正しい傷の手当て 本文へジャンプ





ガーゼ?


▪ ガーゼの使用は限定される イメージ
外傷直後のガーゼ使用例

 傷の処置では,ガーゼをよく使っています。消毒の問題の多さはお話しましたが,ここではガーゼについて考えてみましょう。

 傷を覆うことをドレッシングと言います。このドレッシングの目的は,傷からの滲出液の吸収と管理,傷の治癒,保護,汚染防止,圧迫,鎮痛,被覆(傷を隠して自分と他人に傷の存在による不快感を与えないようにする),薬剤の投与があります。
 
ドレッシングの手段としてよく使用されているものがガーゼです。比較的安く使いやすいガーゼは,ヒポクラテス(古代ギリシアの医学の大成者で医学の父,紀元前460年~?)やガレノス(古代ローマ時代最大の医学者,130年~200年頃)が唱えた「傷は乾燥させて治すべきである」という考え方にも適応するものでした。毛細管現象によってガーゼに吸収された滲出液は,ガーゼの通気性により蒸発し傷は乾燥します。
 ガーゼを使用すると,滲出液の吸収(しかし傷は乾燥),傷の保護,被覆,薬剤の投与,圧迫ができます。しかし,すでにご存知のように,傷の乾燥は自己治癒力が発揮されるのを阻害します。外力からの保護はある程度可能です。しかし,汚染防止は困難です。軟膏などをつけて薬剤の投与はできますが,ガーゼの枚数によっては傷を必要以上に圧迫してしまう恐れがあります。これは,褥瘡(床ずれ)治療においては大変注意すべきことで,褥瘡のなかに新たな褥瘡を作る原因になったりします。ガーゼの他の問題点は,交換のときかさぶたとともに新しくできている肉芽組織や上皮細胞がガーゼに付着し剥がれてしまうこと,ガーゼの付着は交換のとき疼痛を生じること,ガーゼを固定するテープにより皮膚炎を起こすことなどです。長く使われてきたガーゼですが,正しく丁寧に傷を治す基本から考えると適切なものではないようです。
 ガーゼを使っても許されるのは,感染していて傷から膿が出ているときや多量の滲出液を認めるとき(吸収),応急処置(血液の吸収,圧迫止血,薬剤の投与,傷の保護,被覆),縫合創(血液の吸収や縫合部の保護と被覆,ただし眼瞼や口唇など部位によっては眼脂や食べ物でガーゼが汚染されやすく早期にガーゼを除去したほうが清潔)などです。
 
では,何を使って傷を覆うのが良いのでしょうか?

イメージガーゼはくっつきます
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ガーゼが傷にくっついて取れない
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これもガーゼが傷にくっついている。このような場合,ひどい痛みを伴います。

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顔面の傷からの出血を,ガーゼにて圧迫止血

口や鼻のまわりは,できるだけ早めにガーゼを除去した方が清潔!
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目のまわりなども,早めにガーゼを除去した方が,かえって清潔


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ガーゼが傷から取れない