正しい傷の手当て 本文へジャンプ





洗う


▪ どのような傷でも,洗うことは大事

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指の傷をシャワーボトル(水道水)で洗っているところ

 日常の傷であっても手術で縫合した傷であっても,必要のない消毒はしないのが常識です。それでは,消毒ではなく何をすべきなのでしょうか。それは洗浄,つまり傷を洗う行為です。

 消毒をしなくても洗浄することにより,傷の部分の細菌の数を減らしたり異物を取り除くことができます。洗浄に水道水を使っても構いません。浸透圧が生体に近く滅菌された生理食塩水は理想的な洗浄液ですが,洗浄行為は短時間ですから普通浸透圧のことまで考える必要はありません。利用のしやすさとその十分な効果を考えると,洗浄は水道水で構いません。ただし,水道水を傷にただダラダラと流すだけではなく,細菌や異物を除去できるようにやや圧がかかるようにして流すべきでしょう。汚染が強ければ,出血や疼痛に注意しながらきれいな布などで擦らざるを得ないときがあります。このようにした場合,それらの繊維が異物として残らないように注意します。油性のしつこい汚れには,石鹸の使用が必要になるかもしれません。
 糸が残っている縫合創でも,2~3日して出血が収まれば,洗いたければ洗うことは可能です。縫合しているのにもかかわらず両側の傷同士がきちんと合っていないような縫合創でも,2日ぐらいで創の上皮化(皮膚で覆われる状態)は終わっています。抜糸前の入浴でも感染率が増えなかったという報告もあります。このような場合,洗うのであればきちんと傷を露出させて洗います。ガーゼなどをしたまま洗って,湿ったガーゼなどをそのままにしておくと,正常皮膚が浸軟化して傷つきやすくなります。特に顔の傷では糸を抜く前に早めに洗顔を許可すると,顔の汚れが取れ気持ちもすっきりするようで,よく喜ばれます。

ところで,傷の処置をするとき,どうしても消毒にこだわるのであれば,消毒剤を使ったあとに洗浄をする,あるいは洗浄で傷をできるだけきれいにしたあとに消毒をし,その後さらに洗浄をするのが良いでしょう。傷に消毒剤を残さないということです。低侵襲の気持ちを持ってください。

 できた傷のなかに木片のような異物が残ったままだと,創傷治癒を傷害することはすでにお話しました。異物がアスファルトや砂利のような非常に小さいもので,傷のなかに取り込まれたようにして残ると外傷性刺青となります。外傷性刺青がある傷あとは,大変目立ちます。このためにも,しっかりと洗うことが必要です。もし,傷のなかの異物を取ることが無理なら,病院へ行きましょう。病院では,麻酔をしたあとブラシなどを適宜使いながら洗浄し,異物を取り除きます。

イメージ傷を洗うことは大切。
自宅でよく洗うには,シャワーが便利です。



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左肘の傷。かなり深い傷であったが,患者様は自宅の風呂場で傷を洗ってから受診。出血がひどかったとのこと。深い傷や出血が多い傷は,無理をして自分で洗わず,早めに病院へ。


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親指や手のひらに入り込んだ異物。局所麻酔をして,ガーゼで擦り,一部切除して取り除きました。

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