正しい傷の手当て 本文へジャンプ





ケロイドや肥厚性瘢痕


▪ ケロイドや肥厚性瘢痕は,整容的な問題だけではない

 なかなか傷が治らないと傷あとが残りやすく,ときには体の表面から赤く飛び出た傷あとになります。このような赤く盛り上がっているものはケロイドと言われ,ひどく目立つ傷あとの代表のように考えられています。傷を治す細胞である線維芽細胞が異常に増殖し,線維芽細胞が作るコラーゲン(組織の線維成分となるタンパク質)が過剰に生産されることで発生します。
 
実際には,このような傷あとはケロイドと肥厚性瘢痕に分けられます。ケロイドはもとの傷あとを超えて腫瘍のように盛り上がりが拡がり,周囲に赤い色が染み出したような発赤を認めます。肥厚性瘢痕は盛り上がりがもとの傷あとの範囲を超えず,関節やその近くなどよく動く部位にできやすい瘢痕です。
 
さて,いずれにせよ赤く盛り上がった傷あとはよく目立つため整容的な問題が大きいのですが,問題はそれだけではないのです。痒み,痛み,盛り上がって硬い傷あとのなかに発生する傷,つっぱりによる運動障害,目立つ傷あとがあるという精神的負担など多くの問題があります。衣服やシートベルト,靴などが当たるときの強い痛みにより,日常生活がうまく送れないこともあります。問題はたくさんあるのに,残念ながら他人は理解してくれません。つまり,本人の苦痛とこのような問題を他人が理解してくれないという苦痛。ケロイドや肥厚性瘢痕を持っている方の中には,この二重の苦しみを感じている方もおられます。
 発生原因として,全身的因子では人種,年齢(5歳あるいは20歳前後),病気(結核など),ホルモン異常,体質,遺伝などが言われています。局所的因子には,治りにくかった傷や好発部位(胸,肩,お腹,耳,関節周囲など)があります。しかし,ケロイドの方の発生原因は,まだよく分かっていません。最近では,しばしば,ピアス装着に伴う耳たぶのケロイド治療の相談があります。
 
治療は保存的治療と外科的治療があり,前者には,薬物療法(内服薬,外用剤,注射薬),物理的療法(圧迫),放射線療法,その他(シリコンシートなど)があります。外科的治療(手術)は瘢痕を切除したあと拘縮(つっぱり)があれば除去し,そのあと縫縮術(そのまま皮膚を寄せて縫う方法)や遊離植皮術(他の場所から皮膚を採取して皮膚のないところに移植する方法)を行います。各治療法を単独に行うのではなく併用すると,結果が良くなります。ケロイドと肥厚性瘢痕に対しては,辛抱強い治療の継続が必要です。
 創傷ケアの基本を守り傷を早く治すと,このような目立つ傷あとを生じる危険は少なくなります。
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ピアス後のケロイド
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下腹部のケロイド
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足部から足関節にかけての肥厚性瘢痕
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前胸部は後発部位です

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胸部と腹部の術後に生じたケロイド       一部を手術
                                 (内服薬と放射線療法を併用)

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