傷みもはるかに少なく,治る期間も短くなります。
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とりあえず冷却
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子供の下肢のやけど
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やけどでできた手関節近くの水疱膜の破損

イメージ(1)水疱膜がすでにないイメージ(2)創傷被覆材で被った